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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
アクエリア大陸 裏勢力編

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魔王ローズフィリップ9

 正面に立っている、白色のローブを身にまとっているのが恐らく魔王か。

 やはり夢の中とは見た目も格好も違う。

 手に持っているのはムチか?


「《避雷神》……!」


 《魔女》が安心したようにこちらを見る。

 俺1人で戦況がそこまで変わるとも思えないけど……頼りにしてくれてるなら期待に応えたい。


 エルモアは……良かったこっち側か。

 夢の世界とはやはり別物だ。

 でも動ける状態じゃなさそうだな。


「男…………! 私の魅了魔法にかからないということは……既に【妖艶なる女王ファンタスティックドール】に一度掛かっているのね?」

「その言い方だと、同じ奴に二度は使えないスキルのようだな」


 予測確定。

 一度攻略できれば、魔王ローズフィリップのスキルは恐るるに足らず、だな。


「女王、あの男は私が始末します故、ご安心下さい」


 《拳闘獅子》を片足で踏みつけながら、騎士のような格好をした女が剣をこちらへ向けてくる。

 アレが使徒か。


 《拳闘獅子》の顔が悔しさで歪んでいる。


「ぐうう……!」

「貴様のトドメはその後だ。そこで無様に転がっているがいい」

「悪いが、お前の相手は俺じゃない」


 伏兵がいるとも限らない。

 まずは数的不利な状況を無くす。


 俺は腰のポーチからビー球をいくつか取り出す。

 赤色から一つ、黄色が二つ、青色が適当にいくつかだ。

 それを地面に叩きつけた。


「来い、魔人共」


 上級魔人、中級魔人、下級魔人の3種を召喚した。

 ここにくるまで魔人は全く使っていない。

 ストックは大量にあった。


 なにより、『獅子脅し』の強化メモリを手に入れたことにより、それぞれの使役時間が伸びている。

 最初の頃は、上級魔人は1分程度しか使役できなかったが、今ではさらに長く存在することができるようになっているはずだ。


「なっ……! 魔人は魔王様にしか扱えないはず……! 貴様は一体ーーーーーー」

「その穢らわしいモンスターを…………私の前に見せるなああああああ!!!」


 使徒の動揺を遮るように、魔王ローズフィリップが咆哮を上げた。

 先程までの、気品溢れる姿は完全に喪失された。


 同時に、魔王が右手を振り下ろした瞬間、下級魔人が弾けて消えた。

 恐らくは持っていたムチで攻撃してきたんだ。

 全く見えなかった。


「指示する! 下級、上級は使徒を狙え! 中級は俺と来い!」

「「「グオオオアアアア!!」」」


 魔人共が魔王に負けじと咆哮をあげた。

 俺は機銃掃射マシンガンを構え、連射した。

 魔王がムチを振り、それを防ごうとする。

 だが、ムチの間を抜けて弾が魔王へと届く。

 連射数は伊達じゃない。


 なおも魔力を続けて流し込み、撃ち続ける。

 物凄い勢いで魔力が吸い取られていくが、構いやしない。

 ここに来るまで一度も戦ってはいないんだ。

 敵に反撃の隙は与えない。


 1発1発の威力は低いが、確実に魔王にダメージ蓄積させていく。

 中級魔人も左右から魔王へと向かっていった。


「す……すごい……! 魔王を完全に押しているわね……!」

「ミーアさん! 隙を見てリーさんの回収をお願いします!」

「ええ、分かったわ」


 使徒は既に上級魔人と戦闘を始めている。

 俺でも倒すのに手こずる上級魔人だ。

 そう簡単にはやられはしないだろう。


「くっ! 女王! 私の邪魔をするな魔人共!」

「グルオオオアアアア!!」


 使徒を抑えてくれているだけでも充分な働きだ。

 魔王に集中することができる。


「ぐ……不潔な男がぁ……!!」


 攻撃が徐々に防がれ始めた。

 慣れ始めたのか。

 しかし、魔王が片膝をついた。

 仕掛けるなら今だ!


武器変換ウェポンチェンジ一点集中型散弾銃ショットガンモード!」


 バチバチと銃が発光し、形を変えた。

 その瞬間、中級魔人達が魔王へと長剣で斬りかかった。

 隙を与えない攻撃。

 これで決まれば良し、決まらずとも次の一手で仕留める。


「あら……これで勝ったと思ってしまってはダメよ」


 突然、魔王が悠長な笑みを浮かべて立ち上がった。

 怒りに顔を歪めていた時とは真反対、その切り替えに俺は動揺した。


 ギシッ!!


 中級魔人達が魔王の手前で動きを止めた。

 動きを止めたというよりも、何かに引っかかっているような動きだ。


「これは…………! ムチの軌道上に何かが残っているのか……!」

「ご名答。やりますのね。ただの一瞬で状況を理解できてしまうなんて」


 魔王が俺の攻撃を防ぐためにムチを振り回していたほんとうの理由。

 何かしらの魔法によって、ムチが通った軌道に透明な障壁のようなものが創られているんだ。

 途中から機銃掃射の通りが悪くなったのも、魔王がムチで防いでいたわけではなく、魔法によって創られた障壁によって防がれていたのか。


「さて…………気色の悪いモンスターは退治させて頂きますわね」


 バチバチィン! と2発大きな音が鳴ると同時に、中級魔人の上半身が弾け飛び、霧散した。

 耐久力に定評のある魔人でも、一撃で粉々になる威力。

 例え、ガルムの力の恩恵を受けている俺の体でも、1発でも喰らえば死は免れない。


「どうされます? まだ私と戦うおつもり?」

「……当たり前だろ。魔王を前にして逃げられないさ」

「私を魔王と呼ぶなああああああ!!」


 突然として今度はブチギレ始めた。

 一体この感情の起伏はなんなんだ?


「この雄ブタめがああああ!! 私は女王だあああ!!」


 右手がブレた。

 瞬間、『避雷神』を発動させる。

 左横の地面が抉れた。

 やはり攻撃が速すぎて見えない。

 常に『避雷神』を発動させていなければ、かわすことはできなさそうだ。


 しかし、『避雷神』も燃費が悪い。

 いくら魔力が膨大にあると言っても、無限じゃない。

 いつか終わりが来る。

 それまでに奴を倒さなければ。

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