自覚2 ˜”*°• 神楽 蓮 side•°*”˜
――翌日 放課後
今日は、久しぶりに生徒会の会議があるらしい。
ということで俺は、生徒会室に向かっている。
……のだが。
「今日は本当に集中できなかった……」
俺はそう呟き、廊下の窓際にしゃがみ込んだ。
本当に、今日の自分は変だ。
自分で自覚するぐらい。
授業中、ふとした瞬間に柚葉の笑顔を思い出してしまう。
休み時間に姿を見かければ、気づけば目で追っているし、目が合えば嬉しくなる。
反対に、目が合わなければ胸が苦しくなる。
挙げ句の果てには、柚葉がほかの男子生徒に笑いかけているだけで、なぜか苛立ってしまう。
……いや、待て。
なんで俺は、柚葉が誰と話しているかなんて気にしているんだ?
別に、誰と話そうが柚葉の自由だろう。
柚葉が笑っていると、嬉しい。
けれど、その笑顔が自分以外の誰かに向けられていると、どうしようもなく落ち着かない。
……俺は、柚葉にとって特別な存在になりたいのだろうか。
「……分からない」
俺は顔を覆った。
昨日から、ずっとこんな調子だ。
柚葉のことを考えて、考えて。
それでも、答えは出ない。
俺は深く息を吐くと、顔を上げた。
すると、壁にかけられた時計が目に入った。
あと5分で会議が始まってしまう。
「まずい、行かないと」
悶々とする心を無視して、立ち上がる。
俺は、生徒会室に向かって走り出した。
生徒会室に入ると、柚葉はいつも座っている席で書類整理をしていた。
近づくと、柚葉はパッと顔を上げて、微笑んだ。
「お疲れ、蓮くん」
う……。可愛い。
いや、そうじゃなくて!
「あ、ああ。柚葉もお疲れ様」
高鳴る心臓をなんとか抑えながら、そう言う。
少し不自然だったのか、柚葉はこてんと首を傾げた。
そんな顔をされると、調子が狂う。
……いや、だから、なんで俺はこんなことばかり考えているんだ。
柚葉は俺の顔をじっと見たあと、心配そうに尋ねた。
「蓮くん、顔赤いよ? どうしたの? 熱?」
そう言いながら、柚葉は俺に近づき、手を伸ばしてきた。
近い。近いです。
さすがにそろそろ心臓が壊れそうだ。
俺は、伸びてきた柚葉の白い手を掴む。
「大丈夫。元気だから」
そう言って、俺は柚葉の手を離した。
危なかった。
あと少し近づかれていたら、まともに顔も見られなかったかもしれない。
「本当に? 無理してない?」
俺が大丈夫だと言っても、柚葉は不安そうな表情を崩さなかった。
ああ、もう。
どうして、こいつはこんなにも人のことを心配するんだ。
「本当に大丈夫だって。ほら、会議が始まるぞ」
「そう? なら、いいんだけど」
柚葉は自分の席へ戻っていった。途中で何度かこちらを振り返るあたり、まだ心配しているらしい。
もう、本当に……。
その背中を見送りながら、俺は小さく息を吐いた。
少しして、生徒会メンバーが集まり、会議が始まった。
会議の司会は、生徒会長である柚葉と俺が交代でしている。
ということで今日の司会は柚葉だ。
「それじゃあ会議を始めます。今日の議題は、『演習場の使用規則の見直し』です」
柚葉は手元の資料を確認しながら、続けた。
「この前の学年別対抗戦で妖魔が現れた事件があったでしょう? あれを受けて、演習場の安全管理についても見直した方がいいんじゃないか、という話になったみたい」
「なるほどな。確かに、今までの規則で十分なのか、一度確認する必要はありそうだ」
俺の意見に、ほかの生徒会メンバーも同意した。
柚葉は全員の反応を確かめると、次の話題へ移った。
「まず、演習場を使う前の点検について。設備や術式に異常がないか、事前に確認する仕組みを作るのはどうでしょう?」
「賛成だ。ただ、術式の異常は見た目だけでは分からない場合もある。点検項目を決めて、担当教員にも確認してもらう方がいいと思う」
俺がそう答えると、柚葉は「なるほど」と言い、真剣な表情で資料に書き込んだ。
……いけない、思わず見つめてしまった。
今は会議に集中しろ。
俺は雑念を振り払い、黒板を見つめる。
「それから、霊具の使用についても見直したいです。演習場に持ち込むものは、事前に届け出るようにするのはどうでしょうか?」
「それも必要だな。用途や術式が確認できないものは、教員の許可が出るまで使用を控えるべきだろう」
水瀬も賛成し、烏丸と水野からも同意の声が上がった。
そんなこんなで話し合いは順調に進んでいった。
「では、最後に。演習中に異常を発見した場合は、すぐに演習を中止して、担当教員に報告すること。この点も規則に加える、ということでいいですか?」
柚葉が全員を見渡す。
反対意見は出なかった。
「分かりました。今日出た意見をまとめて、規則の改定案を作成することにします。みんな、ありがとう。それでは、今日の会議はここまでです」
柚葉の言葉を合図に、会議室の空気が少し和らいだ。
俺も資料をまとめながら、小さく息を吐く。
会議中くらい、余計なことを考えずに済むと思ったんだけどな。
「蓮くん、さっきはありがとう。意見を出してくれて助かったよ」
資料を片づけていると、柚葉が隣にやってきた。
「ああ、別に。俺が思ったことを言っただけだ」
「それでも、ありがとう!」
柚葉はそう言って、にこりと笑った。
やっぱり、可愛い。
俺は思わず柚葉から視線を逸らした。
「白石さん、ちょっといい?」
不意に、烏丸が柚葉に声をかけた。
「うん、どうしたの?」
柚葉はそちらを向き、柔らかく微笑んだ。
その姿を見た瞬間、胸の奥がちくりと痛んだ。
まただ。
今日だけじゃない。
昨日も、その前も。
柚葉の姿を見つけると安心する。
話せば嬉しいし、もっと知りたいと思う。
困っているなら、力になりたい。
そうした気持ちが、ただの友人に向けるものなのか。
俺は、もう一度柚葉を見た。
……案外答えは、ずっと前から出ていたのかもしれないな。
俺は、柚葉が好きなんだ。
そう認めた途端、胸の奥がじんわりと熱くなった。
今まで分からなかった気持ちに、ようやく名前がついた。
……これが、恋なんだ。
俺は小さく息を吐き、柚葉の姿を見つめた。
不思議と、少しだけ心が軽くなった気がした。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
最近、音楽を聴いていると、気づけば同じ曲ばかりリピートしていることがあります。
一度ハマると、しばらくその曲から抜け出せないんですよね。
皆さんにも、何度も聴きたくなるお気に入りの曲はありますか?
それでは、また次回♪( ´▽`)




