バーティゴ・フォルラン
ドット龍将の指揮の元、俺達は西の大門から侵入してくる敵を掃討することとなった。
敵は三方向から攻めてきており、なおかつ空から魔人が降り注いできている。
敵戦力については不明だが、魔人が降り注いでいる数からしても相当な量であることが予想される。
下級魔人相手には5人以上であたるように指示されている。
国軍でも五天羅以上でなければ単騎でぶつかれないほどの相手だ。
「シェラヘザード、この状況どう思う?」
「ああ? 簡単な話じゃねーか。ここまで簡単に侵入を許してるってことは、内通者が軍部の中に混じってるんだろーよ」
「内通者……誰だと思う?」
「知るか」
「……いい加減、機嫌を直したらどうだ?」
最年長のフリースが言った。
シェラヘザードは以前、ヤシロ君に模擬戦で負けてから不機嫌なままだった。
「いつもと変わらねぇよ!」
「いやいや、未だに気にしてるぜこいつ」
「殺されてーのかジャック」
「おお怖、背中は預けられねーわ」
元々は個で生きてきた人達の集まり。
決して仲が良いとは言えないが、それぞれの実力はお互いに認めている。
「俺達は5人で1組だ。信用も信頼もしなくて構わないが、どうするのが一番仕事がやりやすいか分かるだろう?」
「人数が多い方が良い」
「その通り。つまりは、お互いが死なないように助け合えばいいだけのことだ」
「はいはーい、質問です。もしも敵前逃亡した場合は?」
「そんなチキン野郎がこの中にいるのかよ」
「職務放棄で上申しておく」
「めちゃくちゃ甘いな」
などと会話をしているうちに、人々の叫び声が大きくなってきた。
敵がすぐ近くにいるのは間違いない。
「魔者と魔人。どっちが来ても最速キルは俺のものだ」
シェラヘザードが言ったと同時に、赤い鎧を着た魔者の姿を発見した。
倒れている人々を剣によって串刺している。
「野郎! 神剣流一の剣技『神速』!!」
一度の踏み切りでシェラヘザードが敵に斬りかかったが、首元目掛けて放たれた一閃は鎧のコテの部分で防がれた。
「戦うタイプの人間か」
「戦わないタイプを斬って喜んでるんじゃねぇぞゴミが!!」
続け様の『神羅』も防がれていた。
そこへ私達も合流する。
「防がれてんじゃねーよ」
「うるせぇ! 調子が悪りーんだよ今日は!」
「多勢に無勢……。弱い者ほど徒党を組む」
「強者はどんな相手であっても全力で潰すだけだ」
「お前らも大人数できてんじゃねーか」
「人々を殺した償い……とってもらうぞ!」
各々が武器を構えた。
ここにいる五人は全員、神剣流を学んでいる。
毎日のように修練場で競い合ってきた。
ある程度の連携も取ることができる。
「一人に遅れを取ることなどない!」
5人で一斉に飛びかかった。
「…………もう遅れてるんだよ」
魔者の体から溶岩が噴き出した!?
か……回避を……!!
「「「ぎゃあああああああああ!!!」」」
私は何とかかわせたが、3人は溶岩にのまれた。
肉を鉄板で焼いた時のような、酷い音と共に火の手が上がった。
「ジャック! ロッド! フリース!」
「あああああああ………………」
ドロドロと人としての形を保てなくなっていく三人。
こちらを見る目から背けたくなる。
「二人避けたか。良い反射神経だ」
「この野郎ぉ……!! よくもやってくれやがったな!!」
「シェラヘザード! 迂闊な行動は出来ない! 敵は無詠唱で魔法を使ってくる!」
魔者相手に遠距離は愚策だ。
だからこそ近距離戦で挑んだのに、即座に対応された……!
私が今まで相手にしてきた魔物や魔者達とは別格とでも言うのか……!?
「派手に暴れろ。そういう命令なんでな、長く構っていられる暇はーーー」
「盛れ、熱せよ! 炎包」
魔者に火球がぶつかり、包み込むように燃え盛った。
「大丈夫ですか!? 遅れてしまい申し訳ありません!」
常駐していた国軍……ではなかった。
10名ほど。
恐らく非番の人達だろう。
家が近いから直接向かってきたようだ。
「援軍か……。流石に数はいる」
あれぐらいでは奴もやられないか!
「敵は1名! マグマの魔法を使ってくる!」
「了解!」
魔法が使えるものは後方に、剣術が得意なものは前衛に来た。
私や兵士達と、反対側にいるシェラヘザードで魔者を挟み込んでいる状況だ。
「溶けろ」
「包み、流れろ! 爽流の極み!」
魔者が溶岩を吹き出したのに対し、誰かが中級水魔法で対抗した。
「数の優位で追い込め! 敵に反撃の隙を与えるな!」
「三の剣技『神羅』!」
同時に三撃を繰り出す技を放った。
魔者はそれを同じく剣で防いだ。
だが、空いた背中に向かってシェラヘザードが『神速』で切り掛かっている。
「ぬるい」
再度、溶岩が背中から溢れ出し、シェラヘザードを襲う。
「関係ねぇ!!」
そのままシェラヘザードは剣を魔者に突き立てた。
剣は鎧を突き抜け、魔者の下腹部を貫いている。
「ぐあああ!!」
「ぐ……! ぐぐああああ!! いてええええ!!」
シェラヘザードの両手が溶岩に飲まれ、ドロドロに溶けていた。
既に骨まで見えている。
身を犠牲にした一撃だ。
「彼を救出! この好機を逃すな!!」
私が離れると同時に四人の兵士が切り掛かっていった。
「俺は…………火車隊の一員だぞ!!」
溶岩が再度吹き荒れた。
その放出スピードと放出量は凄まじく、四人の兵士とシェラヘザードは一瞬にして溶岩に飲み込まれていった。
「シェラヘザード!!」
「離れて!! これは我々の水魔法でも防げない!」
「だけど…………くそ!!」
私には何も出来ないのか……!
彼らを助けることも……この溶岩を止めることも出来ない……!
「奴をどうにかしないと、この辺り一帯は溶岩に飲み込まれるぞ……!」
「泥神の聖水!!」
突如として現れた大洪水が溶岩を飲み込んだかと思えば、水はそのまま天へと吸い上げられ消えていった。
今ので完全に溶岩は無くなってしまった。
「これは…………上級水魔法!?」
「だ……誰が……」
私達が水の出所を見た先には、1人の女性が立っていた。
山高帽に大きめの杖。
この国に限らず、世界中の人々が知っている希望の象徴。
そして、この国の最高戦力。
「あの魔者を倒しますよ」
勇隣左将軍フェリス・グリゼルだった。




