↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
73/95

神楽家

「見て」


蓮くんはスッと黒い封筒の中から三つに折られた紙を私に差し出す。


私は恐る恐る、紙を開く。

かさりと、紙が擦れる音がする。


その紙には、どこか蓮くんに似た字でこう書いてあった。


『蓮へ

昨日、常盤学園で発生した事件について、確認したいことがある。

事件で使用された霊具の一つに、神楽家の家紋と酷似した印が確認された。

その件について、神楽家として看過することはできない。

ついては、至急神楽家へ戻るように。

これは当主命令だ。異論は認めぬ。

神楽家当主 神楽 清隆(きよたか)』


それを読んだ後、私はそっと蓮くんに目を向ける。

蓮くんは、表情を殺して腕を組み、俯いていた。


神楽清隆……。

蓮くんのお父さんであり、神楽家の現当主だ。


そんな蓮くんにそっと話しかける。


「蓮くん……。行くの?」

「……まあ、当主命令だから、逆らうわけにはいかないよな」


蓮くんは憂鬱そうな顔でため息をつきながら言った。

そんな蓮くんを見ていると、自然と口から言葉が出ていた。


「じゃあ、私も行くよ」

「……え?」


蓮くんが驚いたように顔を上げる。


「だって、この事件には私も関わっているもの。あの霊具だって、実際に見ているし。それに、神楽家の家紋が使われていた理由も気になるわ」

「でも……」

「それに、蓮くん一人で行かせるのはちょっと心配だし。何かあったら白石家の権力でなんとかしてあげるわよ。

多分」


私がそうイタズラっぽく笑って言うと、蓮くんはなんとも言えない顔をした。


「……俺なら大丈夫だ」

「そういう意味じゃないわよ」


表情を引き締めて、蓮くんをまっすぐ見つめる。


「ただ、私も知っておきたいの。昨日の事件のことも、神楽家のことも」


蓮くんはしばらく黙って私を見る。

やがて、小さく息を吐いた。


「……分かった。じゃあ、一緒に行こう」

「ありがと。出発は?」

「明日の朝かな。行けるか?」


私が頷くと、蓮くんはふっと笑う。


「ありがとう。柚葉がいてくれると心強い。先生には俺から言っておくから」


蓮くんはそう言い、男子寮の方へ戻っていった。


私も自室へ戻ろうと、踵を返す。

明日は神楽家へ行く。


神楽家、か……。


一体、どんなところなんだろう。

そんなことを考えながら、私は自室へ戻った。



――翌朝


私はいつもより少し早く目を覚ました。

昨日の夜から、今日のことが気になっていたせいだろうか。


私が出かける準備をしていると、寝ていた鈴ちゃんが目を開けた。


「はやいね……ゆずはちゃん」


まだ眠いのか、少し舌足らずだ。

私はふふっと笑いながら、鈴ちゃんの髪を撫でる。


「まだ寝てていいよ。ちょっと私出かけてくるから」

「そっかぁ。いってらっしゃい」


鈴ちゃんはそう言うと、またスヤスヤと寝息を立てた。


うん。可愛い。


私は唇を綻ばせ、カバンを肩にかけると、鈴ちゃんを起こさないようにそっと部屋の外に出た。



女子寮の玄関から外に出ると、もう蓮くんが待っていた。


「おはよ。遅くなってごめんね」

「おはよ。そんなに待ってないから大丈夫。昨日、外出許可は取ったけど、行く前に九条先生のところに寄れって言われてるから、いい?」

「うん。もちろん」


私たちはそのまま職員室へ向かった。

職員室の扉をノックすると、九条先生が顔を上げる。


「おはよう。来たか」

「おはようございます」


「神楽家へ行くんだったな」

「はい。昨日、蓮くんのところに手紙が届いて……」

「話は聞いている。神楽家からの正式な要請なら、こちらとしても断る理由はない」


九条先生はそう言って、少しだけ表情を曇らせた。


「ただし、昨日も言ったが、無茶はするなよ。今回の事件はまだ何もかも分かったわけじゃない」

「分かっています」


蓮くんが頷く。


「それと、神楽家で昨日の事件について何か分かったことがあったら、必ず報告してくれ」

「はい」


「白石もだぞ」

「もちろんです」


私がそう答えると、九条先生は深く頷いた。


「よし。気をつけて行ってこい」

「「ありがとうございます」」


私たちは九条先生に頭を下げ、職員室を後にした。



そのまま校門を出て、前に止まっていた馬車に乗り込む。

多分神楽家のものだろう。


馬車の中で、蓮くんはいつもよりも口数が少なかった。


窓の外を眺めたまま、ほとんど喋らない。

緊張しているのかもしれない。


でも、私には何も聞けなかった。

これは、蓮くんと神楽家の問題だ。


部外者の私が、口を出すところではない。

さすがに身の程はわきまえているつもりだ。


それでも。


何もできないのは、歯がゆかった。


そんなことを考えていると、蓮くんがふと口を開いた。


「……柚葉」

「なに?」


「そんなに気にしなくていい」

「え?」

「俺と神楽家の問題だ。大丈夫。お前が気に病むことじゃない」


「でも……」


私が言い返そうとすると、蓮くんは小さく笑った。


「それに、昨日言っただろ」

「何を?」

「柚葉がいてくれると心強いって」


そう言って、蓮くんは窓の外へ視線を向けた。


「だから、今はそれで十分だ」

「……そっか」


私は小さく頷いた。

それ以上、何かを言うことはできなかったけれど、少しだけ胸の奥が軽くなった。



少しすると、窓の外を見ていた蓮くんが私の方を見て言った。


「柚葉。見えてきたぞ」


私は蓮くんと窓の外を見る。


「……え」


そこには、大きな門と、その奥に広がる立派な屋敷があった。

門には、神楽家の家紋が刻まれている。


「ここが……神楽家」


私は思わず息を呑んだ。

馬車がゆっくりと門の前で止まる。


「行こう、柚葉」

「うん」


私は馬車から降り、蓮くんの隣に並んだ。


そして、神楽家の門をくぐった。

最近、急に秋らしくなってきましたね。

今日の明け方が寒すぎて、もう羽毛布団を出してしまいました(´∀`)

皆様も、体調にはお気をつけて〜!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。