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手紙

あれから数日が経った。

学園では、あの事件も少しずつ過去の出来事になりつつある。


最近、結構肌寒くなってきた。

そんなことを思いながら教室の窓から、雲一つない空を見上げる。


「柚葉。今いい?」


そう廊下から声をかけてきたのは、蓮くんだった。


「蓮くん。どうしたの?」


私は席を立って蓮くんの前に行く。

蓮くんは、私にだけ聞こえるぐらいの小さな声で言った。


「神楽家から、手紙が来た」


神楽家からの手紙……!

つまり、あの事件に何か進展があったということだ。


「内容は? 見た?」

「まだだ。寮の部屋だと水瀬もいるからな。だから柚葉と一緒に見ようと思って。今日の放課後、時間ある?」

「うん。場所は?」


そう聞くと、蓮くんは少し考えたあと言った。


「やっぱりあそこしかないよな。図書館4階、『自然科学』の棚の前の椅子」


図書館4階の『自然科学』の棚の前といったら、私たちがそれぞれの過去を話したところだ。

半年も経っていないのに、少し懐かしく感じる。


そういえば、あの場所で「白石さん」「神楽くん」から、「柚葉」「蓮くん」に呼び方を変えたんだよな……。

そう思うと、なぜか胸がキュッとした。


「分かった。じゃあまた放課後」

「おう」


そう言って、蓮くんは教室へ戻っていった。


◇◇◇


放課後、授業が終わり、鞄を持った私は教室から出た。


鈴ちゃんには「用事がある」とだけ言っておいた。

あんまりこのことを人に話さないほうがいいと思うしね。


廊下にはもう蓮くんがいた。


「蓮くん。お待たせ」

「大丈夫。行こう」


私たちは並んで図書館へと歩き始めた。


図書館に行くには、一旦校舎の外に出る必要がある。

冷たい風が私の頬を撫でた。


「結構寒くなってきたね」

「ああ。そろそろ外套(がいとう)を出したほうがいいかもな」

「そうね」


そんなこんなで雑談をしながら歩いていると、円柱の建物である図書館が見えてきた。


重い扉を開け、階段で4階まで上る。


やっぱり懐かしい。


そんなことを思いながら私は、棚の横の椅子に腰掛けた。


蓮くんは、私の隣の椅子に腰掛けると制服の上着のポケットから白地に紅で神楽家の紋が描かれた封筒を取り出した。

前回は黒い封筒だったのに。

色に意味はあるのだろうか。


「ねえ蓮くん。なんで今回は白い封筒なの? 前回は黒かったよね?」

「ああ」


蓮くんは封筒を見て言った。


「黒い封筒は、『緊急』もしくは『召集』を表す。まあ要するに、早く見ろってことだ。ちなみにこれは白ではなく灰色だ」


蓮くんは私に封筒を手渡す。

私は光にかざして封筒をよく見る。

すると。


「あっ」


確かに、角度によっては灰色に見える。


「今手元に白い封筒はないが、白い封筒はこれよりもっと白い。ちなみに白は『通常』・『依頼』、灰色は、『極秘』を意味する」


なるほど。

『極秘』だから白に似た灰色を使ってるのか。

というか聞いたのは私だけど、簡単に言っていいのか?


私がそう思っている間に、蓮くんはビリビリと封筒を破って開けていく。

そして、中から便箋らしき紙を取り出した。


「えっと……」


蓮くんが私にも分かるよう、当たり前のように手紙を読んでくれる。

 これって私を信用してくてるってことだよね。地味に嬉しい。


紙に書いてある内容をまとめると、こういうことだった。


あの霊具に刻まれていた「印」について神楽家で調べたものの、現在の記録には該当するものが見つからなかったらしい。

ただ、霊具に刻まれていたもう一つのもの――「術式」については、いくつか分かったことがあるそうだ。


術式とは、霊力や妖力を使って何かを動かすための指示を、いくつも組み合わせたものだ。


例えば、炎を出す術式なら「何を出すか」「どこへ出すか」「どれだけの力を使うか」など、いくつもの指示が組み合わさっている。

術式は、いわば術を動かすための命令文のようなものだ。


だから、術式を解析したらそこにどんな指示が組み込まれているのかを読み取ることができる。


……もっとも、私はすべての術式を読み解けるわけではない。

術式には、術者によって独自の記号や組み方が使われることもあるからだ。


「その術式の写しを次の紙に載せてるって。えっと、これか」


蓮くんが一枚の紙を取り出し、私の前に広げる。


「……これが、術式?」


紙には、いくつもの円や線、見たことのない記号が複雑に描かれていた。


けれど――。


「……分からないわね」


私は紙をじっと見つめる。


「ああ。俺も初めて見る」

「で、清隆さんはなんでこれを送ってきたの?」

「えっと……。『学園の図書館なら、神楽家にない術式の専門書があるかもしれないから、一応探して欲しい』だって」


「なるほどね。調べるってわけか」

「ああ」


私はもう一度、紙に描かれた術式を見る。

円や線、見たことのない記号。


一体、これが何を意味しているのか。


「……じゃあ、調べてみましょう」

「そうだな」


私たちは立ち上がり、図書館の術式の本がある棚へ向かった。


この術式が、一体何を表しているのかを知るために。

最近、友達におすすめされた本を読んでいるのですが、それが結構面白くてハマっています。

普段あまり読まないタイプの本だったので、最初はどうかな〜と思っていたのですが、読んでみたら思った以上に面白い!

おかげで最近、暇さえあれば本を読んでいます(笑)

それでは、また次回〜!

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