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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
閑話

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勇者と魔者

 今日は夜が綺麗だ。

 この大陸で最も高いこの塔から見れば、まるで手が届きそうな位置に星がある。


 眼下の街並みでは、夜になっても変わらず明かりが灯されており、人々が忙しなく動いている。

 本来、俺がこの場所にいること自体おかしな話だ。

 この国は俺の故郷の国を吹き飛ばした魔導兵器が置いてあるというのに、それを人間のために取り返しただなんて。


「はっ。そもそもアイツを待つ義理なんて俺にはねーのにな……」


 友人……とも違う。

 仲間とも言い難い。

 俺と奴の関係性、なんと言うべきか……。


 俺は人間と魔族の共生を実証するために。

 奴はシーラ・ライトナーの親を探し出すために。


 つまりは……協力関係か。

 お互いの利益のために一緒にいた、ということになるな。


 ヤシロミナト。

 この世界において犬猿し合っている、人間と魔族との共生を可能にするかもしれない男。


 数ヶ月前、ヤシロとシーラは俺の目の前で消し飛んだ。

 正確には強制転移させられた。

 この国に置いてある魔導兵器、物体転移魔導砲によって。

 転移先はこの世界のいずれか。

 知らない土地に放り出され、さらにそれが魔族領土であった場合、普通は死ぬか奴隷となる。

 だが、ヤシロは普通の人間とは違う。

 魔王グロスクロウとの直接戦闘において生き残った人間だ。


 奴なら生きていると、根拠のない自信が俺をこの地で待たせる。


 心配なのはシーラの奴だ。

 あいつは魔族だし、戦闘面においてもレッカ族というだけあって強力な炎魔法を扱うことができる。

 だが、性格面に難がある。

 人とのコミュニケーションをとるのが下手くそなんだ、アイツは。


 ヤシロは適応力が高いから大丈夫だろーが、シーラは見知らぬ土地で一人で生きていけないタイプだ。

 下手をすりゃ餓死とかもあり得る。

 こればっかりは、シーラにとって良い方向に転ぶ土地へ転移していると願うほかない。


「俺はここにいるぜ二人とも…………。早く来いよな」


 ボソリと呟くが、反応はない。

 当たり前だ。

 こんな所に人がいてたまるか。

 俺のように風魔法で空を飛ばなきゃこれない所だ。


「待っているのは、ヤシロミナト達のことかい?」


 …………お前が来るのか。

 確かにお前なら登ってこれるよな。


「盗み聞きとは趣味が悪いな、グリム」

「偶然さ。俺もここから見る景色が好きなんだ」


 そう言って俺の隣に座ったのは人類の希望、3代目勇者グリム。

 俺はこいつと共に魔王シルバースターを討伐した。

 グリムも俺達と同じ、物体転移魔導砲によって仲間を散り散りにさせられていた。


 運良くグリムはサンクリッド大陸内に転移したため、そのまますぐさま魔王シルバースター討伐の算段を計画し始めた。

 そして、ゼルビア王国にいた俺と接触し、参加者を集め、真っ向からシャッタード都市を取り返すことに成功したのだ。


「聞いたかい? アクエリア大陸では、同時期に魔王ローズフィリップと魔王ジェイドロードが討伐されたみたいだ」

「だな。これで魔王は残り9人になったわけだ」

「それももちろん喜ばしいことだが…………討伐した人については聞いているかい?」

「いや、知らねーな」

「2代目勇者だよ」


 んなアホな。

 魔者の俺でも知ってるぜ。

 2代目勇者は魔王リネンとの戦いで行方不明になったって話だ。

 それも18年も前にな。

 それが実は生きてましたってか?


「いくら騙されやすい俺でも、流石にそれは信じねーよ」

「真偽については何とも言えないが……既に2代目勇者が生きていたという情報は世界に発信されている。もし事実であるなら、風向きは人類側に吹いていると言えるだろうね」

「そりゃあ魔王が次々と討伐されていってるわけだからな」

「でも……良くない噂も聞いている。2代目勇者は『裏』と通じていると」


『裏』っつーのが何なのか、俺も良く知らねーが、人類に敵対する人類ってことぐれーは聞いている。


「魔王を討伐したのは2代目勇者なんだろ? だったら『裏』と通じていようがどうでもいーじゃねーか」

「『裏』の人間にマトモな奴はいない。これは俺の母国で言われていることだ。『裏』の人間が何をしているのか、所属人数などはほぼ不明だったが、今回の発表で多くの事が判明した」


 人間と魔族に続く第三勢力、というわけでもなさそうだな。

 どちらかと言えば魔族寄りの立場になるのか。


「中心メンバーとして名が挙げられているのが、2代目勇者はもとい、神剣流の開祖《剣聖》ツォルク、当代きっての刀鍛冶《刀匠》ガリレオ、転移魔術の使い手で裏稼業の暗殺屋《暗器猫》ネコ。いずれも一目置かれている人達だ」


 どいつも俺は知らんな。

 人間の世界じゃ有名な奴らなんだろう。


「そいつらが敵に回ったと?」

「一概にそうとは言えない。現に彼らが魔王ジェイドロードを討伐したわけだからね。これが杞憂ならいいんだが……ゼロは何か『裏』について知らないか?」

「さぁな。俺は何も知りはしねーよ。何なら固有スキルで俺の心でも読んでみたらどうだ?」


 カマをかけた。

 グリムは『勇者の証』のスキルによって、魔者の位置と心が読めるという。

 これは本人から直接教えてもらったことだ。


「やめてくれ。君の信頼を失いたくはないんだ」

「……そーだな。くだらねぇことを言ったよ。仲間…………早く見つかるといいな」

「お互いに、ね」


 そのまま俺達は、静寂を切り裂く闇夜の下で今後について意見交換を行った。

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