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日常

――翌日


今日から、通常授業が再開した。


鈴ちゃんと一緒に教室に入ると、中にはもう、結構な人数の生徒がいた。

教室のあちこちから、「あの事件さ」「そうそう。起こしたの、D組の冬木くんと月夜さんなんでしょ?」という様な話が聞こえてくる。


それに何やらこちらを伺うような視線を感じる。

戦ったのが私だからだろう。


少し聞き耳を立ててみる。

……うん。どうやら、私が知っている以上のことを知っている人はいなさそうだ。


そんなことを思っていると鈴ちゃんが私の隣の席に腰掛けながら言った。


「なんか、すごい噂になってるね。柚葉ちゃんと神楽くんのことを『英雄だ!』って言ってる人もいるみたいだよ」


英雄って……。


「だからさっきから視線を感じるのね。というかみんなどこで情報を仕入れてくるのよ……」


少し呆れてしまう。

世の中には噂好きの人がたくさんいるからな……。

情報網どうなっているんだろうか。


そんなことを思いながら、鈴ちゃんと雑談をしていると、教室の前の廊下を横切る見慣れた黒髪が目に入った。


蓮くんだ。


楽しそうに友達と会話しながら歩いている。

どこかに用事があるのか、蓮くんは階段の方に向かう廊下へ歩いて行った。

蓮くんが曲がり角を曲がり、その背中は見えなくなる。


蓮くんの姿が見えなくなっても、私はなぜかその曲がり角から目が離せなかった。


……なんでだろ?


私は小さく首を傾げた。


◇◇◇


午前最後の授業が終わり、授業終了を告げる鐘が鳴った。


「お腹すいたー! やっぱ久しぶりの授業だと体力使うね」


鈴ちゃんは先生が教室から出て行くや否や、机に突っ伏した。

うん。可愛い。

鈴ちゃんを見ていると、次第に鈴ちゃんが小動物に見えてくる気がするのはなぜだろうか。


「うん。じゃあ食堂いこっか」

「うん!」


私たちは一緒に教室を出て、学園内の食堂に向かう。

常盤学園では、朝食と夕食は寮内の食堂で食べ、昼食は校舎内の食堂で食べる。


食堂は、たくさんの生徒で賑わっていた。

私たちはお盆をとって列に並ぶ。


料理が並べられた卓から、好きなものを自分で取る形式だ。

私は、さつまいものご飯、鯖(さば)の味噌煮、だし巻き卵、お味噌汁に栗きんとんを選んだ。

鈴ちゃんのお盆には、菜飯(なめし)のおにぎり、だし巻き卵、野菜の煮物、鶏の照り焼き、茶碗蒸し、梨がのっている。


美味しそうな匂いが漂ってきて、ますますお腹が空いてくる。

私たちは、食べる席を探して食堂の中を歩き回る。



うーん。なかなか空いている席がないなぁ。

最悪相席かな?

そう思って周りを見回した時。


「……!」


不意に、窓際の席に座っていた蓮くんと目が合った。

蓮くんは私と目が合うと、自分の椅子の隣の椅子を指差した。


空いてるよと言いたいのだろう。


まあ確かにあの席ぐらいしか空いてない。

知らない人と相席になるぐらいだったらいっか。


私は鈴ちゃんと一緒に蓮くんのいる席に向かった。


「ここ、いい?」

「ああ」


私と鈴ちゃんが席に座ると、蓮くんの向かいの席に水瀬くんが座っていることに気づいた。


「あれ、水瀬くんも一緒だったんだ」

「おう。ここしか空いてなかったからな」


水瀬くんのお盆を見ると、白米がかなり大盛りになっている。

……よく食べるなぁ。


「水瀬くん、それ一人で食べるの?」

「当たり前だろ! 午後も授業あるんだから、これくらい食わないと!」

「なるほど……」


私は自分のお盆を見る。

私の倍くらいある気がする。


それに比べて蓮くんのお盆の上にのっていたのは白米、焼き魚、だし巻き卵、ほうれん草のおひたし、味噌汁、漬物と至って素朴なご飯だ。

しかも、無駄に盛り付けが綺麗だ。

ご飯屋さんで働けると思う。


取る品や量、盛り付け方に性格って出るんだなぁ。


四人で「いただきます」と手を合わせ、それぞれ食事を始める。


私はさつまいものご飯を一口食べる。

甘いさつまいもと、ほんのり塩気のあるご飯がよく合っていて美味しい。


ふと隣を見ると、蓮くんは黙々と食事をしていた。

その向かいでは、水瀬くんがものすごい勢いで白米を食べている。


本当にあの量を食べるんだ。


反対側では、鈴ちゃんが料理を少しずつ味わっている。

四人で同じ机を囲んでいるのに、それぞれ食べ方が全然違う。


なんだか面白いな。


そんなことを考えながら、私はまた隣を見る。


昨日は神楽家で、普段とは違う蓮くんをたくさん見た。

書庫で古い記録を調べている姿も。

道場で私の練習を見ていた姿も。

家族と話している姿も。


学校にいる時とは、少し違って見えた。


……なんでだろう。


昨日のことを思い出すと、また蓮くんのことを見てしまう。


「……柚葉?」

「え?」


顔を上げると、蓮くんと目が合った。


「どうかしたか?」

「……ううん。なんでもない」


私は慌てて視線を自分のお盆へ戻した。


……なんで見てたんだろう。


自分でも、よく分からなかった。

読んでくださりありがとうございます(^O^☆♪

衣替えって、いつするか毎年悩みますよね。

いつしよう……。

それではまた明日ー!☆〜(ゝ。∂)

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