消えた冒険者たち
ギルドの空気は、
妙な静けさに包まれていた。
神殿の少女。
封印術式。
解析。
さっきまで騒がしかった冒険者たちも、
今はこっちをちらちら見ている。
居心地悪すぎる。
「……」
白銀の髪の少女は、
相変わらず真っ直ぐ俺を見ていた。
青い瞳。
綺麗だけど怖い。
なんか全部見透かされそう。
「おい」
ギルドマスターが低い声を出す。
「その辺にしろ」
少女は小さく頭を下げた。
「失礼しました」
礼儀正しい。
でも圧はすごい。
ギルドマスターは俺を見る。
「新人」
「はい」
「お前、最近トラブル引き寄せすぎだ」
「俺のせいですか!?」
「多分な」
否定できない。
フィアが小さくため息を吐いた。
「同意」
ひどい。
その時。
バンッ!!
ギルドの扉が勢いよく開いた。
「ギルドマスター!!」
飛び込んできたのは、
若い冒険者だった。
息が荒い。
顔色も悪い。
「……どうした」
ギルドマスターの表情が変わる。
冒険者は息を切らしながら叫んだ。
「また消えました!」
ギルドがざわつく。
「何!?」
「今度はどこだ!」
冒険者は震える声で答えた。
「北の廃鉱山です……! 捜索に行った三人が戻ってきません!」
空気が重くなる。
俺はフィアを見る。
フィアの表情も険しかった。
「また?」
小さく呟く。
また?
つまり、
初めてじゃない。
ギルドマスターは舌打ちした。
「……これで五件目か」
五件!?
かなりヤバくない?
周囲の冒険者たちもざわついていた。
「やっぱ異常だ……」
「最近おかしいぞ」
「魔物暴走と関係あるのか?」
嫌な空気だった。
すると。
《解析》が勝手に反応した。
視界に、
赤い線が浮かび上がる。
ギルドの壁。
地図。
そして。
北の廃鉱山。
そこだけ、
黒い靄みたいなものが見えた。
《高濃度汚染領域を確認》
「……は?」
思わず声が漏れる。
全員がこっちを見る。
しまった。
ギルドマスターが目を細めた。
「新人、何か分かるのか?」
「いや、その……」
どう説明すればいい。
すると神殿の少女が、
静かに口を開いた。
「……見えているのですね」
ギクッ。
少女の瞳が細められる。
「普通は感知できない魔力汚染を」
周囲がざわつく。
「魔力汚染?」
「なんだそれ」
少女は静かに説明した。
「本来存在してはいけない濁った魔力です」
空気が少し冷える。
「強い魔物が発生しやすくなり、人間にも悪影響を及ぼします」
怖っ。
それ絶対ヤバいやつじゃん。
ギルドマスターは腕を組む。
「神殿は原因を掴んでるのか?」
「まだ」
少女は首を横に振った。
「ですが、最近各地で同様の現象が確認されています」
フィアが小さく呟く。
「だから魔物が暴走してる……」
なるほど。
繋がってるのか。
するとギルドマスターは、
大きく息を吐いた。
「……捜索隊を出す」
周囲の冒険者たちが顔を上げる。
「俺も行く!」
「放っておけねぇ!」
さっきまで騒いでいた連中が、
真剣な顔になっていた。
なんだかんだ、
ちゃんと冒険者なんだな。
ギルドマスターは視線を巡らせる。
そして。
なぜか俺で止まった。
嫌な予感。
「新人」
「はい」
「お前も来い」
「えっ」
即!?
「ちょっと待ってください!」
俺まだ初心者なんだけど!?
ギルドマスターは真顔だった。
「お前の解析、使える」
「いやでも」
「フィアも同行させる」
フィアが頷く。
「問題ない」
いや君強すぎるから問題ないだけでは?
すると神殿の少女も口を開いた。
「私も同行します」
ギルドマスターが眉をひそめる。
「神殿が動くのか?」
「原因調査は私の任務でもあります」
へぇ。
少女は再び俺を見る。
「それに」
嫌な予感。
「彼の力も気になりますので」
やめてその興味津々な目。
《警告》
《対象から観察されています》
だからなんなんだその表示は!?




