初めてのスキル判定
「試してみるか?」
大柄な冒険者の男は、
ニヤニヤしながら言った。
周囲の冒険者たちも、
面白そうにこちらを見ている。
「新人のスキル判定か?」
「久々だな」
「外れだったら泣くぞー?」
好き勝手言いやがる。
でも正直、
俺も気になっていた。
スキル。
この世界の人間なら誰でも持っている力。
俺には“神権”があるけど、
それとは別なのか?
「……やってみたい」
そう言うと、
男は笑った。
「いい度胸だ」
受付嬢が少し困った顔をする。
「えっと……判定ですか?」
「おう。こいつ新人らしい」
「分かりました」
受付嬢はカウンターの奥から、
透明な水晶玉を持ってきた。
サッカーボールくらいのサイズ。
中で淡い光が揺れている。
「これが判定水晶です」
受付嬢は説明する。
「触れると、適性スキルが表示されます」
「へぇ……」
異世界っぽい。
俺が近づくと、
周囲の冒険者たちがニヤニヤし始めた。
「さて、何が出るかな」
「農業とかだったら笑う」
「いや、《掃除》かもしれねぇぞ」
うるせぇ。
フィアは少し離れた場所で腕を組んでいた。
興味なさそうに見えるけど、
ちゃんとこっち見てる。
「じゃあ、触れてください」
受付嬢に促され、
俺は水晶へ手を置いた。
瞬間。
ブワッ――!!
水晶が強烈な光を放った。
「うおっ!?」
眩しい。
ギルド内が一瞬白く染まる。
周囲がざわついた。
「な、なんだ!?」
「光りすぎだろ!?」
受付嬢まで驚いている。
そして。
水晶の中央に、
文字が浮かび上がった。
《解析》
「……は?」
静まり返るギルド。
え。
解析?
それだけ?
大柄な男が吹き出した。
「ぶっ……!」
次の瞬間。
ギルド中が爆笑に包まれた。
「解析ぃ!?」
「戦闘向きじゃねぇ!」
「完全に外れスキルじゃねぇか!」
「地味すぎるだろ!」
好き放題笑われる。
えぇ……。
そんなダメなのこれ?
受付嬢も苦笑していた。
「《解析》は珍しいですが……戦闘能力は低いですね」
「マジか」
いや、
でも神権あるしな。
別にいいか。
すると、
大柄な男が肩を叩いてきた。
「気にすんな新人!」
めちゃくちゃ笑ってる。
「まあ荷物持ちくらいにはなれるだろ!」
失礼すぎる。
だがその時。
「……おかしい」
フィアが呟いた。
全員の視線が彼女へ向く。
「フィア?」
彼女は真っ直ぐ水晶を見ていた。
赤い瞳が細められている。
「普通、《解析》程度であんな反応はしない」
「……え?」
ギルドが少し静かになる。
受付嬢もハッとした顔をした。
「そ、そうですね……」
水晶はまだ、
微かに震えていた。
しかも、
表面にヒビまで入っている。
……あれ?
これ、
壊れかけてない?
「おいおい」
大柄な男が引きつる。
「まさか不良品か?」
その瞬間。
パキッ。
乾いた音が響いた。
次の瞬間――。
バリンッ!!
判定水晶が砕け散った。
「…………」
沈黙。
完全沈黙。
受付嬢が青ざめる。
「え」
大柄な男が固まる。
周囲の冒険者たちも、
口を開けたままだ。
俺もびっくりしてる。
え、
壊した?
俺?
「な、何したの……?」
受付嬢が震え声で言う。
「いや俺も分からん」
本当に分からん。
すると。
右手の紋章が、
微かに熱を持った。
……あ。
もしかして。
神権のせいか?
嫌な予感しかしない。
フィアがじっと俺を見る。
「ユーマ」
「はい」
「本当に《解析》だけ?」
怖い怖い怖い。
その視線怖い。
どうする?
神権のことは隠したい。
でも、
この状況で誤魔化せるか?
考えていると、
突然ギルドの奥から声が響いた。
「騒がしいと思ったら……何事だ?」
重い声だった。
振り向く。
奥から現れたのは、
大きな傷跡のある中年男。
黒いコート。
鋭い目。
圧倒的な威圧感。
周囲の冒険者たちが姿勢を正す。
「ギルドマスター……!」
へぇ。
この人が。
ギルドマスターは、
砕けた水晶を見る。
次に俺を見る。
その瞬間。
空気が変わった。
鋭い視線。
まるで、
全身を見透かされるような感覚。
「……ほう」
低い声が響く。
「面白い新人が来たな」




