収束 ˜”*°• 白石 柚葉 side•°*”˜
――数日後の放課後
九条先生から呼ばれた私は、職員室へと向かっていた。
事件について、進展があったらしい。
この前図書室で蓮くんと調べたことが何か役に立っただろうか?
そうだと嬉しいなぁ。
そんなことを思いながら、私はカバンを肩にかけ直した。
「1年B組、白石柚葉です。失礼します」
そっと職員室の扉を開け、中を覗く。
職員室の奥では、九条先生と蓮くんが机を挟んで座っていた。
二人はこちらに気づくと、顔を上げた。
もう蓮くんはついていたのか。
そういえばA組、最後の授業終わるの早かったもんな。
私は二人が座っている椅子の方へ向かった。
「遅れてすみません」
「いや、構わないよ。座って」
九条先生に促され、私はそっと蓮くんの隣の椅子に座った。
さすが職員室。椅子がふかふかだ。
「それじゃあ始めようか」
九条先生は、机の上に置かれていた資料を取った。
「まず、事件についてだが……君たちが調べてくれた手紙の情報も含め、調査はひとまず終了した」
「本当ですか?」
思わず身を乗り出す。
「ああ。これまでの調査で、今回の事件に関わっていた者たちの所在が判明した。君たちの読みどおり、術理研究会が関わっていたんだ」
九条先生は資料に目を落とし、続けた。
「明日、関係者の身柄を警察が確保する予定だ。月夜阿良と冬木臘月については、現在、霊力を封じたうえで学園内に拘束している。二人も明日、警察に引き渡すことになっている」
なるほど。
あの二人は、私たちと同い年だ。
更生してもう一度生き直してくれればいいなぁ。
まあ、反省するか、更生したいと思うかは本人次第だが。
あ。
関係者全員の身柄を確保ということは……。
「じゃあ、逢坂様も捕まるんですか?」
私が尋ねると、九条先生は深く頷いた。
「そうだ。これで事件も、ひとまず解決に向かうだろう」
ようやく、ここまで来た。
この数週間、胸の奥につかえていたものが、少しだけ軽くなった気がした。
「君たちには、事件の調査に協力してもらって助かった。ありがとう」
「いえ、私たちはできることをしただけです」
そう答えながら、私は隣に座る蓮くんを見た。
蓮くんもこちらを見て、小さく頷いた。
蓮くんの表情も、どこか晴れやかに見えた。
「それじゃあ、今日はもう帰っていい。警察の取り調べでこれからもっと詳しく分かってくるだろう。今までご苦労だったな」
「「はい。ありがとうございました」」
私と蓮くんは九条先生に頭を下げ、職員室を後にした。
職員室を出ると、廊下には私たち以外の姿はなかった。
「これで、ひとまず一段落だね」
「ああ。まだ分からないことは残っているけどな」
「うん。でも、ずっと気になっていたから……少し安心した」
そう言って、私は小さく息を吐いた。
蓮くんと一緒に調べた霊具の術式や印のこと。
あの事件のこと。
考えなければならないことが、ずっと頭の片隅にあった。
それがようやく、一つの区切りを迎えたのだ。
「柚葉は、これから寮に戻るのか?」
「うん。蓮くんも?」
「ああ」
蓮くんは少しだけ間を置いてから、口を開いた。
「……一緒に帰るか?」
「うん!」
蓮くんの誘いに頷くと、彼は一瞬こちらを見て、それから小さく笑った。
「じゃあ、行こう」
私たちは並んで歩き始めた。
今日の授業のことや、明日の予定。
そんな他愛のない話をしながら、寮への道を歩いていく。
蓮くんとこうして一緒に帰るのは、嫌じゃない。
むしろ、もう少しだけ話していたいと思うくらいだった。
私たちは他愛のない話をしながら、寮への道を歩いていった。
◇◇◇
その後、私たちは九条先生から、事件の関係者たちについて新たに分かったことを聞いた。
事件に関わっていた者たちは、次々と警察に身柄を確保された。
その中には、術理研究会を率いていた逢坂の姿もあった。
警察の取り調べによる供述から、逢坂こそが、今回の計画を主導していた人物だったという。
逢坂の目的は、あやかしを支配し、この腐りきった世界を壊すこと。
それ聞いた私は、思わず呆れてしまった。
「……思考がぶっとんでるわね」
世界を変えたいと思うこと自体は、否定しない。
けれど、そのために多くの人を巻き込み、あやかしさえも支配しようとするなんて。
どう考えても、まともなやり方ではない。
そして、もう一人。月夜阿良が事件に加担した理由も明らかになった。
阿良は、蓮くんのことが好きだったらしい。
だからこそ、蓮くんのそばにいる私が邪魔だった。
そんなとき、大妖の核を動かすために、九尾の狐である私の妖力が必要だと知った。
阿良は、私を消す好機だと考え、逢坂たちの計画に加わったのだという。
「……は?」
私と蓮くんは、そろって言葉を失った。
まさか、そんな理由だったなんて。
蓮くんも、さすがに予想外だったのか、困惑したような顔をしていた。
一方、冬木臘月については、少し事情が違っていた。
臘月の両親は、術理研究会に騙されていたらしい。
やがて本人も洗脳され、自分の意思で判断することさえ難しくなっていたという。
現在は洗脳が解け、自分がなぜあんなことをしたのか分からないと、ひどく困惑しているそうだ。
もちろん、だからといって、彼のしたことが許されるわけではない。
それでも、私は思う。
人生は長い。過ちを犯したのなら、きちんと反省して、二度と同じことを繰り返さなければいい。
自分のしたことと向き合い、もう一度、新しい人生を歩んでほしいものだ。
今回の事件で失われかけたものは、決して少なくない。
けれど、これでようやく、一つの事件に区切りがついたのだった。
読んでくださり、ありがとうございます!
理科で星座について習うじゃないですか。
でも、実際に夜空を見てみると、どれがどの星座なのか、いまいち分からないんですよね……。
星空を見てすぐに星座が分かる人、本当に尊敬します(*^ω^*)
それでは、また次回!




