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神に選ばれたので、好き勝手に生きます  作者: 櫻木サヱ
転生したので自由に生きます

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9/18

規格外

「…………」


沈黙。


草原の中央。


巨大なクレーター。


その中心で、

シャドウウルフ・ロードが地面へ押し潰されていた。


動けない。


暴れているのに、

起き上がれない。


まるで、

見えない山に押さえつけられているみたいだった。


「グ、ガァァァ……!」


ロードが苦しげに唸る。


地面がさらに沈む。


バキバキと嫌な音が響いた。


フィアは完全に固まっていた。


「……え」


それしか言えてない。


まあ分かる。


俺も同じ気持ちだ。


何これ怖い。


右手の紋章が、

青白く光っている。


頭の中には、

自然に情報が流れていた。


《重力支配》

対象へ超高密度重力を付与。

現在出力:0.8%


「0.8%!?」


思わず声が出た。


フィアがびくっとする。


「な、何?」


「いや、なんでもない」


なんでもよくない。


0.8%でこれ?


100%使ったら国消えない?


女神、

マジで何渡してんの?


ロードはなおも暴れる。


だが立ち上がれない。


その時。


《警告》

《対象生命活動低下》


「……あ」


やばい。


このままだと死ぬ。


いや、

魔物だから別にいいのか?


でも。


なんとなく。


「……解除」


そう呟く。


瞬間。


重力が消えた。


ロードが荒く息を吐く。


「ガ、ァ……!」


フィアが驚いた顔をした。


「解除したの?」


「いや、なんか死にそうだったから」


「……」


フィアが変なものを見る目をしてくる。


なんで。


するとロードが、

ゆっくり立ち上がった。


だが。


さっきまでの殺気が消えている。


赤黒い瞳が、

完全にこちらを警戒していた。


というか。


怯えてる?


「グルル……」


ロードは低く唸る。


でも近づいてこない。


そのまま、

少しずつ後退していく。


「あれ」


逃げる?


次の瞬間。


ロードは森の奥へ走り去った。


ものすごい勢いで。


「……逃げた」


フィアが呆然と呟く。


俺もびっくりだ。


ボスっぽかったのに。


しばらく沈黙が続く。


風だけが吹いていた。


やがて。


フィアがゆっくりこちらを見る。


赤い瞳。


真剣な表情。


「ユーマ」


「はい」


「やっぱり人間じゃない?」


「だからなんでだよ!?」


失礼すぎる。


でもフィアは本気だった。


「だって今の、上位魔族でも無理」


「マジで?」


「マジ」


そんなヤバかったのか。


俺、

まだこの世界の基準分かってないんだよな。


するとフィアは、

深くため息を吐いた。


「……規格外」


「え?」


「ユーマ、強すぎる」


真正面から言われた。


なんかちょっと照れる。


でも同時に、

不安にもなる。


この力。


本当に大丈夫なのか?


下手すると、

街ひとつ簡単に消し飛ばせそうだ。


フィアは俺の右手を見る。


紋章はもう消えていた。


「それ、本当にスキル?」


「多分……?」


「疑問形」


いや俺も分からんし。


その時。


グゥゥゥゥゥ……。


腹が鳴った。


盛大に。


「……」


「……」


フィアが無言になる。


死ぬほど恥ずかしい。


だが次の瞬間。


フィアが吹き出した。


「……ふっ」


「え」


「ふふっ……」


笑ってる。


初めてちゃんと笑った。


クール系なのに、

意外と年相応だ。


「こんな状況でお腹鳴るの」


「しょうがないだろ!」


朝からほぼ何も食ってないんだぞ!


フィアはまだ少し笑っていた。


「……変な人」


「またそれか」


でも。


なんか空気が軽くなった。


さっきまでの緊張が、

少しだけ消えている。


フィアは剣を鞘へ戻した。


「帰る」


「だな」


薬草もそこそこ集まったし。


というか、

もう十分すぎるくらい働いた気がする。


俺たちは街へ戻り始めた。


夕日はほとんど沈み、

空は暗くなり始めている。


歩きながら、

フィアがぽつりと呟いた。


「ユーマ」


「ん?」


「さっき、なんで解除したの」


「え?」


「その力。押し潰したままなら倒せた」


ああ。


俺は少し考えてから答えた。


「なんとなく」


「なんとなく?」


「逃げるならそれでいいかなって」


フィアは少し黙る。


やがて。


「……甘い」


「そうかもな」


自分でも思う。


でも。


あの時、

なんか殺したくなかった。


理由は分からないけど。


フィアは横目でこちらを見る。


「でも嫌いじゃない」


「お」


「ただし」


彼女は真顔に戻った。


「次は迷わない方がいい」


その言葉だけは、


少し重かった。

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