聖女セリア
黒い衝撃波が迫る。
空気が裂ける音。
鉱山の壁が砕ける。
「っ!」
反射的に右手を突き出した。
紋章が光る。
「――停止」
瞬間。
世界が静止した。
黒い衝撃波が、
目の前で止まる。
砂煙も、
飛び散った岩も、
全部空中で止まっていた。
「……」
何度見てもおかしい。
俺、
本当に何使ってるんだ。
だが、
止め続けるだけでも負荷がデカい。
頭が痛い。
視界が揺れる。
《負荷上昇》
《神経接続率増加》
やめろ怖い。
その時。
後ろから、
驚いた声が聞こえた。
「空間固定……?」
神殿の少女だった。
青い瞳が見開かれている。
「違う……これは……」
やばい。
バレそう。
俺は慌てて叫んだ。
「今のうちに逃げろ!」
ギルドマスターが即反応する。
「全員下がれ!!」
冒険者たちが後退する。
フィアだけは残った。
「ユーマ!」
「大丈夫だから!」
全然大丈夫じゃないけど!
頭が割れそうだ。
すると。
守護者の赤い目が、
ギョロリと動いた。
止まってるのに。
「え」
次の瞬間。
ピシッ。
空間にヒビが入った。
「嘘だろ!?」
停止が破られる。
守護者が咆哮した。
「■■■■■■■■!!」
空気が震える。
まずい。
こいつ、
普通じゃない。
《警告》
《対象が神権干渉へ抵抗しています》
神権って抵抗されるの!?
その瞬間。
守護者が突っ込んできた。
速い。
巨大なのに速すぎる。
フィアが前へ出る。
「はぁっ!!」
銀閃。
剣が走る。
だが。
ガギィィィン!!
弾かれた。
硬すぎる。
守護者の腕が振り下ろされる。
「っ!」
フィアが吹き飛ぶ。
壁へ激突。
「フィア!」
俺が動こうとした瞬間。
青白い光が広がった。
「――神聖拘束」
神殿の少女だった。
無数の光鎖が飛ぶ。
守護者の身体へ巻き付いた。
「■■■ッ!?」
動きが止まる。
すげぇ。
少女は額に汗を浮かべながら叫ぶ。
「今です!!」
その瞬間。
《解析》が反応。
守護者の胸部。
赤い核。
そこへ、
一本の線が見えた。
弱点。
“壊せる場所”。
頭の中へ、
自然に理解が流れ込む。
――重力を一点集中。
「……やってみるか」
右手を向ける。
紋章が輝く。
守護者の核へ狙いを定める。
「潰れろ」
瞬間。
ドゴォォォォォンッ!!!!
超重力。
守護者の胸部が、
内側から押し潰された。
赤い核に亀裂が走る。
「■■■■!?」
守護者が暴れる。
光鎖が千切れ始める。
まずい。
まだ壊れてない。
その時。
フィアが立ち上がった。
口元に血を流しながらも、
剣を握っている。
「フィア!?」
「……まだ動ける」
強っ。
フィアは一直線に駆ける。
守護者が咆哮。
腕を振り下ろす。
だが。
フィアは止まらない。
銀髪が舞う。
赤い瞳が鋭く光る。
「はあああああっ!!」
剣閃。
一直線。
重力で砕けかけた核へ、
正確に剣が突き刺さった。
パキィィィン!!
赤い核が砕ける。
次の瞬間。
守護者の身体が崩れ落ちた。
黒い靄が吹き出す。
そして。
巨体はゆっくり崩壊していった。
静寂。
誰も動かない。
数秒後。
ギルドマスターが低く呟く。
「……倒したのか」
フィアが荒く息を吐く。
「なんとか」
そして。
神殿の少女は、
静かにこちらを見ていた。
青い瞳。
まっすぐ。
逃げられないくらい真剣な目。
やがて。
彼女は小さく口を開く。
「……やはり」
嫌な予感。
「あなた、“神の力”を持っていますね?」
空気が、止まった。




