訪問
「どうにかするって言っても……どうするの?」
「まずは新世大隊に参加する」
「えっ!?」
アイラが驚くのも無理はない。
あれだけ入らないと言っていたんだ。
意見をコロコロと変えるのは本来、いいことじゃない。
信用されなくなるからね。
でも事情が変わった。
国滅ぼしの少女に近づくためには、これが一番の近道のはずだ。
「フェリスさん、もしくはドットさんに話をしに行こう」
「いいの? 軍隊に入ることになったら……」
「普通の軍隊とは別さ。加入すると言っても、何ヶ月も残ってなければいけない決まりなんてないはずだ。それに、もし国滅ぼしの少女がシーラなら、俺の目的はここにある」
「…………それもそうだね」
「だろ?」
俺は近くに落ちていた帽子を拾い、アイラに被せた。
「ヤシロ君…………その子は魔者だろ? なぜ一緒にいるんだ? 最初から私達を騙すつもりだったのか?」
バーティゴが明らかに不審な目をして聞いてきた。
「……本当の事を話したとして、貴方は彼女の事を許容してくれますか?」
「……それは難しい」
「でしょうね。それなら何を話しても無駄だと思います」
そう言って、俺とアイラは立ち去ろうとした。
彼は悪い人ではないだろうが、さすがに敵である魔族を前にしては〝良い人〟ではいられないだろう。
いちいち説明している時間もない。
改めて認識を正してもらう必要はない。
「彼女のことは許容……できないが、君の事は認めている! 君の事なら信用できる!」
アイラじゃなくて、俺を信用する、ね。
会って間もない人を信用するだなんて、想像以上に〝良い人〟のようだな。
「いつでも部隊に入ってくれる事を待っている!」
「では近いうちに」
「!! 本当か!?」
その問いには答えず、俺はその場を後にした。
※ ※ ※
「失礼。誰かいますか?」
俺はフェリスの家までやってきて、ドアをノックした。
しばらくするとガチャリとドアが開き、中からオーリスが出てきた。
「あれ? ヤシロさんだ。さっきアイラさんも来たよ」
「ここにいるよ」
「ホントだ、さっきぶり〜……ってどうしたんですか!? ところどころ赤くなってますよ!?」
「う〜んと、ちょっとね」
ちょっとどころか大層な戦闘行った後っぽいけど。
「とりあえず上がってください! おかーさーん!」
オーリスは母親を呼びに行った。
ちなみに彼女の母はアリス・グリゼルと前に自己紹介してもらった。
俺達はメイドの女性に案内してもらい、前に来た部屋で待機することとなった。
「やっぱり二人ともいないっぽいな」
「まだ日中だからね。立場的に忙しいんだよ」
などと話していると、オーリスとアリスさんがやって来た。
「ほらお母さん! アイラさんが怪我してるの!」
「あらあらホントね〜。大丈夫?」
「ちょっとヒリヒリするぐらいなので、大丈夫です」
「治療するわね。うごめけ、細胞よ活性化し、己の身を清め給え。再生治療」
「おお……治癒魔法」
アリスさんがアイラに触れながら詠唱すると、みるみる内に火傷痕が消えていった。
確か中級の治療魔法のはずだ。
最近マスター級の魔法使う人達とばかりいたから、雷魔法以外の詠唱聞いたの久しぶりだな。
「は〜い、これで綺麗になりました」
「ありがとうございます! アリスさん」
「い〜のよ。女の子なんですから、傷が残ってると可愛そうですものね」
アイラが嬉しそうにお礼を言った。
魔力さえあれば、大怪我をしてもすぐに治すことができるのって、すごいことだよね。
本来なら足の骨を折れば数ヶ月は松葉杖生活だけど、ここでは秒で治る。
こればっかりは科学では難しいよ。
「オーリス、フェリスさんやドットさんは城に?」
「うん。なんか朝に兵隊さんが来て何かを話したら、慌てて出ていきましたよ」
「何かあったのかしらねぇ……」
国に関する何かか……。
でも同じ三龍将のハボックがいたことからすると、既に終わった案件か、国外の出来事か。
まさか今日は帰ってこないということはないよな……。
「二人に何か用事ですか?」
「そうなんだ。急務というほとじゃないんだけど……」
「じゃあ帰ってくるまで待ってて下さいよ!」
「いやでも流石に昨日今日で悪いし……」
「そんなことないです! ねっ! お母さん?」
「そうね。ずっといてくれて構わないわよ?」
良い人達だなぁ。
お世話になりっぱなしだ。
何かで恩返ししなければならない。
「じゃあお言葉に甘えて……」
「やった! そしたらアイラさん、私と遊びましょー!」
「え? うん、いいよ!」
「あらあらオーリスったら、自分が遊んでもらいたかっただけじゃないかしら?」
「えへへへ」
小悪魔っぽい仕草が可愛いなおい。




