第二部 第64話 夢の続きをⅢ ベイビーアサルト マギアス エピローグ②
謎が多い、というか場違い感しかない、若い母親と10歳三つ子の四人パーティ。
私が同行して目撃した情報を、ここに開示する。
「はあああっ!! 風神腿っ! 愛斗っ!」
「はい。母さま。‥‥【治癒】!」
長男、エトリオ。水色の身の回り品が目印。
職業 僧侶、一応後衛。
パーティの回復担当で、槍術もできるいわゆる万能僧侶。そして自身は医学の知識もあるようで、治癒系魔法無しでもある程度傷病の手当ができるという。10歳の子供がだぞ? ここまででも腰が抜けるほどの驚きなのだが、それだけでは無い。なんと数種の【古代語魔術】も扱える、と。はい? それは一握りの王族か専門の考古学者しか使えない、魔法ではなく散逸した上代の魔術なんだが。10歳の子どもが【古代語魔術】‥‥‥‥もう意味がわからない。
「母さま。別口に敵来たから止まって。また突出したらだめだよ。こっちはぼくが先制する!」
「ちぇっ。わかったよ~。じゃそっちは任せたわ。夢斗!」
次男、ムトリオ。深紅の身の回り品が目印。
職業 魔法剣士、一応前衛。
万能といえばこの子もか。壁役含めた前衛、後衛、物理、魔法。全部を高レベルでこなすパーティのバランサーであり、稀有な【特殊浄化】系の能力も持つ。おおこの子、受け太刀上手いな‥‥! ああ、そして噂だが、ドラゴンに変身する能力が有るとか無いとか。ド、ド、ドラゴン? はぁ? ‥‥そんなことが噂に? 一体何処のどいつが言いだした‥‥‥‥ってそこに驚く前に、【特殊浄化】は聖女の能力、【靈能巫女魔法】だろッ! どういう経緯で10歳男子がコレ修得してるんだよ‥‥そもそもなんでオトコが聖女の聖女たる巫女のチカラを‥‥だめだ! ツッコミどころが多すぎる‥‥。
「うおりゃあぁあ! ってコレ! 奥の連中の魔法ウザいな! 詩斗、面制圧で黙らせろ!」
「はい。母さま」
三男で末っ子のシトリオ。桃色の身の回り品が目印。
職業、魔法使い、射手、後衛。
攻撃魔法全般をこなすが、驚異的な魔法の命中率を誇る。恐らく命中度を上げるそれ系の【固有スキル】持ちだ。そして魔弓も扱う。腕前もさることながら、その射形が美しいと街の女衆に評判だとか。さらには、弓より強力な「銃」という、鉄でできた長距離用の飛び道具を持ち、超長射程攻撃が可能だという噂。噂だというのは、その「銃」。放たれた矢を見たヤツが皆無なんだ。「標的を仕留めた後に音がした」と、居合わせたヤツが震えていたそうな。しかもしかも、完全に身を隠しての「スナイプ」という狙撃術を駆使するそうだ。【固有スキル】との相性が良すぎる。こんな相手の暗殺ターゲットになってしまった日には。音がする前に届く「矢」と狙撃術。どうやって防ぐんだよ。
そして最後に。
「うぉらアマリア奥義千階舞踏ッ!! 瑞月! 見返りかかと落とし二段蹴りっ!」
「やめろこんな狭いトコで‥‥痛っ!」
「お前バカかっ!?」
このパーティのリーダーにして、武闘家のラーコー。
全身漆黒の衣装に身を包んだ、三つ子の母親。そうと名乗る割に異常に若い。とても11年前に三つ子を宿したとは思えない見た目だが。そして彼女は、前述の三つ子とは完全に別の意味で言葉が無い。なんともふざけた名前だが本名な訳は無いよな? 彼女はこの、気味が悪いほど優秀で万能な三つ子の母親とは思えないくらい、武道ひと筋で脳筋だ。ただひたすらに殴る、蹴る。しばしば無意味に突出するし、その足技が暴発して味方に被害が出る。私も背中を蹴られた。憶えてろよ。くそ。
以上、合同クエストで得た親子連れ4人パーティ、「アマリア解放戦線」の詳細だ。
私も一応歴史学者で、研究のために、時には世界中に足を向ける。「地名」は特に、その地域の由来の宝庫だ。実に雄弁に歴史を語ってくれるものだ。
なので、私も各地の地名とその由来には、精通していると自認していたのだが。
なんだ? 「アマリア」って‥‥‥‥?
