自覚 ˜”*°• 神楽 蓮 side•°*”˜
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俺は、寮への廊下を歩きながら、柚葉とのことを思い返していた。
入学試験の成績優秀者一覧で、三点差で二位だった「白石柚葉」。
最初は、少し興味があるな、というだけの相手だった。
けれど、図書館で初めて言葉を交わしたことも、脚立から落ちそうになった彼女をとっさに受け止めたことも、今ではよく覚えている。
中間テストの実技試験の日も、そうだった。
順番を待つ列の中で、沈んでいた俺のもとへ柚葉が来てくれた。
あの時、彼女がかけてくれた言葉と、その温かさは、今でも忘れられない。
先の見えない暗闇のようだった俺の心に、彼女が光を灯してくれたような気がした。
……思えば、あの頃からだったのかもしれないな。
柚葉のことが、少しずつ気になり始めたのは。
図書館で互いの過去を打ち明けた時も、そうだった。
自分の過去を話した彼女は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
その後、柚葉は「あっ、もちろんもう接してくれなくてもいい、から」と苦しそうに笑った。
俺はその時、どうしようもない怒りを感じた。
柚葉を襲った妖魔に。
そして、命を助けてもらったにもかかわらず、彼女から離れていった友達に。
もちろん、その子にも事情があったのかもしれない。けれど、柚葉がどれほど傷ついたのかを思うと、簡単には割り切れなかった。
それなのに、目の前の柚葉は、自分が悪いとでも言うように、無理に笑おうとしている。
……どうして、お前がそんな顔をしなきゃいけないんだ。
「もう接しない」なんて、言うわけない。
あの時、俺はそう伝えた。
その時、彼女が泣いて、それから笑ってくれたこと。
あの笑顔を見た時の安堵は、今も胸に残っている。
あの時は、ただ放っておけなかった。
そう思っていたはずなのに。
そして、彼女を「白石」ではなく、「柚葉」と呼びたいと思った。
あの時は、どうしてそう思ったのか、自分でも分からなかった。
ただ、もっと彼女の近くにいたい。
そんな気持ちだけが、心のどこかに残っていた。
長期休暇中に柚葉の家に泊まらせてもらった。
そこで俺は、彼女の妖力が暴走すること、そして、それが彼女の身体に大きな負担をかけていることを知った。
普段はあんなにも気丈に振る舞っているのに、彼女はずっと、そんなものを一人で抱えていたのだ。
……もっと、力になりたい。
そう思ったことを、今でも覚えている。
その後、生徒会の仕事を一緒にするようになり、柚葉と過ごす時間は以前よりもずっと増えた。
仕事の話をしたり、何気ない会話を交わしたり。
そんな日々を送るうちに、俺はいつの間にか、柚葉の姿を目で追うようになっていた。
別に、何か用があるわけでもない。
ただ、気づけば彼女を探している。
姿を見つければ、なんとなく安心する。
何気ない会話を交わしただけなのに、あとになって、その時のことを思い出してしまう。
彼女のことを考えると、なぜか胸がギュッとする。
……なんだ、これ。
俺は足を止めた。
この感情は、もしかして――。
「……恋、なのか?」
口にしてみても、まだ実感は湧かなかった。
いや、待て。
恋って、あの恋か?
誰かを好きになる、という。
いやいや、まさか、な。
この、俺が?
自分で考えておきながら、なんだか落ち着かなくなってきた。
そもそも、俺は柚葉のことをまだ知らないことだらけだ。
だからこそ、もっと知りたいと思うのだろうか。
そんなことを考えながら再び歩き出すと、廊下の先に見慣れた姿が見えた。
柚葉だ。
友達と話しているらしく、柔らかく微笑んでいる。
気づけば、俺はその姿を目で追っていた。
……まただ。
俺は小さく息を吐く。
「……本当に、なんなんだよ」
その呟きが誰かに届くことはなかった。周囲の喧騒だけが、変わらず廊下に響いていた。
久しぶりに風景画を描いたのですが、思ったより木の幹って描くのが難しいですよね。
枝の伸び方や色の濃淡を考えながら描いていると、なかなか思うようにいかなくて……。
改めて、絵を描くのって奥が深いなと思いました。
それでは、また次回!




