解析スキルの異常進化
「――見つけました」
静かな声だった。
なのに。
ギルド中の空気が一瞬で張り詰める。
白銀の髪の少女は、
まっすぐこちらを見ていた。
いや。
正確には――俺を。
「……」
嫌な汗が流れる。
《解析》が、
警告みたいに点滅していた。
《高濃度神聖魔力を確認》
《危険度:測定不能》
測定不能!?
怖いんだけど!?
隣のフィアも、
警戒したように少女を見ていた。
「神殿の人間……」
小さく呟く。
どうやら知ってるらしい。
少女はゆっくりこちらへ歩いてくる。
足音は静かなのに、
妙に存在感があった。
冒険者たちも自然と道を開ける。
なんだこのラスボス感。
そして。
少女は俺たちのテーブル前で止まった。
青い瞳が、
まっすぐ俺を射抜く。
「あなた」
「は、はい」
「先ほど強い魔力反応がありました」
ギクッ。
絶対俺だ。
クレーター案件だ。
少女は続ける。
「街の外で何かありましたか?」
「えーっと……」
どう答える。
フィアが横から口を開いた。
「上位種と遭遇した」
少女の目が少し細くなる。
「シャドウウルフ・ロードですね?」
「知ってるのか」
「神殿は周辺魔力を監視しています」
へぇ。
異世界ハイテクだな。
いや魔法テクか。
少女は再び俺を見る。
その視線が鋭い。
なんか見透かされてる感じがする。
《警告》
《神聖感知系能力を確認》
うわ怖っ。
俺は慌てて視線を逸らした。
すると少女は、
小さく首を傾げる。
「……?」
その瞬間。
《解析》が突然暴走した。
視界が光る。
大量の情報。
文字。
魔力構造。
神聖術式。
全部流れ込んでくる。
「っ……!」
頭が痛い。
「ユーマ?」
フィアが驚く。
少女も目を見開いた。
《対象解析開始》
やめろォ!?
勝手にやるな!
だが止まらない。
少女の周囲に、
青白い線が見え始める。
魔力の流れ。
術式構造。
体内循環。
全部見える。
《個体名:???》
《神聖属性適性:SS》
《加護反応:高位》
《封印術式を確認》
「……封印?」
思わず呟いてしまった。
瞬間。
少女の表情が変わった。
「――なぜ、それを?」
やばい。
フィアがこちらを見る。
「ユーマ?」
しまった。
完全に口滑った。
少女は一歩近づく。
「今、何を見ました?」
圧がすごい。
怖い。
でも《解析》は止まらない。
次々情報が流れ込む。
《神殿所属》
《高位神官候補》
《複数封印術式により力を制御中》
うわぁ。
なんかすごい子だった。
少女は明らかに動揺していた。
「ありえません……」
「え?」
「私の封印は最高位術式です。見抜ける人間など……」
そこで彼女は止まる。
そして。
じっと俺を見る。
「……あなた、何者ですか?」
やばい。
その時だった。
「おいおい、食堂で睨み合いはやめろ」
低い声。
ギルドマスターだった。
助かった……!
ギルドマスターは少女を見る。
「神殿のお嬢さん。ここはギルドだ」
「……失礼しました」
少女はすぐ一歩下がった。
礼儀はちゃんとしてるらしい。
ギルドマスターは俺を見る。
「新人」
「はい」
「お前、また何かやったな?」
鋭すぎるんだよこの人。
俺が黙っていると、
フィアが口を開く。
「ユーマのスキル」
「ほう?」
「多分、《解析》」
ギルドマスターが眉をひそめる。
「解析ぃ?」
完全に疑ってる顔。
まあ普通そうなる。
すると少女が静かに言った。
「……ただの解析ではありません」
空気が変わった。
少女の青い瞳が、
真っ直ぐ俺を見る。
「普通の解析スキルでは、私の封印術式は見えない」
ギルド内がざわつく。
「封印術式?」
「神殿の術式を?」
「新人が?」
やめて。
目立ちたくない。
だが少女は、
じっと俺を見つめたままだった。
「興味があります」
「へ?」
「あなたの力」
その瞬間。
《解析》が再び反応する。
《警告》
《対象から高い関心を向けられています》
そんなシステムメッセージみたいに言うな。




