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中間テスト ˜”*°• 神楽 蓮 side•°*”˜

蓮視点です。

少し暗め。

――柚葉が実技のテストを受けている時


俺は、今日でテストが終わるという喜びを感じながら、実技の順番を待つ列に並んでいた。

俺は人間だから、霊力を使う。


戦い方があやかしと根本的に違うから、列が別だ。だから、あやかしの水瀬とは一旦別れてあやかしの生徒たちがテストに取り組んでいる様子をボーッと見ていた。


俺も、あやかしだったら楽だったのかな……


そんなこと、これまで何十回、何百回願っただろうか。



░神楽 蓮░


俺は、陰陽師の名家、神楽家の次男として生まれた。

親は、俺のことを兄貴のスペアとしか思っていないのだろう。


そんなことは小さい時から気づいていた。

でも、俺がガキの時はそんなことを信じたくなかった。

だから、親に俺のことを見て欲しくて、かまって欲しくて努力した。


でも、


どんなに学校のテストで満点を取っても。陰陽師の力で悪さを働いたあやかしを退治しても。その辺の陰陽師よりも力をつけても。

親が俺のことを見てくれることはなかった。


兄貴のことは褒めちぎってきちんと見ているのに。

悔しかった。悲しかった。

それでもその頃の俺はまだ子供だった。


絶対に、見てくれる日が来るから……。


そう自分に言い聞かせて、「親に自分を見てほしい。認めてもらいたい」と言う一心で努力を続けた。


霊力は訓練を重ねた分だけ伸びる。

ついに兄貴を霊力の面でも、技術の面でも越した。


「お母さん!僕、こんなに強くなったんだよ!」


認めて欲しくて母親にそんなことを言った。

俺は一言、「頑張ったね」そう言ってもらいたいだけだった。


それでも、母親はその一言、たったその一言を言うことはなかった。


そんなある日、俺は寝れなくて水を飲みに台所へ向かった。

その途中で、親が寝ている部屋の明かりがまだついていることに気づいた。


こんな時間な飲みまだ起きてるなんて珍しい……ん? なんか話し声が聞こえる……。


音を立てないようにそっと聞き耳を立てた。


『蓮がどれだけ力をつけようと、誰がなんと言おうと神楽の家を継ぐのは長男である柊(しゅう)だ。蓮の霊力は、いずれ柊が大きな術を使うための『生贄』として使えばいい。あんなに霊力を付けたんだ。柊に霊力を分け与えるために使えばいい。優秀なスペアに育ってくれて好都合だ』


う……そ…… 俺の、あの努力はなんだったの?


水を飲むのも忘れて、俺は部屋に逃げるように帰った。

俺の中でかろうじて保っていた一本の線がぷつっと切れたような音がした。


もう、やめよう。


その日から、親に見てもたうために訓練をするのをやめた。

代わりに、『いつか復讐してやる…!』と言う暗い思いが俺の脳を支配した。


そのためには、今急に訓練をやめて親に不信感を抱かせるわけにはいかない……。


親にいつか復讐をするため、俺はより一層訓練に励んだ。


そして、学園に入学できる15歳になった。


この「共生特区」には、二つの学校がある。

あやかしと人間の両方が通うことができる「常盤学園」と、人間のみが通うことができ、陰陽師の支援も充実している「英(はなぶさ)学園」。


俺は、15歳の誕生日、父親の部屋に呼び出された。


何年ぶりだろうな……この部屋の戸を叩くのは……


それだけ父親と話してこなかったのだろう。昔自分の中に渦巻いていた「悲しみ」や「寂しさ」が、「諦め」や「憎しみ」に変わっていることに気づく。


俺は深呼吸をして父親の部屋に入った。

「蓮、お前も今日で15歳になったな。立派に育ってくれて誇りに思う」


誇り……?


俺がもしもあの日、あの父親の言葉を聞いていなければとても喜ぶ言葉だろう。

でも、あの話を聞いてしまった俺にはなんの感情も生まれなかった。

ただ、俺の心に渦巻く「復讐心」がより一層大きくなっただけだった。


「ありがとうございます、父上」


膝の上で両手を硬く握りしめ、思ってもないことを感情のこもってない声で言う。


「そこでだな、蓮。英(はなぶさ)学園の入試を受け、必ず首席合格をしろ」


父はそう続けた。


このまま父の言う通りにしたら、より一層父の手のひらの上で転がされるだけだ。それは、嫌だ。…父に刃向かったことはないけど……


俺は、恐怖を押し殺して顔を上げる。


「父上。俺は、英学園には行きません」

「なんだと?」


その刹那、部屋の空気が凍りつく。


「俺は…常盤学園に行きます」

「…それがどういう意味かわかっているのか?」

「わかっているつもりです」


仮にも父親は神楽家の当主。

当主に歯向かうともなれば、学園に通っている期間はいいとしても、卒業したら勘当を覚悟した方がいいだろう。


それでもいい。


財産が無くなろうと、父の掌の上で転がされるよりはマシだ。

それに、1人で生きて行く術など五万とある。


あっ


そこまで考えて忘れていたことを思い出す。

父は、俺をいずれは兄貴の生贄としてこき使うつもりだ。

つまり、父は俺を勘当することはできない。


うん、勝ったわ。


勝利を確信して、自信を持って父の瞳を真正面から受け止める。


「……」


数分間の沈黙。

それを破ったのは、父の大きなため息だった。


「……いいだろう。勝手にしなさい。その代わり、必ず首席で入学し、首席で卒業しなさい」


そうして、俺は常盤学園入学の許可を勝ち取ったのだった。


その日の夜、俺は親への復讐をどう行うか考えていた。

そこで、ふとこの前読んだ本の内容を思い出した。


『あやかしは、基本人間よりも生殖本能が少なく、母性も少ない。そのため、子も親に依存しにくい』


あぁ、あやかしだったら俺はここまで悩まなかったのではないだろうか……。

どうして俺は『人間』なのだろう。

陰陽師という人間の中で最もあやかしに近い位置にいるのに…… 。


届きそうで届かない距離が憎い。こんなことで悩まないあやかしが、家族が憎い。

そんなんだったらこの家に生まれなくなかった…!


そんなことをずっと思っている中、俺はこの学園で「白石柚葉」に出会った。

八つ当たりのように憎んでいるあやかしなのに、彼女だけは光のように見えた。


俺が「陰陽師の名家、神楽家の次男」と言う立場だからとまとわりついてくる女子とは違って、自分の力で立っている真の強さが美しかった。


俺は、自分が「白石柚葉」に惹かれていることに、この頃はまだ気づいていなかった。

やっと蓮の過去が…!

楽しんでいただけたら幸いです!

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