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神楽家2

神楽家の門をくぐると、広い庭が目に入った。

手入れの行き届いた庭には、立派な松や色づき始めた木々が並んでいる。


「……すごい」


思わず声が漏れた。

学園もかなり大きいけれど、それとはまた違う。


ここには、長い年月をかけて積み重ねられてきたものの重みがある気がした。


「そんなに珍しいか?」


隣を歩く蓮くんが、私を見る。


「だって、私が来たことのある屋敷の中でも、ここまで大きいところはないもの」

「……そうか」


そう言った蓮くんの表情は、どこか硬かった。


蓮くんと一緒に少し歩くと、使用人らしき人が駆け寄ってきた。


「おかえりなさいませ。蓮様」

「ああ」

「……それで、こちらの方は?」


使用人は、私に九本の尾に目を向けて言った。

とても歓迎するような眼差しではない。


まあここは陰陽師の屋敷なのだ。

あやかしが敷地内に入ってきているという状況を歓迎する陰陽師なんていないだろう。

そういうものだ。


どう答えようか……と悩んでいると、蓮くんが堂々と言った。


「白石柚葉。俺の友達だ。それに、彼女も事件の当事者だ」

「……左様でございますか。では、こちらにどうぞ」


使用人は、渋々と言った様子で私たちを屋敷に通す。


私を見た時、一瞬睨まれた気がするのは気のせいだろうか。

まあ、気にしないけど。


そんなことを思いながら、私は蓮くんと一緒に使用人の後について屋敷の中を歩いた。



私たちは、神楽家の廊下を少し歩いた先にある、豪華な和室に通された。

大きい和室だ。

何人ぐらい入るのだろう。


部屋の中央には、低い机が置かれている。

壁には見たことのない掛け軸が飾られ、隅には大きな花瓶が置かれていた。


ちらりと隣を見ると、蓮くんは黙ったまま正座している。


学園にいる時とは、なんだか雰囲気が少し違う。

いつもなら、もう少し気楽にしているのに。


「蓮くん」

「ん?」

「……大丈夫?」

「ああ。大丈夫だ」


そう答えた蓮くんは、いつものように笑った。

でも、その笑顔はどこか硬かった。


私と蓮くんが並んで座っていると、しばらくして襖が開いた。


「……蓮」


低い声とともに、部屋の中へ一人の男性が入ってくる。


「……父上」


蓮くんが小さく呟いた。


父上……。この人が、蓮くんの父親、神楽清隆さんか。


私は、無礼にならない程度に清隆さんを観察する。

年齢は四十代半ばくらいだろうか。

蓮くんと同じ黒髪だが、その雰囲気はまるで違う。


鋭い目つきに、隙のない立ち姿。

ただそこにいるだけなのに、部屋の空気が引き締まったように感じる。


「久しぶりだな、蓮」

「はい。お久しぶりです」


蓮くんはそう言って、軽く頭を下げた。

清隆さんはそんな蓮くんを見たあと、ゆっくりと私へ目を向けた。


「……そちらは?」

「白石柚葉と申します。妖狐の現当主、白石華蓮の娘といえば、お分かりでしょうか?」


私がそう名乗ると、清隆さんは私を探るような目でじっと見つめた。

私は、その視線を逸らすことなくまっすぐ受け止めた。


しばらくすると、清隆さんは小さく息を吐き、言った。


「白石柚葉、と言ったか。あやかしの君がなぜここにいる? 俺は蓮のみを呼んだはずだったのだがな」

「俺が連れてきました。昨日の事件に彼女も関わっています」 


私が答える前に、蓮くんがそう答えた。


「それは知っている。だが、今回の件は神楽家の問題だ。わざわざ彼女まで連れてくる必要があったのか?」

「……神楽家の問題、ですか」


蓮くんの声が、少しだけ低くなる。


「昨日の事件は、神楽家だけの問題じゃありません。常盤学園で起きた事件です。俺も柚葉も、その場にいた」

「だから連れてきたと?」

「はい」


蓮くんは清隆さんをまっすぐ見つめる。


「それに、霊具に刻まれていた印について知りたいのは、俺も同じです。柚葉にも知る権利がある」


清隆さんは黙って蓮くんを見つめ、言った。


「……随分と変わったな、蓮」

「そうですか?」

「以前のお前なら、私の言うことに口を挟むことなどなかった」

「……」


蓮くんは一瞬だけ黙った。

けれど、すぐに顔を上げる。


「俺も、もう子供じゃありませんから」

「……そうか」


清隆さんは、そう呟き、着物の懐から二枚の写真を取り出した。


「……これを見ろ」


そう言って、私たちの前に写真を並べる。

一枚目に写っていたのは、昨日の事件で使われていた霊具だった。


「昨日の事件で使われた霊具ですね」

「そうだ。そして、こちらがもう一枚だ」


私は、隣に置かれた写真へ目を向ける。


そこに写っていたのは、古びた霊具だった。

形は昨日のものとはまるで違う。


けれど――。


「……あれ?」

私は写真を覗き込んだ。


霊具の側面に、何か印が刻まれている。

その印を見て、私は昨日の霊具を思い出した。


「これ……」

私は二枚の写真を見比べる。


昨日の霊具に刻まれていた印と、神楽家の霊具に刻まれている印。

形は違う。けれど、どこか似ていた。

最近、朝起きると「あと5分だけ……」って思うんですけど、その5分が一番危険なんですよね。

気づいたら普通に寝ています(//∇//)

朝に強い人、本当に尊敬します……。

それでは、また次回!

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