そんな国とか地域、民族名も。聞いたコト無いんだが?
***
「あっはっは! ワリワリ! 一杯おごるからさ!」
私が背中をさすっていると、あのラーコーという女冒険者から肩を叩かれた。ここはギルド併設の酒場、日はもうとっぷりと暮れている。
「母さま~」
「ぼくもおなかすいた~」
「肉がいいな~。焼いた肉」
「だからキミタチ、ここではアタシのコトはリーダーと呼べってば」
こらこら。こんな夜更けまで子供を連れ回すとは。こいつ毒親か? バーは酒を喰らう荒くれ者ばかりだが、この子たちは慣れてる様子だ。
「ラーコーさん、昨日のお代がまだ‥‥」
「そうだった。じゃ、はいよ」
「あっ毎度‥‥イエこれだと多すぎです」
「じゃなんか、適当に喰いもん持って来て~」
「「「肉~~!」」」
「キミタチ、野菜も食べるんだよ?」
「え~?」
「そういう母さまだって」
「あんま食べないじゃん」
「だよね~」
「う、うるさいな!」
三つ子との口論に敗れた彼女は、おもむろに懐から金貨をジャラジャラ出す。‥‥グラロス金貨‥‥やはりこの女、見覚えがあると思ったがまさか‥‥!
しかし雑だ。飲みかたも支払いも実に雑だ。私とは相容れない人種なのは確かか。
「おじさ~ん」
「学者さまなの?」
「頭いいんだね」
「ほかの国のこと、教えて?」
「知りたい~」
「あ、魔物でもいいよ~」
知的好奇心に満ちた、純粋無垢な六つの瞳。
ああ、あの女に比べて、この三つ子は天使のようじゃないか? 外見こそ親子だが内面はどこも似つかん。
「え? ぼくらは母さまの本当の子供じゃないよ?」
「ちがうよ夢斗。本当の子供だけど母さまからは生まれてない」
「ふたりともケンカはだめだよ? あ、学者さま、ごめんね。愛斗も夢斗もいつもこうなんだけど、気を悪くしないでね?」
ううむ何だ? 何やら込み入った話がありそうだな。そもそも、10歳かそこらで冒険者なのも異常だが。この子たちのあの異常なまでの様々な能力だ。一体どうしたらあんな能力を持ち合わせることになるんだ‥‥?
「あ、おじさんそれはね、お母さんの影響かもかな」
「お母さん?」
「そう。ぼくらはね、みんな別々のお母さんに育てられたんだ」
「‥‥‥‥別々、だって? 『お母さん』? 『母さま』とは呼ばないのかな?」
「母さまは母さまだよ」
「もしかしてだけど、つまり別の人なのか?」
「もしかしなくても別々だよ~」
「そうか。じゃ君たちを産んだのが『母さま』で、育てたのが『お母さん』、で合ってる?」
「そうだよ~。さすが学者まさ~」
「そうじゃないよ。ラーコー母さまじゃない母さまが僕らの本当の母親だよ」
「だから夢斗、ラーコー母さまだって本当の母親だって」
「けんかはだめだよ~」
「‥‥‥‥どういう意味だ? この子らは総じて聡明なのに‥‥??」
三つ子の超絶能力の秘密を知るべく、探りを入れたつもりだったが。
何やら、ややこしい話に迷い込んでしまった。




