特別許可証
俺とアイラとフェリスは宿舎を離れた。
ドットには申し訳ないが、今回の入団のお話は縁がなかったということで断りを入れさせてもらった。
ドットはそのまま仕事に就くらしい。
本来は多忙な立場のようだが、わざわざ俺達のために時間を作ってくれていたみたいだ。
本当に申し訳ないと思う。
「すいませんでしたフェリスさん。せっかくお誘い頂いたのに……」
「いやいや、元から断る予定だったのをお父さんが無理矢理見学させたんでしょ? 気にすることないよ」
まぁ確かに。
ちょっといいなとは思ったけど、当初の目的を忘れるわけにはいかない。
俺にはやらなきゃならないことがあるんだ。
「でもヤシロ君達は、そもそも何をしにこの国に来たの?」
俺はフェリスさんに港町での出来事を話し、特別乗船許可証を貰うにはどうしたらいいか聞いてみた。
「それなら、国で許可証を発行している役所があるから、そっちに行ってみたらいいと思うよ」
そう言ってフェリスは紙に簡単な地図を描いてくれた。
ここからそう離れてはいない。
「フェリスさんは一緒じゃないんですか?」
アイラが聞いた。
「私もこの後色々と報告作業があるのよね……。ほら、ここまで来るのに色々あったし。軍属していると結構面倒くさいことが多いから、正直私もおススメはしてなかったりしてね」
そう言って意地悪くペロっと舌を出した。
「やっぱり討伐者としての方が気が楽ね」
「経験者は語る、ですね」
「そうねぇ。それじゃ、もし何かあったら家の方に直接来てね。出来ることなら手助けするから」
「「ありがとうございます」」
フェリスは手を振りながら軍の本部庁舎の方へと戻っていった。
とことん良い人だ。
惚れてしまいそうだよ。
「さて、それじゃあ役所の方に行ってみるか」
「そうだね」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「何でだよ!!」
役所に着いた俺達は、長時間待たされ、やっとのことで許可証を発行してもらおうとしたが、職員に発行することは出来ないと跳ね除けられてしまった。
「ここに来れば許可証が発行できると聞いたから、何ヶ月もかけて来たんだぞ」
「そう言われましてもね、状況を考えてくれとしか言えないんですよ。本来であれば魔者の渡航も許されていますが…………魔王との戦争が激化してる中、魔者を渡航させてくれなんて……」
「別にこっちの大陸に入れるわけじゃないじゃん。外に出るんだぜ?」
「入りも出も規制されてるんです。そもそも、なんでこの時期に魔者がこの国にいるんですか? 貴方は何者なんです?」
訝しがるように職員が見てきた。
確かにそれを追求されたら弱いが…………。
フェリスのおかげで、アイラは入国できたわけだし……。
「一応、A級の討伐者ではあります」
俺は討伐者IDを懐から出して職員に提示した。
討伐者はランクが上がるほど融通が利くという。
A級ならある程度の身分確認になるはずだ。
職員は俺のIDをじーっと確認した。
「本物……ですね。確かにA級討伐者の方のようです。しかし、この国で討伐者としての身分はそれほど効果のあるものではありません。我々は討伐ギルドに頼らなくとも、自国や属国を守る軍がありますので。この身分では魔者を国に入れられる理由には弱いと思いますが……」
ぐっ……。
これ以上食い下がると不審がられるか……。
ここで問題を起こすのは良くないな……。
「分かりました、失礼します。行こうアイラ」
俺とアイラは役所を後にした。
「ゴメンねヤシロ……。私のせいで色々迷惑かけて……」
「いや、アイラが謝ることじゃないさ」
申し訳なさそうに謝るアイラに、フォローするように言葉をかけた。
しかし、実際問題これは困ったことになったな。
はるばるこの国に来たってのに、まさか発行出来ないとは思わなかった。
少しぐらい融通利かせてくれりゃいいと思うのに、これだから役所の人間は頭がお堅いんだよ。
「どうするか……」
「またフェリスさんにお願いする?」
「すぐに頼るのもなんか悪いよな……。俺は向こうのお願いを断っておきながらさ」
確かに何かあれば助けてくれるとは言ってたけど……流石にあれもこれもお願いするのは気が引けるなぁ……。
「タイミングが悪かったってことだよね」
「そうだなぁ……。魔王と揉めてなければ普通は行けたってわけだ」
「じゃあ魔王を倒せば…………」
「冗談でもヤバいことは言わないでねアイラさん」
最悪の選択肢を初手から出すな。
魔王を倒すぐらいなら、こっそり乗船してった方がよっぽど楽だよ。
「ヤシロなら勝てると思うんだけどなぁ…………」
「お前は俺を勇者か何かと勘違いしてらっしゃる?」
単独で勝てるわけないだろいい加減にしろ。
俺だってその辺りはわきまえてるぞ。
「とにかく特別乗船許可証の件は、恥を忍んでフェリスさんにお願いするしかないのかね……」
「私のことだし、お願いする時は私からするよ」
「いや、俺ってアイラの保護者的立場だし、やっぱり俺が」
「ちょっと! いつからヤシロが私の保護者になったの!?」
「知らなかったのか? ……出会った時からだぜ」
「何それ! 私達は同列でしょ! 同じ立場でしょ!」
「つまりは男女の仲?」
「ちょっ……なんかやらしい! その言い方!」
アイラが水魔法で俺の顔面を濡らしてきた。
サッパリとしたところで、真面目に今後どうするか改めて考えるか。




