第二部 第62話 マギアスは異世界マジ考察ガチ勢。当然あの設定も身も蓋もなく解題するよ!①
戦いは終わった。
私の怒りの、本気のドラゴンブレスを受けた魔王の骨は。
飴のように熔けて、雪のように消えた。
ああ私? 魔王の息の根止めたの確認した辺りから、竜化が解けて。
事情を知ってるまきっちとかが(着衣とか)助けてくれて、何とかなったよ。
フィナーレとして、各国の精鋭兵士さんの前で、私のドラゴン形態を晒して。
映画とかだと、ここで幕切れだよね? 漫画とかでも。
でも実際は、ココからも色々あるのです。雑務が。
ちなみに。私のドラゴン形態、人間の姿を意識したらすぐ戻ったよ。人の姿に。
この最後の最後で‥‥変身を解くコツを会得するとは‥‥はぁ‥‥ため息。
戦いの場は。
魔王の消滅を確認して。しばらくはみんな絶叫してたよ。サッカー紘国代表がワールドカップ優勝した(という想定)、くらいのテンションで。
そこから我に返る人がちらほら。
そういう人から、自分の怪我の確認とか、装備の確認とかしだして。
上司に指示を受けたり、負傷兵を運んだりしだしたよ。
まあ、そうなるよね?
その後ラポルト積載の兵糧というか、携行食と飲み物が振る舞われて。みんな小休憩をした。
魔王と激闘だったからね。
でも正直なところというか、みんな早く帰りたかったみたい。
ここはさっきまで魔物湧く死地だったし、この島岩ばっかで殺風景だし。
なので、ひと息つくと腰を上げる人が多かったよ。
「では、各自撤収作業に入ってください。連絡は各国の広報を通して。‥‥‥‥最後に、魔王討伐の英雄、ラポルト16の皆さんとドラゴン聖女、姫の沢ゆめ様に、もう一度大きな拍手を!」
パチパチパチ‥‥
誰が「ドラゴン聖女」よ‥‥‥‥っ(泣)
「あ、お疲れ様です。お先に失礼します」
「お疲れ様です」
「討伐ご苦労様した~」
「したっす!」
的な流れ。
なんだろ? 既視感。芸能界のコンサートとかで何度も見た光景。まあ、魔王討伐もおっきなイベントだったと考えれば、こんなもんなのかな?
私たちは拍手で見送られながら、戦艦ラポルトに乗り込んだ。
一応区切り。実際には負傷兵さんとか軍隊の移送で、また何往復かするんだけど。
「そういえば。この戦艦ってどうするの? 何時かわからないけど、私たちってあっちの世界に帰るんでしょ?」
「それな。附属中三人娘で再封印するみたいだぞ。どっちみちウチらがいないと動かないし、だったらこの世界に無いほうがいい、ってさ」
「たぶん姫様の【大魔力】と泉の【不可逆性侵襲】だろ?」
「あ~ね。それで時間停止×効果永続、みたいな」
「仲谷妹がいるんだ。どうにでもするだろな」
ふ~ん。まあ順当よね? この世界だと、ラポルトってぶっ飛び高性能すぎるもんね。
せっかく魔王倒したのに、この艦を巡って戦争とか、悪用されて圧政とか? それが始まっちゃったら「一体なんのために?」だもんね。
一応エリーシア王国で管理をするというか、封印して伝承を残すらしい。
伝承、かぁ。また数百年とかしたら、「古に存在したかもしれない伝説の超兵器」になってるかもね。
「そう。『伝説』で思いだしたけどぬっくん。ぬっくんて『伝説の勇者様』って誰かに呼ばれてた気がするけど?」
「それ言うならひめっちも『聖女』とか言われてなかった?」
「え? 私? 確かに春さんからはそうって」
「魔王倒した時にだよ。ラポルト乗る時に各国の兵隊さんが『勇者様~! 聖女様~!』って呼んでたゼ☆」
「聞こえたけど。各国の皆さんにも、『聖女、勇者』って概念があるってことだよね?」
私とまきっちは食堂に行く。そこには先客でその彼がいた。
「うん。勇者、ね。何人かそんな風に言ってたねぇ」
「なんでそう呼ばれてたんだろ? なぜなぜな~に?」
「魔王倒す時にDMTに乗ったりしたからかな? あれは中々にアツかった!」
「そうだよ! 紘国だとセプタシオン駆ったら『騎士』でしょ? ここでもDMT駆ったら『勇者』、とか?」
「なるほど~」
「僕は言われても自覚無いなぁ。そもそも『勇者』って何?」
「ひめっちはアレだ。ヘンな魔法使えるから」
「【靈能巫女魔法】? だから『聖女』? その定義でいいのかな?」
「へ。ココで改めてウチが問題提起。『勇者様、聖女様とは?』」
「ゲームだと、そういう伝説があるとか言い伝えが~とか。あと水晶玉見た人が『この人が~』って」
「職業『勇者』とかもあるな」
「そこまで行くと完全にゲームの世界の都合だよね。『勇者』が職業なワケないよ」
「だよね。異世界名も結局まきっちが命名しちゃったし魔法は、七道さんたちが原理を解明しちゃったし」
「ちゃんとこの異世界はリアルだよね。魔法とかも科学の法則に則った仮説だった」
「でもな~」
ぬっくんとまきっちは腕を組む。
「それだけに『勇者』とか『聖女』設定が、イマイチ浮いたカンジなんだよな~」
「う~ん」
「じゃあさ、春さんに訊いたらどうかな? きっとちゃんと教えてくれるよ?」
私の提案に、ふたりも同意だよ。
「そっか。そうだよ。僕らで直接訊いちゃえばいいんだよ」
「じゃ、早速春さん探すか? お~い。春さ~ん」
***
「お答えします。『勇者』とは? ただの言葉です」
「ええぇ~~」
「ぬっくんがドン引きしております。ウケる」
「春さん。もうちょっと手心というか加減というか」
「といっても私も、こうお答えするしかありません。ただの呼び名です」
「ええぇ~~」
「ぬっくん、異世界来て過去イチでがっかりしてる。ウケる」
「春さん。そんなわざわざ追撃しなくても」
春さんは、ラポルトの個室で片付けをしていた。個室の給湯でお茶が入る。
「では、もう少しご説明しましょうか?」
こほん、とひとつ間を置いて。
「そもそも、『魔王』、『勇者』、『聖女』など、ただの呼称なのです」
春さんが語りだした。




