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英雄の異世界戦記〜敵を使役する異端な存在〜  作者: もぐのすけ
アクエリア大陸 裏勢力編

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魔王ローズフィリップ6

 これは夢だ。


 そう確信したのは、《空ノ神》の動きが不可解だったからだ。

 俺は《拳闘獅子》や《骨喰い》の戦い方は過去に見ているから、実際に目の前でその通りの戦い方を彼らはしている。

 だが、《空ノ神》は使うべき技を使用しようとはしない。


 対多人数用劔魔法。


 話を聞いている程度だが、使う場面があるとするならば、今以外にあり得ないだろう。

 だが、全く使おうとはしない。


 戦闘の最中さなか、「使わないんですか?」と聞いても、「ああ」と返答し、はぐらかすだけで使おうとはしない。


 そもそも最初から嘘をついていて使うことができない、という可能性も万が一に考えてはみたが、そんな奴をガルムが信用するわけがない。

 劔魔法を使うことが出来るのは間違いないだろう。


 じゃあ使えない理由は?


 一つは、魔力を全て使うため、今後の戦闘を考えて温存している。


 だが、魔王がいるこの状況以上の戦闘が、今後あるとは思えない。

 もし温存しているなら、それは愚策だ。


 二つ目に、仲間もろとも巻き添えにしてしまう魔法だから。


 どちらかといえば、可能性としてはこれの方が高いとは思う。

 でも、話を聞いた限りでは仲間を巻き込むような技ではないみたいだし、もし巻き込むような魔法なら《空ノ神》自ら説明するだろう。

 故にこれも薄いと考える。


 次に三つ目、既に魔王によって俺は眠らされていて、この世界は夢の中である可能性。


 本命。

 そう思うに足りる根拠は、やはり《空ノ神》の劔魔法である。


 ここまで《拳闘獅子》も《魔女》もアイラも、俺が見たことがある攻撃しか用いていない。

 《拳闘獅子》は言わずもがな拳で、《魔女》はアンダーグラウンドで特訓しているところを見た魔法のみ、アイラは…………いつも通りだ。


 つまり、俺が知らない攻撃は誰も行なっていないのだ。

 もちろん、俺は《空ノ神》の劔魔法を見たことがない。


 もし、この世界が夢の中だとして、俺の頭にある知識だけが反映されるとするならば、《拳闘獅子》や《魔女》が俺の知らない攻撃を行わないことも、《空ノ神》が対多人数用劔魔法を使わないことにも合点がいく。


 そしてさらに。

 魔王ローズフィリップが、俺達を目の前にしても魅了魔法を使わないのは一体どういうことか。

 それはつまり、俺が既に魔王のスキル【妖艶なる女王ファンタスティックドール】にかけられているために、魅了魔法が意味を成さないからにほかならない。


 これが夢の中だと考えた方が、辻褄が合うんだ。


 だとすれば、夢から覚めるには方法は一つ。

 この世界の間違いを探し、見つけ出すこと。


 魔王の姿や、《空ノ神》が魔法を使わない理由は、間違いには該当しないはずだ。

 そもそも正解を知らない以上、間違いかどうかも分からない。


 明確に、これが間違いだと判断できるもの。

 それをこの中から探し出さなければならない。


 以前として戦いは続いている。


 《拳闘獅子》が魔王と戦っており、迫りくる魔者達を他のメンバーが退けている。

 俺は戦いながらも、不審点を探るべく、周囲を観察する。

 実のところ、それとなく目星はついているが、間違いであった場合のことを考えておく。


 《骨喰い》は依然として、のらりくらりと敵を刺し殺している。

 特におかしな点はない。


 《拳闘獅子》は魔王と互角に渡り合っている。

 魔王と一対一で互角というのも不自然ではあるが、ローズフィリップの実力が俺には分からない以上、確実に間違いだとは言い切れない。


 《空ノ神》も技を使わない以外に、おかしな点はない。


 《魔女》もアイラも同じだ。


 そうするとやはり、初めから目星をつけていたものに限られる。

 これがもし違うとなれば、色々な意味でショックだ。

 個人的にも間違いであって欲しいと願っている。


武器変換ウェポンチェンジ、モデル機銃掃射マシンガン


 バチバチと銀色の銃が発光し、形を機銃掃射マシンガンへと変えた。

 即座に魔力を送り込み、引き金を引いた。

 まるで蛇口を思い切りひねったように、勢いよく魔弾が銃口から連続で飛び出した。


 銃口を横に薙ぐだけで、魔者が穴だらけになっていく。

 もちろん仲間には当たらないようにだ。


「何だそれは! まだそんな魔法を隠していたのか《避雷神》!」


 《空ノ神》が驚きの声をあげた。


 俺はある人物の前で銃口を止める。

 この世界で間違っているのは……お前だ。


「くっ……魔王様のためにも……私は負けない!」


 矢を強く引き絞っている魔者、エルモア・エルロンドが叫んだ。

 彼女が間違いであると感じたのは、半分は魅了魔法についてだ。

 調査の回答では、魔王の魅了魔法は女には効かないという話だ。

 もしもこれが今の状況のようにガセネタであったなら、そもそもこの作戦自体成り立たなくなる。


 ガルムはちゃらんぽらんだけど、俺達を裏切るような、死地に向かわせるようなことにさせないはずだ。

 もし、エルモアのみだけから、全ての情報を受けていなければの話だが。


 そして、もう半分は間違いであって欲しいという、希望的観測だ。

 焚き火を囲んで話していた彼女から、俺達を裏切るような真似なんてしないで欲しいという、ただの願望。


 もしもこれで夢から覚めなければ、彼女は本当に魔王の手に落ちており、俺はこの世界から抜け出すあてを無くすことになる。

 だけど、それは同時に敵を倒すことになり、ショックは受けるがマイナスにはならない。

 非情な考え方だと思うけど、俺は彼女を信じる。

 彼女がこの世界における間違いであると。


「エルモアは俺達を裏切ってなんかいない。お前が間違いだ」

「死になさい!」


 エルモアが矢を放つ。

 勢いよく飛んできた矢は『避雷神』によって弾かれた。

 同時に引き金を引き、エルモアは蜂の巣となって散った。


 その瞬間、世界が暗転した。

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