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調査

術式の本が並ぶ棚の前で、私たちは足を止めた。


「まずは、この術式の特徴を調べてみよう」

「特徴?」

「ああ。使われている記号や、力の流れ方。そういうところから、どんな系統の術式なのか分かるかもしれない」

「なるほど」


私は先ほどの写しを思い浮かべる。


円や線。

見たことのない記号。

一見すると複雑に見えるけれど、あれも一つ一つに意味がある。


そう考えると、少しだけ興味が湧いてきた。


「じゃあ、やってみましょう」


私たちは本棚から何冊か本を取り出し、近くの机へ向かった。


――30分後


「分からない!」


私は思わず、ここが図書館だということを忘れて叫んでしまった。

だが仕方ない。

分からないのだ。


そんな私を、蓮くんは優しい眼差しで見てくれる。


「なかなか分からないな。少し似てるか? というのが見つかっても細かいところが全然違う」

「そうなのよ!」


私は机の上に広げた本を指差す。


「この術式なんて、円の形はちょっと似てるけど、使われている記号が全然違うもの」

「ああ。それに力の流れを示している部分も違う」

「……術式って、難しすぎない?」


思わずため息をつきながら机に突っ伏してしまう。

術式が、いくつもの指示を組み合わせて作られていることは分かっている。


でも、それぞれの記号が何を意味しているのか。

どう組み合わせれば、どんな術になるのか。

実際に読み解こうとしてみると、思っていた以上に難しい。


というか、私はあやかしだから、霊具は専門外なのだ。

そもそも知識が少ないから、それも相まって難しい。



「……待てよ」


蓮くんが、ふと何かに気づいたように呟いた。

私は机から顔をあげ、蓮くんを見る。


「どうしたの?」

「術式そのものを探すんじゃなくて、術式の組み方について調べてみたらどうだ?」


「組み方?」

「ああ。送られてきた術式は、使われている記号だけじゃなくて、その配置もかなり特殊だっただろ」

「確かに……」


私は、さっき見た術式の写しを思い出す。

円や線、いくつもの記号。


それらは適当に並んでいたわけじゃない。

一つ一つが、何かを指示するために組み合わされていた。


「もしかしたら、似た術式を探すんじゃなくて……」


私は本棚を見上げる。


「似たような『組み方』を探したほうがいいのかも」

「そういうことだ」


蓮くんが頷く。


「なら、もう少し探してみよう」

「うん!」


私は、もう一度本に目を通していった。



――20分後


本に書かれた術式を見て、私は思わず本をめくる手を止めた。


「蓮くん。これ……」


私がそっと蓮くんに本を差し出すと、蓮くんは私の隣から本を覗き込んだ。


「これは」


蓮くんが、本の一ページに描かれた術式をじっと見つめる。


「似てる、よね?」

「ああ。かなり近い」


蓮くんは、手元の術式の写しと本を交互に見比べる。


「ほら。ここ」


蓮くんが本に描かれた術式の一部分を指差した。


「この円の配置と、その周りにある記号の並び。送られてきた術式とよく似ている」

「本当だ……」


私も二つを見比べる。

記号そのものは違うものもある。

けれど、確かに全体の組み方がよく似ていた。


「でも、これ……何の術式なの?」

「えっと……」


私たちは本に書かれている説明へ目を向けた。

そこには、こう書かれていた。


『この術式構造は、連環系統の術式に多く見られる』


「連環系統……?」

「聞いたことないな」

「私も」


私はその名前をもう一度見る。

けれど、その下に続いていた説明を読んだ瞬間、私は眉をひそめた。


「……ねえ」

「どうした?」

「この系統って、今でも使われてるの?」


蓮くんが説明を読み進める。


「……一部の術者や組織で使われている、って書いてある」

「組織?」


私は思わず身を乗り出した。


蓮くんは本をこちらへ向けると、該当する箇所を指でなぞった。


「ここだ。連環系統は、複数の指示を組み合わせることで、複雑な術式を構築できるのが特徴らしい」

「だから、あの術式もあんなに複雑だったのね」


改めて手紙にあった術式の写しを見る。


円や線、その周りに配置されたいくつもの記号。

今までただ複雑に見えていたそれらが、少しだけ見え方が変わった気がした。


「それで、連環系統を使っている組織っていうのは?」


私が尋ねると、蓮くんはページをめくった。


「……ここには詳しく書いてないな」

「えぇ……」


思わず肩を落とす。

せっかく手がかりを見つけたと思ったのに、そう簡単にはいかないらしい。


「でも、参考文献が載ってる」


蓮くんが本の後ろのページを指差す。

そこには、連環系統について書かれた別の本の名前がいくつか並んでいた。


「これを探せば、もう少し詳しいことが分かるかもしれない」

「じゃあ、探しましょう」


私たちは参考文献に書かれた本の題名を控えると、再び本棚の間を歩き始めた。


それからしばらくして、目的の本を見つけることができた。

少し古い本だった。


表紙には『術式体系と術者』と書かれている。


私たちは先ほどの机へ戻り、本を開いた。

連環系統について書かれているページを探していく。


すると――。


「あった」


思わず声が漏れた。

そこには、連環系統の特徴や歴史だけでなく、現在もこの術式を使用している術者や組織についても書かれていた。


「……これね」


私は指で文章を追う。


『現在、連環系統を主な術式として使用している組織の一つに――』


その先に書かれていた組織名を見て、私は首を傾げた。

聞いたことのない名前だった。


「この組織……何をしているところなの?」

「少し待て。別のページに詳しい説明があるかもしれない」


蓮くんが本をめくっていく。

やがて、その組織について書かれた項目を見つけた。


そこには、術式の研究や霊具の製作を行っていること。

そして現在も、多くの術者が所属していることが書かれていた。


「霊具の製作……?」


私は思わず、机の上に置かれた術式の写しを見る。

あの霊具も、ここで作られたものなのだろうか。


そんな考えが頭をよぎった。


けれど、まだ決まったわけではない。


「……もう少し、この組織について調べてみよう」


蓮くんがそう言った。


「そうね」


私も頷き、本のページをめくる。

そして、次の項目に目を通した瞬間。


「……え?」


そこに書かれていた名前を見て、私は手を止めた。


――逢坂 㮶夜(さくや)。


あの地下で、二人が口にしていた名前だった。

読んでくださりありがとうございます(^O^☆♪

実は今回の流れ、初期構成にはありませんでした。

書いているうちに、柚葉たちが自分たちで物語を進めているような感じがしてきて……。

これからどうなるのか、私も楽しみです。

それでは、また次回!╰(*´︶`*)╯♡

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