気配
腕の中に柔らかい感触を感じる。
シーラの体が見た目よりも小さく感じた。
気を失っているように見えるけど、これで洗脳は解けたのか?
判断がつかない。
「野郎…………」
沸々と怒りが込み上げてくる。
ハボック龍将。
奴を殺すのが一番早いかもしれない。
例えこの国を敵に回したとしても、優先すべきはシーラの方だ。
だから奴が闇魔法を解かないと言うのであれば…………。
ドォォォオオオン!!!!
「何だ!?」
突如として地響きがした。
まだ近くはないが、遠くの方で何かが破壊されたような、そんな音だ。
「ヤシロ!!」
入り口を振り返ると、アイラがいた。
遅れて到着したみたいだ。
「その子も無事だったんだね」
「アイラ! シーラを頼む!」
「えっ? ちょっ、ヤシロはどこいくの!?」
「今の音の原因が何なのか確認する!」
続いて二発目、三発目と地鳴りのような音が響いてくる。
これは只事じゃない。
俺はシーラをアイラに任せ、そのまま入り口を飛び出して外へと出た。
ここからだと何も見えない。
「見るなら上からだ!」
俺は思い切り地面を蹴り飛ばして、宿舎の窓際に連続して足を掛けて飛び移り、上へと登っていった。
この宿舎も結構な高さがある。
門壁よりも高さのあるこの宿舎の上からなら、国の端が見渡せるはずだ。
俺は屋上まで登りきり、眼下に目を向けた。
爆煙。
真っ黒な煙が、俺達がこの国に入ってきた入門あたりから立ち込めていた。
そして続くように国のあちこちから爆発が起きている。
「な、何が起きてる……?」
突然、警鐘が鳴り響いた。
これは恐らく異常事態を知らせるための合図に違いない。
宿舎からも新世大隊のメンバーが飛び出してくるのが見えた。
空に流れ星のように光っているものが、いくつも飛んでいるのが見えた。
流れ星……にしては軌道がおかしい。
このままだと国の中心地にいくつも落ちるぞ。
魔法の攻撃のようにも見えない。
「前にも見たことがあるような気がする……。何で見たんだ?」
今回のこれはたぶん襲撃だ。
昨日、ドットさんがミラージュ王国の属国を『裏』が襲撃していると言っていた。
その繋がりで本国であるミラージュを攻撃してきたと考えてもおかしくはない。
それに魔王ベルファイア。
魔族にとって、人類側の三大国家と呼ばれているうちの一つ、軍事国家のミラージュ王国が滅びればアクエリア大陸は手中に収めたようなもの。
魔王が手を貸すことも頷ける。
魔王が手を貸すということは、魔人もいるはずだ。
「魔人…………? あっ!」
ソウグラス大陸のスサノ町!
最初に俺が中級魔人と戦って死にかけた場所!
確かあの時も中級魔人は空からやってきていた。
ならこの流れ星は恐らく……!
「魔人か!!」
流れ星は国の各地に墜落した。
その数、50以上はあるはずだ。
「くそ! アイラにも知らせないと!」
曲がりなりにも世界一の軍事国家を攻撃するということは、向こうは攻め落とすことができる算段があるということ。
攻撃されるまで何の情報もこの国に入ってこなかったのが証拠だ。
「個々の戦闘能力でも負けてるのに、そこに戦略と物量が加わったら勝てないぞ……! 勇者がいても魔王シルバースターに負けたんだからな」
続いて大きな爆発が起こった。
見ると、そこは見覚えのある地域。
「あそこは…………フェリスの家があるところじゃないか……?」
家にはアリスさんとオーリスがいるはず。
万が一が頭をよぎる。
「くそ!」
俺は宿舎の壁を垂直に走り落ちた。
最初にガルムが見せた技術。
今なら出来る。
「シーラとの戦闘で半分近く魔力が無くなったけど……お世話になったあの人達は助けたい!」
俺はまたしても最短距離で修練場へと戻っていった。




