神楽家3
※ちょっとだけ頭使うかもです!
私は二つの写真を見比べる。
事件で使われていた霊具に刻まれている印は、神楽家の家紋とはいくつか違うところがあった。
中央に描かれた三日月の向きも違う。
周囲の三本の曲線も形が違うし、霊具の印には三日月の中に三つの六芒星が描かれている。
一見すると、別の印にも見える。
けれど――。
円の中に三日月があり、その周囲を三本の曲線が囲んでいる。
その基本的な構造は、とてもよく似ていた。
「……これ」
私は二枚の写真をもう一度見比べる。
「やっぱり、似てない?」
蓮くんも写真を見つめながら、静かに頷いた。
「ああ。俺もそう思う」
やっぱりそうだよね……。
これは、偶然? いや、でも。
「偶然、とはとても……」
私が呟くと、清隆さんが口を開いた。
「偶然かどうかを確かめるために、お前を呼んだのだ、蓮」
「……俺を?」
蓮くんは訝しげに眉を顰める。
「ああ。神楽家に残っている記録と照らし合わせれば、何か分かるかもしれん」
清隆さんは二枚の写真を見つめた。
「そして、この霊具を作った者が、何者なのかを突き止めたい」
清隆さんの言葉に、蓮くんは写真へ視線を落とした。
「……そのために、俺を呼んだんですか?」
「ああ。神楽家には、代々作られてきた霊具についての記録が残っている」
「……そうですか」
蓮くんはしばらく黙っていた。
やがて顔を上げる。
「それで、俺に調べろと?」
「ああ」
清隆さんは短く答えた。
「神楽家当主として、お前に命じている」
「……すみません」
蓮くんは一度だけ息を吐き、清隆さんを強い眼差しで見つめる。
「俺はもう、神楽家に命令されて動くつもりはありません」
「……」
清隆さんの目がすっと細くなる。
「ならば、どうする?」
「俺自身が調べます」
蓮くんはまっすぐ清隆さんを見つめる。
「……それは、自分の意思でということか?」
「はい」
蓮くんは迷いなく頷いた。
「昨日の事件について、まだ分からないことが多い。俺も当事者ですし、この霊具についても知りたいと思っています」
清隆さんはしばらく蓮くんを見つめていた。
やがて、ふっと視線を写真へ落とす。
「……分かった」
その一言に、私は思わず清隆さんを見る。
「神楽家に残っている記録を見れば、何か手がかりが見つかるかもしれん」
「その記録、見せてもらえますか?」
蓮くんが尋ねる。
「ああ」
清隆さんは短く答えた。
「ついてこい」
そう言って、清隆さんは立ち上がった。
私たちは清隆さんの後に続き、和室を出た。
長い廊下をしばらく歩いていく。
屋敷の中は思っていた以上に広く、いくつもの部屋を通り過ぎた。
やがて、清隆さんが一つの襖の前で足を止める。
「ここだ」
襖を開けると、そこには壁一面に棚が並んだ広い部屋があった。
棚には古びた帳面や巻物が、年代ごとに整理されている。
「……すごい」
思わず声が漏れた。
「神楽家では、霊具に関する記録を代々残している。作られた年代や用途、作成者なども記されている」
清隆さんはそう言いながら、棚の一角へ向かった。
「少し探してみよう」
「俺も探します」
蓮くんがそう言って、棚に並んだ帳面を見始める。
私もその隣で、古い記録を一冊ずつ確認していった。
しばらくして――。
「あった」
清隆さんの声がした。
私たちがそちらへ向かうと、清隆さんが一冊の帳面を開いている。
そこには、古い霊具の絵が描かれていた。
その横には、刻まれた印が載っている。
「これ……」
私は絵を覗き込む。
そこに描かれていた印を見て、私は思わず息を呑んだ。
形は違う。
中央に描かれた三日月の向きも、周囲の三本の曲線も違っている。
古い霊具の印は、一番外側の縁も三重になっていた。
一見すると、別の印にも見える。
けれど――。
円の中に三日月があること。
その周囲を三本の曲線が囲んでいること。
昨日の霊具に刻まれた印と、基本的な構造がよく似ていた。
「……やっぱり、似てる」
私が呟くと、蓮くんも記録を見つめながら頷いた。
「ああ。俺もそう思う」
「でも、完全に同じではないのね」
「そうだな」
清隆さんが記録を指でなぞる。
「時代や作り手によって、細かな違いがあるらしい」
「この霊具は、神楽家で作られたものなんですか?」
私が尋ねると、清隆さんは頷いた。
「ああ。この記録に残っているものは、すべて神楽家で作られた霊具だ」
「じゃあ、昨日の霊具も……?」
私が尋ねると、清隆さんは首を横に振った。
「それはまだ分からん」
「どうしてですか?」
私がそう尋ねると、清隆さんは棚に並ぶ帳面を見ながら言った。
「昨日の霊具と完全に一致する記録はない。だからといって、神楽家が関わっていないとも断定できん」
なるほど。
これだけでは何も決められないということか。
「ただ、一つ気になることがある」
清隆さんが、記録の別のページを開いた。
そこには、今までとは少し違う印が描かれていた。
「これは、今から百年以上前に作られた霊具に使われていたものだ」
私はその印をじっと見つめる。
昨日の霊具の印にも似た構造だ。
けれど、やはり完全には一致しない。
「……これが何か関係しているのかしら」
そう呟くと、蓮くんが隣で静かに答えた。
「分からない。でも、調べる価値はありそうだ」
「うん」
まだ、何も分かってはいない。
それでも、昨日の事件と神楽家を繋ぐ糸が、ほんの少しだけ見えた気がした。
読んでくださり、ありがとうございます!
昨日、推しているアーティストさんのアルバムが発売されました!!
新曲がいっぱい聴けて、めちゃくちゃ嬉しいです。
しばらくはこれを聴きながら過ごすことになりそうです(笑)
それでは、また次回!




