君に贈る景色 ˜”*°• 神楽 蓮 side•°*”˜
放課後になり、俺は、図書館の二階、霊具についての専門書がある棚を見上げていた。
霊具の基礎は家で嫌と言うほど覚えさせられた。
だから、ある程度の霊具なら作ろうと思えば作れるが……。
「せっかく贈るのだ。こだわれるなら、とことんこだわりたい」
俺はそう呟き、めぼしい本を数冊本棚から抜き取り、椅子に座った。
とりあえず、霊具製作に必要な術式と、霊具の設計図を作ることにした。
様々な本を机に開き、大切なところを紙に記していく。
大まかな構造は今日の授業中に脳の端っこで考えた。
大丈夫。授業は「聞いては」いる。
……身が入っていないだけで。
我ながらずっとこのことを考えていたんだなぁと苦笑してしまう。
家で嫌々ながら霊具を作らされていたときは、こんな気持ちになったことはなかった。
自分でも、なぜなのかは分からない。
でも、いつもは嫌うような調べ物を、楽しんでいる自分がいた。
――二時間後
「すみません」
夢中になって文字を書いていた俺は、その声でハッと顔を上げた。
「そろそろ閉館時刻ですよ。消灯時間も近いので、帰ったほうがいいかと」
俺に話しかけてきたのは図書館の司書さんだった。
閉館時刻……。もうそんなに時間が経っていたのか。
俺は慌てて席を立つ。
「すみません。すぐ帰ります」
「ええ。気をつけてね」
司書さんはそう言って階段を降りて行った。
俺はその背中を見送りながら、借りる本を手元に残して、残りを棚に戻した。
本を借り、それをカバンに詰める。
そして、図書館の扉を開けた。
空はもうすっかりと暗くなり、星が光っていた。
そういえば、昨日もここで空を見上げたな。
そんなことを思いながら、俺はふと自分の横を見る。
もちろんそこには誰もいない。
でも――。
俺は、軽く微笑みながら、寮へ歩き始めた。
寮の玄関の扉を開け、時計を見ると、あと五分で消灯時間だった。
夕飯食べられなかったな。
しかも、消灯時間ぎりぎりに帰ってくる時点で寮の規則に反している。
まあいいか。
首席だから、バレてもそこまで怒られないだろう。
多分。
だがバレないならそのほうがいい。
俺は、誰にも会わないよう周囲を警戒しながら、自室に向かった。
「ただいま」
「おう。遅かったな。この時間に帰ってくるなんて、校則違反じゃないのか?」
水瀬は相変わらず痛いところをついてくる。
「まあバレていないのだから、いいだろう?」
俺はそう言いながら、借りてきた本を自分の机に置く。
水瀬は、その本を興味深そうに見ていた。
「『霊具と術式』に『霊具製作術概論』……。 おい神楽。どうしたんだ? お前にこれ以上の霊具の知識なんていらないんじゃないか?」
水瀬は驚いたように俺を見てくる。
「ちょっとやりたいことがあってな。時間がないから消灯時間過ぎてもやりたいんだが……。いいか? 寝る邪魔はしないから」
俺が水瀬を見ると、一瞬呆気に取られたような顔をした後、ふっと笑った。
「バレても、俺は知らぬ存ぜぬを突き通すからな」
「ああ。ありがとう」
やはり水瀬は優しい。
俺は水瀬に礼を言い、本を広げた。
水瀬はしばらく俺の様子を見ていたが、やがて欠伸をひとつこぼした。
「俺はもう寝るぞ。あんまり夜更かしするなよ」
「ああ。おやすみ」
水瀬が布団に入ったのを確認してから、俺は手元が見えるギリギリまで部屋の電気を落とす。
明かりが漏れないように目くらましの結界を張るのも忘れない。
そして、俺は再び本に目を落とした。
霊具に景色を記録する術式。
記録した景色を、再び映し出すための術式。
それぞれの仕組みは理解できても、それらをひとつの霊具に組み込むとなると、そう簡単にはいかなかった。
紙に術式を書き出しては、違うと思って線を引く。
また本を開き、別の方法を探す。
まだ納得のいく形にはならない。
それでも、俺は手を止めようとは思わなかった。
柚葉が、喜んでくれたら。
ふと、そんな考えが頭をよぎる。
……いや、まだ何も完成していないのに、気が早すぎるだろう。
俺は小さく苦笑し、再び紙に向き直った。
窓の外では、星が静かに輝いている。
あの景色を、いつでも見られるように。
そう考えながら、俺はもう一度ペンを走らせた。
読んでくださり、ありがとうございます!
霊具、あったら便利そうですね。
私も欲しいなぁ……( ̄∇ ̄)




