調査2
「逢坂って……」
「ああ。あの二人が言っていた人物の可能性があるな」
私たちは頷きあい、その組織について調べてみることにした。
――25分後
「だいたいこんな感じ?」
私は、組織について書いてまとめた紙を眺めて言った。
結局、分かったことは二つ。
術理研究会という組織の代表者が逢坂㮶夜であること。
そして、連環系統の術式や霊具の研究を行っていることだ。
「そうだな。ここまでわかればまあいいだろう。あの時の会議の後、九条先生に『事件に首を突っ込みすぎるな』って言われているしな」
「そうだね」
私はそう言って頷き、机に広げていた本を片付ける。
「もう帰る?」
「ああ。だがその前にわかったところまで九条先生に報告だな」
「分かった」
私たちは階段を下り、図書館から出た。
結構な時間居たのか、太陽がもう沈みそうだった。
地平線付近は茜色に染まっているのに、空の高いところは紺青色で、その交じり合う色彩がとても綺麗だ。
それに、雲の隙間から光が漏れて、まるで雲そのものが透き通っているように見える。
思わず空を見上げ、その美しさに見入った。
蓮くんは、そんな私の隣にそっと立ち、同じように空を見上げた。
「綺麗だな」
「うん。私、この時間の空が好きなんだよね」
夕焼けは、刻一刻と色を変えていく。
そんな儚さが、私はとても好きだ。
「そうか」
私たちはしばらく、図書館の前で並んで空を眺めていた。
◇◇◇
「ということです」
私たちは職員室で、九条先生に分かったことを報告していた。
蓮くんの報告を受け、九条先生は腕を組んで少し考えた後、呟いた。
「術理研究会、か……」
「先生、知っているんですか?」
私がそう聞くと、九条先生は頷いた。
「名前だけな。表向きは神楽が言ってくれた通り、霊具や霊力・妖力の研究をしている組織だ。だが、面白いほど不審なところが見当たらない。普通なら何かしら不審な点が見つかりそうなものだがな」
「そうなんですか」
私はそう言いながら、少し術理研究会のことを不気味に感じていた。
面白いほど不審なところが見当たらない。
それが、本当に潔白な組織ならいいのだが。
「まあそれはともかく、これは凄く重要な情報だ。ありがとうな」
そう言って、九条先生は私たちが情報をまとめた紙を振った。
役に立てたのなら、まとめた甲斐があった。
「いえ。よかったです」
私がそう答えると、九条先生は小さく頷き、表情を引き締めた。
「この件については、こちらで調査を進める。君たちは、これ以上独自に調べる必要はない」
「……いいんですか?」
思わず聞き返す。
「ああ。君たちは十分に情報を集めてくれた。ここから先は大人に任せなさい」
九条先生は、いつもの落ち着いた声でそう言った。
「分かりました」
私と蓮くんは顔を見合わせ、頷いた。
これで、私たちにできることはひとまず終わりらしい。
「それと、何か分かったことがあれば、こちらから伝える。だから、今は普段通りに過ごしてくれ」
「はい」
そう答えて、私たちは職員室を後にした。
廊下に出ると、窓から差し込む夕日が床を赤く染めていた。
「……ひとまず、これで終わりだな」
隣を歩く蓮くんが言った。
「そうだね。あとは先生たちに任せよう」
「その方がいい。俺たちだけで調べても、限界があるからな」
確かに、その通りだ。
術理研究会が本当に事件に関係しているのか。
そして、あの二人が口にしていた「逢坂様」と、研究会の代表者である逢坂㮶夜は、同一人物なのか。
今の私たちには、まだ何も分からない。
でも、だからこそ、ここから先は大人に任せるべきなのだろう。
「……帰ろうか」
「ああ。そうだな」
私たちは並んで、寮へと続く道を歩き始めた。
◇◇◇
寮に戻った私は、自室の窓から、刻々と色を変えていく夕焼けを眺め、今日のことを思い出していた。
図書館で一緒に本を調べて、夕暮れの空を眺めて、並んで寮まで帰った。
特別なことなんて、何もなかったはずなのに。
なんだか、少し楽しかったな。
そう思った途端、私は不思議な気持ちになった。
……どうしてだろう。
自分でも、その理由はよく分からなかった。
読んでくださり、ありがとうございます!
夕焼けって、よく見ると何色も見えますよね。
オレンジ色だけじゃなくて、赤や紫、青っぽい色が混ざっていたりして。
普段は何気なく見ている景色でも、よく見てみると意外な発見があるものですね。
それでは、また次回!




