神楽家5
本日2話目です。
読む順番にはご注意を……!
道場を出ると、さっきとは違う廊下に案内された。
いまいちこの屋敷の構造が分からない。
脳内で神楽家の構造地図を作りながら、私は紗良さんの後についていった。
少し歩くと、襖がいくつも並んだ大きな部屋に通された。
部屋の中心には、黒いお膳が向かい合わせで二つ並んでいた。
ここでご飯を食べるのだろう。
というか、さっきから無駄に通される部屋の一つ一つが大きい。
二人しかいないのだから、こんなに大きい部屋じゃなくてもいいと思うんだけどなぁ。
そんなことを思いながら、私は蓮くんの向かいに座る。
少しすると、使用人が食事を運んできた。
お膳の上に次々と料理が並べられていく。
栗ご飯に秋鮭の塩焼き、きのこのお吸い物、里芋の煮物など、とても秋らしい料理だ。
とても美味しそう。
「わぁ……」
思わず声が漏れる。
「すごく秋らしい料理だね。美味しそう!」
「そうだな。美味しそうだ」
蓮くんがそう言って頷いた。
「「いただきます」」
手を合わせ、私は栗ご飯から食べ始めた。
「ん〜! 美味しい!」
私は思わずそう言ってしまう。
そんな私を見て、蓮くんは面白そうに微笑んだ。
「気に入った?」
「うん。すごく美味しい!」
栗のほのかな甘みと、ご飯の塩気がちょうどいい。
思わずもう一口、栗ご飯を口に運ぶ。
道場で思いっきり体を動かしたせいか、いつもよりお腹が空いていたこともあって、箸がどんどん進んでしまう。
次に秋鮭を一口食べてみる。
身はふっくらとしていて、程よく脂が乗っている。
塩加減も絶妙で、これだけでご飯が何杯でも食べられそうだ。
「これも美味しい……」
「秋鮭も、この時期になるとよく出るな」
「へえ。季節の料理って感じなんだ」
「ああ。そうだな」
なるほど。そうなんだ。
そういえば、白石家でも季節によって料理が変わるけれど、神楽家はそれ以上に旬のものを大切にしているような気がする。
栗ご飯に秋鮭、きのこのお吸い物に里芋の煮物。
どれも派手な料理ではないけれど、一品一品が丁寧に作られているのが分かる。
私は次々と料理に箸を伸ばしながら、神楽家の食事を楽しんだ。
ふと向かいを見ると、蓮くんも静かに食事をしている。
学校では昼食を一緒に食べることもあるけれど、こうして神楽家で向かい合って食べていると、なんだか少し不思議な感じがする。
ここは蓮くんが育った家。
普段、学校で見ている蓮くんとは少し違う姿が、少しずつ見えてくる気がした。
そんなことを思いながら、私は次にお吸い物を口にする。
温かい出汁の味が、体に染みる。
朝から神楽家に行き、書庫で古い記録を調べて、その後は道場で弓まで使わせてもらった。
こうして振り返ってみると、結構いろいろなことをしている。
それでも、不思議と疲れている感じはしなかった。
むしろ、楽しい。
それに少なくとも、今この瞬間だけは、昨日の事件のことも、神楽家の家紋のことも忘れていられた。
私は最後に残った栗を口に入れ、満足げに息を吐いた。
「……美味しかった」
「それはよかった」
蓮くんが小さく笑う。
やがて食事を終えると、私は手を合わせた。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
二人分のお膳が片付けられていくのを眺めながら、私はふと窓の外へ目を向けた。
穏やかな秋の日差しが庭を照らしている。
視界の端で、蓮くんも同じように庭を眺めているのが見えた。
その表情は、心なしか穏やかに見えた。
少しして、蓮くんが立ち上がった。
「そろそろ帰るか」
「そうだね」
私も立ち上がり、使用人の案内で神楽家の玄関に行った。
玄関で靴を履いていると、違う使用人が声をかけてきた。
「蓮様。白石様。清隆様より伝言です」
使用人は一礼してから、言葉を続けた。
「印のことは神楽家の方でも調べておくので、何か分かり次第、手紙で知らせるとのことです」
「分かった。父上には了解したと伝えておいて」
蓮くんはそう答えた。
「それじゃあ柚葉、行こっか」
「うん」
私たちは玄関を出て、学園に戻るため馬車に向かった。
馬車が走り出し、ゆっくりと神楽家を離れていく。
私は窓から、少しずつ遠ざかっていく神楽家の屋敷を眺めた。
今日一日で、いろいろなことを知った。
神楽家に残されていた古い霊具の記録。
昨日の霊具に刻まれていた、神楽家の家紋によく似た印。
そして、その印について調べてくれるという清隆さん。
けれど――。
まだ、何も分かってはいない。
あの印が何を意味しているのか。
どうして昨日の霊具に使われていたのか。
そして、あの二人が仕えていた「逢坂様」とは何者なのか。
「……まだまだ分からないことがいっぱいね」
私が小さく呟くと、向かい合って座っていた蓮くんがこちらを見る。
「ああ。神楽家から何か連絡が来たら、すぐに知らせるよ」
「うん」
私は頷き、もう一度窓の外へ目を向けた。
事件は、まだ終わっていない。
そんな気がした。
読んでくださりありがとうございます!
今、水耕栽培でレタスを育てているのですが、キッチンペーパーで発芽させてから、植え替えよう、植え替えようと思って1週間が経ちました……( ̄▽ ̄)遠い目
枯れてないといいなぁ。
そろそろ植え替えようと思います。多分……。




