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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
アクエリア大陸 剣聖編

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魔導級水魔法

【フェリス・グリゼル視点】


 一番被害が多そうな所に来てみたけど……普通の魔者じゃないみたいだね。

 明らかに今まで戦ってきた魔者よりも強い。

 魔者は心のどこかに無詠唱で魔法を使えることから、人間相手に慢心している場合が多いけど、この魔者は見ている先が違う。


 とはいえ……剣が刺さっている状態。

 治癒魔法を使われる前に叩く。


「何人やられたの?」

「民間人は多数。我々の中では七人やられています……!」


 そんなに遅れて来た自覚はないつもりだけど……この短時間でもう七人?

 実力ある人を集めた新世大隊の人も減っている……。


「私があの魔者の魔法をレジストします。隙を見つけて攻撃をしてください」

「了解!」


 私は上空に巻き上げた水を氷塊に変化させ、突き落とした。


「潰れろ!」

「ズゥエアアア!!」


 魔者が振った剣は、落とした氷塊を粉々に砕いた。


「『神速』!!」


 新世大隊の人が魔者の右腕を切り落とした。

 赤い鮮血が舞った。


「腕を一本!!」

「がっ……………消えろ!!」


 私は再び魔者が溶岩を噴き出したのを見て、氷塊を落としたと同時に魔者の足元に設置していた魔法陣から水魔法で魔者を囲った。

 溶岩は水魔法に阻まれ、新世大隊の人には届かなかった。


「弓矢の準備!」

「はい!」


 私の指示で、1人が弓を引き絞って魔者に狙いを定めた。

 水魔法が切れ、魔者の姿が見えると同時に雷魔法を放った。


紫電しでん!!」

「ぐあああああああ!!」


 紫色の雷が魔者に命中した。

 雷魔法を形質変化させ、少ない魔力で敵の神経を焼き切る魔法だ。


「放って!」


 放たれた弓矢は魔者の右肩を貫いた。


「うおおおおおお!!」


 兵士の人がさらに右足を切りつけた。

 魔者が片膝をついた所へ、他の人達が追撃を加えた。


「があ……!! こんな……1人加わっただけで……!」

「人を舐めすぎなのよ、魔族」

「『爆神』!!」


 振り下ろされた一撃は、魔者の息の根を止めるのには充分だった。

 袈裟に裂かれた体からは大量の血が噴き出していた。


「お前の体から噴き出すものは……溶岩なんかよりそっちの方がよっぽどお似合いだ」


 新世大隊の人が吐き捨てるように言った。


 これでやっと一人……。

 被害状況と結果が見合わない。

 魔者だけじゃなくて、魔人も多く現れている。

 このまま戦い続けて、例え勝利することができたとしても国としては運営しなくなる。


 このままじゃ…………グリムの帰る場所がなくなっちゃう……。

 それだけは防がないと……。


 グリムの悲しむ顔なんて見たくないもの。


「貴方達は生きている人達の救護に当たって下さい」

「フェリス様は?」

「私は…………これ以上の町の被害を減らします」


 敵は各地で火の手を上げている。

 これはたぶん、市街地を火災によって焼失させて、被害を拡大させようとする動きだ。


 でも私がそんなことはさせない。


 火は全て消してみせる。


「……私ならできる。魔力をコントロールさせて……強大な力をイメージする……」


 杖を通して魔力を形にしていく。

 目を閉じて明確なイメージを浮かべ、水の動きを知識として理解し、かき混ぜる。


 魔導級水魔法は過去に一度しか使ったことがないけど、他の魔導級魔法よりも攻撃性が少ない分、まだ扱いやすい。


 発動して! 魔導級水魔法!


「包み、流れろ! 清廉にして守護たる潤いを世に与え、はばかる障害を穿うがち給え! あふれんばかりにこぼれる泥神どろがみ寵愛ちょうあいは、不浄のものすら堕としこみ、新たな命を芽吹かせるだろう! さぁ、感銘を受けるがいい! これより降り注ぐものは天恵てんけいなり! 聖界に咲く水蓮花(ロッドスコール)!!』


 暴れ回る魔力を押さえつけながら、詠唱を読み上げた。

 魔力が物凄い勢いで持っていかれるのが分かる。


 杖から一筋の光が上空へと放たれた。

 暗雲が渦巻き、空を支配する。


 即座に雨粒が落ちてきた。

 それは瞬く間に勢いを増し、豪雨のように国中へ降り注ぎ始めた。

 落ちた雨粒が固まり、そこかしこに水で作られた花が咲き乱れ始めた。


 成功した。


 これで火魔法を使おうとも、降り注ぐ雨と、咲き誇った水で作られた花によって即座に消化される。


 この雨も当分は止むことはない。


「これで……被害は拡大しないはず……。だけど私はもう魔力が残ってない……後は任せたよヤシロ君」


 期待するしかない。

 魔王グロスクロウを退けた彼の実力に。

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