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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
アクエリア大陸 ミラージュ王国編

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入隊審査 後編

「あの、私からも発言を良いですか?」


 俺は手を挙げ、二人の口論に割って入った。


「構いません」

「ハボック龍将の意見を端的に要約すると、アイラが魔族だから認めないということですよね」

「そうです。敵対している相手を仲間にするのはおかしな話でしょう?」

「では、新世大隊には魔族は今もいないと」

「もちろんです」


 その言葉が聞きたかった。

 ハボックの魔族排他主義を利用してやるんだ。


「それはおかしな話じゃないですか?」

「? 何もおかしくはありませんが」

「国滅ぼしの少女。彼女は魔者のように見えますが」

「…………何ですと?」

「ヤシロ君、それは一体どういうことだ?」


 ハボックが訝しげに、ドットが疑惑の表情で、フレニアルが片目を開けてこちらを見た。


「彼女の特徴が魔族と一致していると言ったんです」

「はっはっは。君は不思議な事を言いますね。魔族がどういう生き物か、そこのモノを見れば分かるでしょう」


 アイラをモノ呼ばわりするな。

 クソが。


「魔族は一目で人間と違うと分かる部分があります。それは獣の耳であったり、つのであったり、翼であったり。ウリエルのどこにその要素があるのですか?」

「私が見たときはフードと仮面を被っていたので、全容は見ていません」


 そんな事を言いたいわけじゃないけど、とりあえず不自然は追及する。

 ツノがあれば、フード一枚で誤魔化せる。

 アイラが帽子を被っているようにね。


 でもシーラにツノが無いことなんて分かってる。

 この発言の意図は、不審点を解明することじゃなく、俺がこの程度の論理武装しかしていないと思わせるため。


 恐らくこれはアッサリと返される。


「残念ながら、彼女が入隊する時にツノなどがあるような姿は見受けられなかった。もちろん仮面の下にもな。普通の少女だ。それは私もフレニアルも確認している」


 ドットが、そんなことかと言わんばかりの顔をしながら俺に言った。


 何であんたが論破しちゃうんだよ。


「そういうことです。それだけで魔族と疑われていたら、頭を隠している人はみんな魔族だと疑わなければなりませんよねぇ」


 ハボックが意地悪くほくそ笑んだ。

 昨日、立ち去る時と同じ表情だ。


「ハボック龍将……。あなた知っているのにわざと知らないフリをしていませんか?」

「何を?」


 俺が問い詰めるように言った。


「魔族の中にも、人間と同じような見た目をしている種族がいることに」


 一瞬、ハボックの眉がピクリと動いたが、表情は変わらず冷静だ。

 動揺を表さないのは流石だ。


「はて…………そんな種族がいるなど聞いたことがありませんが……」

「私も見たことがない。そんな魔族がいるのか?」

「魔族に対して排他的なアクエリア大陸では、あまり知られていないことかもしれません。魔族の奴隷を一般的に許容しているソウグラス大陸や、その種族が住むサンクリッド大陸では知っている人も多々います。その種族とは…………レッカ族」


 ハボックの表情は変わらない。


 考えようとする素振りもない。


 逆にそれが怪しさを際立たせている。


「レッカ族…………?」

「ええ。彼らにはツノや獣耳と言った、見た目でわかるような特徴はありません。強いて言えば、燃え盛るような真っ赤な髪と、炎魔法に長けていることが特徴ですね」

「真っ赤な髪と……炎魔法に長けている……。どちらもウリエルの特徴と当てはまるな」

「魔族の間でもレッカ族の事は有名です。ヤシロのでまかせじゃありません」


 アイラも続けるように言った。


 魔王の使徒としても仕えているという話を聞いたことがあるから、アイラの言葉も俺の援護とだけじゃなくて、本当のことなのだろう。


「国滅ぼしの少女はあまりにも、類似点が多いと思いませんか?」

「…………いえ、たまたまでしょう」

「でしたら彼女の仮面を取って見せて頂きたい。ドット龍将が見ているということは、外すことは可能のはずです。これほどの条件が揃っているのに、それが出来ないということは…………国滅ぼしの少女は、魔者である可能性が高いことになりますが?」


 ハボックが魔者ではない証拠を出すことができず、彼女の仮面の下を見せないというのであれば、国滅ぼしの少女は魔者ということになり、アイラが部隊に入ることの問題性は無くなる。

 それに魔者であるということは、シーラであることの可能性も高くなるということ。


 魔者であることを否定し仮面を取るというのであれば、彼女がシーラであるのかどうかを確認することができ、部隊に入るための意味は無くなるため、たとえ入隊を否決されても俺的には問題はない。


 王手飛車取りってところかな。


「ぐっ……! 彼女は…………魔者ではありません。しかし……仮面を取ることも……」

「もしも俺のようにレッカ族のことを知っている人がいたらと考えて、保険の意味でフードと仮面で顔を隠していたんですよね?」

「…………っ!」


 魔者が部隊に入ることを認めない。


 そう言った時点で、この流れになることは完成していた。


「……ウリエルは魔者なのか? ハボック」

「…………」

「あーあ、この状態からではもう言い返せませんね。貴方の負けですよハボック龍将」


 ハボックが沈黙している中、初めてフレニアルが話した。

 途中まで興味無さそうにしていたが、レッカ族の話が出てきたあたりから、面白そうに議論を見ていた。


「フレニアル……」

「あなたが話し合いで負かされるのは珍しいことです。こうなった以上、議論の結果は決しました」


 この人、もっと自由人みたいなイメージをしていたけど、しっかり話せるのな。


「面白い物が見れたお礼です。私はこの二人の入隊に賛成します」

「おお! フレニアルが賛成ということは、賛成が2人になったわけだな? 確定だな」


 多数決制だったのか。


 アイラも入隊することが確定したのは良かったけど、ハボックから答えをもらっていない。

 一番大事なのはその回答だ。


「ハボック龍将、どうなんですか?」

「…………いいでしょう。二人の入隊を許可します」

「それは、国滅ぼしの少女が魔者であることを認める、ということでよろしいですよね」

「………………」

「ヤシロ君とアイラ君の入隊は、書類の関係で正式には1週間後とする」

「出入りはどうなりますか?」

「可能だ。ハボック、貴方は親類と偽り、魔者を内密に部隊に入れていたことについて説明する義務がある」

「分かっています」

「では、これにて入隊審査は閉幕とする」


 俺とアイラは部屋から追い出された。

 ここから先は、星宝三龍将のみで会議を行うとのこと。


「やったなアイラ」

「あのお爺さんを言い負かすなんて、やるじゃないヤシロ」


 この前の仕返しは成功って感じかな。


 ハボックは沈黙していたが、国滅ぼしの少女が魔者であることは確定的だ。

 そして、それがシーラである可能性も高い。


 残る問題は、なぜシーラはアイラだけでなく俺も攻撃したのか。

 アイラは魔者だと判断して攻撃したとすれば分かる。

 だけど、俺の姿を見ても攻撃してきた理由が分からない。


 ハボックが言っていた言葉が引っかかる。


 〝例え彼女が貴方の知り合いであったとしても、彼女は貴方のことは知りませんよ〟


 あのジジイはまだ隠していることがあるな。


 でもこれで、新世大隊の宿舎に自由に出入り出来るようになった。

 後は確認するだけだ。

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