第二部 第62話 マギアスは異世界マジ考察ガチ勢。当然あの設定も身も蓋もなく解題するよ!②
「そもそも、『魔王』、『勇者』、『聖女』など、ただの呼称なのです」
こっほん。春さん語る、異世界ファンタジーの、あるある設定の解説。
って、イキナリぶっこんできたね?
「魔王を勇者が討伐する。聖なるチカラを持つ者が聖女。この世界で、最初に誰が定義をしたのでしょう? 誰が名乗ったのでしょう? そういう古典、神話などがあります。ですが、それだってそもそも異民族や敵を討ち果たした人物などが居て、それを伝承化したものでしょう?」
「なんか紘国の歴史もそうだよね。勇者じゃないけどヤマタノオロチ討伐とか」
とはぬっくんの弁。
そして春さんはあっちの世界で、紘国の神話とか普通に履修してる。
「そうです。まず事実や事件があって、その後に伝承があるのです。『魔王』という呼称は、ある人物が自分たちの部族を脅かす外敵を討って、その外敵をそう称したから、だと私は思います。この世界では魔族という明確な人類の天敵がいたので、必然的に魔族のラスボスが『魔王』と称された、と」
「じゃあ、その『魔王』をやっつけた人が『勇者』?」
「そうですね、ゆめさん。話の流れ的に、物語的にそう言ったほうがわかりやすいから、語り継がれる内にそう固まっていった、と私は考えます。『魔王』を倒した者が、後に『勇者』と呼ばれるのです。『聖女』もそう。神官や僧侶系の能力者で、人々の救済や勇者を助けた女性が、便宜上そう呼ばれた、と」
「な~る。『魔王』も『勇者』もただの言葉、か」
一応納得のまきっちと、さらにツッコむぬっくん。
「ゲームとかだと、カミサマのご神託とか水晶玉で聖女って決まるけど」
「この世界には祈りの対象としての神はいますが、実際に姿をあらわしてコメントを残した神はおりません。奇跡と言われる事績も、冷静に見れば自然現象だったりしますので。咲見さんの仰るように、ゲームや映画、おとぎ話で勇者や聖女が特別な存在であり、カミサマのような超存在からチカラを得たり行使できたりするのは、創作された物語としてはアリでしょう。ですが、この世界は魔法があろうと現実世界です」
ふむふむ。結局ココって私たちの世界からすると「異世界」だけど。
あとは私たちの世界と変わらないのよね。魔法は「素粒子:魔素」で説明できる科学の現象だし、その魔素要素で魔王も魔物も生まれてるらしいし。
「‥‥それ言っちゃうと‥‥紘国世界でもそんな感じだからなぁ‥‥‥‥」
「コメント、って。仲谷さんが言うとなんかオモロイな」
と、まきっちが春さんの言葉じりでややウケしたところで。
「あら。皆さんで面白そうなお話を。では私からもひと言」
エイリア姫様が現れたよ。
「先ほどの春の説明で十分ですが、一応補足を。ひめさんを『聖女』と呼ぶことに関しては、私と春、秋で自然とそう固まっておりました。秋が未来を視ていたからです。ひめさんがその能力を発現すれば、もうそれは『聖女』足りえる存在でしたから」
「そっか。先にわかってたからね。今回は」
「はい。それともうひとつ。今回私はエリーシア国王女として、各国に対魔王の結束を呼び掛ける立場にいました。‥‥‥‥そうすると、非常に都合が良いのですよ。『勇者』や『聖女』というのは」
エイリア姫が優雅に椅子に座る。と、春さんが追加のお茶を持ってきた。
「なんでだろ?」
「あ、政治的にとか?」
「ただの言葉なのに?」
「そうですね。いわゆる伝承を信じる方々にとっては、『勇者』や『聖女』というのは決定的な言葉です。勝利を確信させますし、ゆえに軍の士気が上がり、ゆえに、各国がより強く結束する」
「あれ? 順番が逆だよ。結束したから『勝てるぞ!』って士気が上がって、それで勝利するんだよ?」
「暖斗さんの言う通りです。でも私は、今回はその逆の順を追いました」
「あ~姫さんズルいな。『勇者』や『聖女』って言葉や存在をダシにして、味方のテンション上げたり各国をまとめたりに使ったんだ」
「ふふ。岸尾さん、否定はいたしません」
「私たちには、秋の【予後】がありましたからね」
ここでひと息。
みんなでお茶に口をつける。
「では。ここまでが先ほどの春の説明への補足。次からが私なりの『勇者』とは? の見解になります」
姫様は一回下に目を落として、姿勢をキレイに正した。
‥‥まあ元々、居ずまいを崩してはないんだけどね。
「お答えします。『勇者』とは? ただの『ご都合』です」
「ええぇ~~!? また!?」
「ぬっくんが再びドン引き。マジウケる!」
「姫様ももう。いきなり結論で一刀両断しなくても」
「ふふ。これは失礼いたしました。では少しかみ砕いて。‥‥人類の生存の脅威となる『魔王』がいますよね? そして、それを屠った『勇者』」
「ふんふん」
「では、『魔王』亡きあと『勇者』はどう身を振るのでしょう? 魔王討伐の、その後」
「そりゃあ、みんなに感謝されて『英雄』になるんじゃない?」
「ぬっくん、また疑義のあるワード増やして」
「あ、そうだよ。『英雄』もだよ。どうなるんだろ?」
「皆様。ここでは一旦『勇者』と『英雄』は同義と見做します」
「「は~~い」」
何だろう。私とまきっちとぬっくん。
保育園の園児みたいに返事をしてしまった。
「暖斗さんのご意見。『みんなに感謝されて余生を暮らす』は、正解です。何か大きな成果を出して、特に人類の生存を脅かす懸案事項を処理したのですから、そういう人物もいたと思います。‥‥しかし私見ですが、人は10年もすれば昔の痛みを忘れます。ただ感謝されて、余生を全うできるでしょうか?」
「あ、あれだよ。お姫様と結婚するとか?」
「うん。あと、王宮の剣指南役になるとか」
「ひひ~~。それなら、『田舎でのんびり暮らす』とかもアリだな」
「全部正解です。そして残念ですが、それらは完璧な答えではありません」
「あ、そうだよね。ちょうどいい歳のお姫様居ないかもだし。居ても勇者様タイプじゃないかもだし。他にお相手いたりかもだし」
「元勇者が王宮で暮らしてて、でも悪い大臣の陰謀で失脚させられるとか、ゲームでよくあるな~」
「だいたいそもそも、辺境でスローライフって、そういう作品の読者の願望だしな~~」
「そうです。そして皆様。実は重要な事項をひとつ、忘れているのです」
「なんだろ? 『勇者』について、だよね? ひめちゃん?」
「え~~。私もわかんない」
「そう。『勇者』とは。人類にとってのその本質とは?」




