第6師武
魔族の数はざっと見て50人ほど。
それに対してこちらは8人。
数こそ絶対の暴力だ。
しかも敵はただの有象無象ではなく、練度の高い兵隊。
対応は出来ても、下手な真似はできないか。
「聞いていた話と随分違いますが? 我々は対等な存在ではないのでしょうか?」
《潜入者》が魔族のリーダーらしき男に聞いた。
一見して歳を食っていそうな男は、メタルチックな材質に包まれた鎧を身に纏っており、口元の部分しか顔は見えない。
「魔族と人間が対等だと? 貴様らは我々に生を懇願する立場だと言うことを分かっていないようだな」
「《空ノ神》」
突如、空中に無数の薄透明な刃が出現した。
もしかして、これが《空ノ神》の対多人数劔魔法か?
「少しでも動いてみろ。その瞬間、お前らの身体は切り刻まれる」
「ほう……これが噂の……人間界のお伽話に出てくる四神の技の一つか」
やっぱり、ローズフィリップのスキル内で見れなかった技か。
でもこれだけじゃ敵の動きを封じるのには弱い気がするけど……避雷神に並ぶほどの反則技だろうし、ここからまだ何かあったり?
「これで俺達が対等な存在だと理解してもらえるか?」
「…………いいだろう。貴様らに対する認識は改めてやる。剣を納めさせるが、いいな?」
「刃に触れなければな」
魔族達がゆっくりと剣を懐にしまった。
それに合わせて《空ノ神》も技を解いた。
「何となく察しはついているが……あえて聞こう。あんたらは何者だ?」
「魔王ベルファイア様に仕える〝青銅隊〟だ。派遣部隊としてこの地に来た」
この魔法陣は『裏』の人間が住むアンダーグラウンドへと通じている。
魔王ジェイドロードが支配していた領地を、魔王ベルファイアの軍が統治を始めたのだろう。
そして、《潜入者》がこちらへ来たことにより、魔王ローズフィリップが討伐されたと察知し、魔法陣を抜けてこちらの領地も制圧しに来たと。
準備がいいというか何というか、行動がいくらなんでも早すぎる。
「アイラ、〝青銅隊〟って言うのは知ってるか?」
俺が小声で聞いた。
「うん……。魔王ベルファイアには役割が分かれた部隊が10隊あるんだよ。私が知ってるのは、魔王を警護する〝白金隊〟、全ての領土内に駐屯されている〝黒藍隊〟、自国の法を犯し逃走したものを処罰する〝屍鬼隊〟、後はあの人達、遠征を主とする〝青銅隊〟だよ」
「他の6つは?」
「他は分からない。そもそも支配している大陸が違うし、私達には関係ないことだと思ってたから」
それもそうか。
逆に大陸が違うのに名前が知られているということは、それだけ力があるということだ。
青い鎧を着た奴ら一人一人が、グロスクロウの配下と同じ実力があるとするなら、人類側で例えるならA級、もしくはS級討伐者クラスの実力があることになる。
それが徒党を組んで統率された動きをする。
これほど厄介なものはないだろう。
そんな部隊をまとめているのが、あのメタルっぽい鎧を着た奴ということか。
「一応俺がこのパーティの代表になる。グリードリー・レインフォースだ」
「ふん、元勇者の代役ということか。俺は第6師武のガゼット・デロング」
一応2人は握手をした。
どうやら戦いになることはならないらしい。
助かる。
「アイラ、第6支部ってことは、青銅隊とやらが10の部隊で6番目ってことになるのかな?」
「多分、ヤシロが考えてるシブとは違うと思うよ」
「というと?」
「師武っていうのは、魔王ベルファイアの国では個人に与えられる武勲称号みたいなものだから、10人の師武がいて、その人達が10の部隊を状況によって指揮するってシステムらしいの」
「ってことは…………第6師武っていうのは、奴らの国で6番目に強い、もしくは偉い奴になるってことか?」
「そうね。魔王ベルファイアは実力主義者だから、6番目に強いっていう可能性の方が高いんじゃないかな」
言うなれば、人間にも世界の中心国家があるように、魔王の世界での中心国家がこいつらか。
今までの魔王達よりも、最も国家運営と軍隊増強、領土拡大に力を入れているのが魔王ベルファイア。
こういうことだと見た。
「これより先は俺達が指揮を執る。貴様らは邪魔にならないようにしていろ」
「そうか。確かに俺達の仕事は終わったからな、これ以上何かをする必要もない」
「ふん…………。城内を全て散策しろ! 黒藍隊が来るまでに全て片付けるのが先決だ!」
その後、魔族達はガゼットと呼ばれる魔者の指揮により、着々と作業を始めた。
遠征部隊と呼ばれているだけあり、それぞれの行動に無駄がない。
各々が何をすればいいのか分かっている感じだ。
「ぼ、僕達はどうすればいいんだい?」
「魔法陣を通って一度戻るのもアリだが…………そうすると、奴らはここを今後使わせてはくれなさそうだからな」
「何の不都合があるんだ?」
「《避雷神》とアイラが、航路へ向かえなくなる」
あ、そうか。
戦いに必死すぎて忘れてたけど、元々は俺は航路を目指すためにここに来たんじゃないか。
そんなことを覚えてるなんて、さすがレインフォースさん。
頼りになるぅ!
「ここから航路までも、また遠いわよね」
「それでも振り出しからスタートするよりかは、遥かに楽だろう」
「別に俺は2人だけで大丈夫ですよ。アイラと航路を目指すので、皆さんは戻ってください」
「そういうわけに行くかよ。今回、1番活躍したのはお前だ。英雄を寂しく帰すわけにもいかんだろ」
「英雄って…………」
いくらなんでもそりゃ言い過ぎだ。
今回、俺は最後の美味しい部分しか戦ってないんだ。
それで英雄呼ばわりなんてされたらむず痒くてしょうがない。
「結局どうするつもりだ? アタシはここにいる奴らと一戦交えるのもアリだと思っているが……」
「ちょっと《拳闘獅子》は黙ってて」
結局、エルモアを含めた全員が航路までへの道のりについて来てくれることになった。
申し訳なさ半分、嬉しさ半分だ。




