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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
アクエリア大陸 裏勢力編

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162/217

使徒

 俺達は既に城の外へと出ていた。

 このまま城内にいてもろくなことはない。

 早々に立ち去るのが吉だ。


「なんか……俺達がやったこと全部、あいつら魔族のためって気がして気分悪いですね」

「ガルムの考えている通りに事が進んでいるのは間違いないが、釈然としないのは同意見だ」

「そういえば、レインフォースさんの技のお陰でさっきは助かりました。あれが『空ノ神』ですよね?」


 空中に大量の刃を出現させる大技。

 見栄えだけなら俺よりよっぽどカッコいい。

 インスタ映えするよきっと。


「あそこで敵が引いてくれたのは、正直助かった」

「何でです?」

「あんなに密集してたら、敵味方関係なく切り刻んでたからな。2段階目はコントロール出来るんだが……」

「切り刻むよりも先があるんですか?」

「まぁな」

「僕は見たけど、反則じみてたよ……」


 見てみたい気もする……。

 今後、どこかの場面で見してもらえるタイミングがあるのかな。


「ミーアさん」

「何かしら?」


 後ろの方でアイラが《魔女》に話しかけていた。

 しれっと聞き耳を立てる俺。


「《暗器猫》って人…………私がケンカした相手ですよね?」

「そうね、ボコボコにされた」

「うっ…………」


 うん、ボコボコにされてた。


「その人や、刀鍛冶の人が死んだのに……皆さんはそれほどショックは受けてないんですね」


 ショックか。

 《潜入者》から聞いた時、確かにみんなは驚きの表情をしていた。

 でもその後は、ガルムの意図を予想するのに話が逸れて、ショックを受けている様子はあまりなかった。


「思う所は……確かにあるわ。ネコともガリレオとも、半年以上一緒にいたもの」

「でもその割には……」

「私達【怪童】のメンバーは、仲間ではないわ。それぞれがそれぞれの目的を達成するために、徒党を組んでいるのに過ぎない。だから誰かが死ねば悲しさはあるけれど、それで悲壮感に打ちひしがれることはないわ」


 その言葉にアイラは押し黙ってしまった。

【怪童】は利害の一致から手を組んでいて、俺とアイラのような関係性ではない。

 今はこうして仲良くやっている皆が、一つ目的が違えば今すぐに敵になってもおかしくはないと、《魔女》はそう言いたいのだろう。


「でも、私にだって大切なものだってあるのよ。それはアヤメだったり、貴方もそうよ、アイラ」

「え!」

「貴方は私の大事な教え子だもの、死んだりしたら悲しいわ」

「…………師匠!」


 良い師弟愛だなぁ。

 どっかのクソ勇者との師弟関係とは偉い違いだ。

 俺を死地に追い込んではヘラヘラしてそうな奴だからな。


 その噂のあいつは、何をしようとしているのか俺には知る由もない。

 魔王側にくみしていると思えば、その魔王を討伐した。

 そして新たな魔王に恩を売った。


 ええい、考えても分からん。

 できれば今後はガルムに関わるのは避けたい。

 手助けするのは今回限りだ。


「サンクリッド大陸へ帰るぞ……!」


 航路へ目指して、俺は歩き出した。




 ーーーーーーーーーーーーーーー




「《潜入者》から連絡が来ました。それにしても、まさか本当に手助け無しだとは思いませんでしたよ」


 左目に《II》の刻印がある青年が、椅子に仰々しく座る男に愚痴を言っていた。

 彼こそが、今回の一連の出来事の主犯格であり、人類における元勇者、ガルムであった。


「不戦の誓いがあると先に言っておいただろう。我々はお互いの関係に関わることはない」

「せっかく僕が集めた私兵が、2人も死んでしまった。こう見えてもショックは受けているんですよ」

「刀剣の鍛治師と転移魔法の使い手か。能力で見れば、確かに貴重だな」


 口ではそう言っておきながらも、男はさして興味を抱いてはいなかった。

 何人人間が死のうとも俺には関係ない、そう言っているようであった。


「だが、ジェイドロードだけでなく、ローズフィリップも同時に殺すとは、お前の私兵とやらは相当な精鋭のようだな?」

「確かに僕が掻き集めた人達は優秀だ。でも、それだけで2人の魔王を同時攻略しようだなんて、普通は思いませんよ」

「何か、嬉しい誤算でもあったか?」


 その言葉に、ガルムはニヤリと笑った。


「貴方の計画の一部、異世界からの召喚者がアクエリア大陸にいたんですよ」

「ほう、ヴィルモールが作った武器を持った奴か」

「ええ。しかも、僕が思っていたよりもずっと成長していた。彼がいたからこそ、今回の作戦は成功したんです」


 ガルムが嬉しそうに話す。

 それは冗談や嘘で造られたものではなく、本心から思っていたものだった。

 だが、男の反応に左程変化はない。

 ほう、とつまらなさそうに一言呟いただけであった。


 その態度に少しムッとするが、ガルム自身もこの男がそういう性格であることを知っているが故、何も口にはしない。

 この男が興味あること、それはただ一つだけであり、そして単純明解。

 魔王が考えることと言えばただ一つ。


「世界を我が物に。お前には使徒としてまだまだ働いてもらうぞ、ガルム」

「仰せのままに……魔王ベルファイア様」


 ガルムはその場を後にした。

 再び暗躍せんとするために。

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