神殿から来た少女
鉱山の奥。
暗闇の中で、
無数の赤い目が光っていた。
ぞわりと背筋が冷える。
「チッ……!」
ギルドマスターが舌打ちする。
「数が多すぎるな」
闇の中から、
次々と人影が現れる。
ボロボロの鎧。
黒い靄。
不自然な動き。
全部、
さっきと同じ。
《汚染変異体》
しかも。
《危険度:C〜B》
「おいおい……」
普通にヤバい。
冒険者たちも顔色を変えていた。
「失踪した連中か……?」
「こんなの、もう人間じゃねぇ……!」
空気が張り詰める。
その瞬間。
変異体たちが一斉に動いた。
「アァァァァッ!!」
速い。
人間とは思えない速度。
「来るぞ!」
ギルドマスターが前へ出る。
剣閃。
一体を斬り飛ばす。
だが。
後ろから別の個体。
さらに横から二体。
数が多い。
フィアも剣を抜いた。
銀閃が走る。
変異体の腕が飛ぶ。
「ユーマ、下がって」
「でも!」
「今は邪魔」
ひどい。
でも否定できない。
俺、
近接戦闘の経験ゼロだし。
その時。
一体の変異体が、
冒険者へ飛びかかった。
「っ!」
間に合わない。
そう思った瞬間。
青白い光が走った。
「――聖結界」
静かな声。
神殿の少女だった。
瞬間。
透明な壁が展開される。
ドゴォン!!
変異体が弾き飛ばされた。
「おおっ!?」
すげぇ!
少女は静かに前へ出る。
ローブが揺れる。
そして右手を掲げた。
「穢れを祓います」
次の瞬間。
眩い光が広がった。
「――浄化」
パァァァァァッ!!
神聖な光。
空気が震える。
変異体たちが苦しみ始めた。
「ギャァァァァッ!!」
黒い靄が蒸発していく。
すごい。
完全に聖女系だ。
《解析》が反応する。
《高位神聖術式》
《汚染特攻効果を確認》
なるほど。
相性いいのか。
フィアが驚いた顔をした。
「……強い」
神殿の少女は、
淡々としていた。
「下がっていてください」
その姿は、
妙に神々しかった。
だが。
次の瞬間。
鉱山全体が揺れた。
ゴゴゴゴゴ……!!
「!?」
天井から砂が落ちる。
変異体たちが一斉に後退した。
まるで。
“何か”を恐れるように。
《警告》
《高位個体 接近中》
またかよ!?
暗闇の奥。
そこから、
重い足音が響く。
ドシン。
ドシン。
空気が変わった。
冷たい。
息苦しい。
そして。
巨大な影が現れる。
「な……」
誰かが息を呑む。
デカい。
三メートル近い巨体。
黒い外殻。
人型。
でも顔がない。
代わりに、
胸部に巨大な赤い目玉が埋め込まれていた。
「なんだよあれ……」
《鉱山守護者》
《汚染変異上位種》
《危険度:A》
A!?
おかしいだろ!!
フィアの顔色が変わる。
「こんなの聞いてない……!」
ギルドマスターですら険しい顔だった。
「撤退準備しろ」
即決だった。
つまりそれくらい危険。
だが。
守護者の赤い目が、
こちらを向いた。
そして。
視線が止まる。
俺の右手。
紋章。
瞬間。
守護者が咆哮した。
「■■■■■■■■!!」
音ですらなかった。
空気が爆発する。
「っ!?」
全員が吹き飛ばされる。
やばい。
強すぎる。
その時。
《解析》が、
勝手に情報を流し込んできた。
《核を破壊せよ》
「核?」
守護者の胸。
赤い目玉。
あれか。
だが。
どうやって?
その瞬間。
守護者が腕を振り上げた。
黒い魔力が集まる。
「ユーマ!!」
フィアが叫ぶ。
直後。
巨大な黒い衝撃波が放たれた。




