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家紋

「ちょっといいかい?」


私たち生徒会メンバーが職員室を出ようとした時、九条先生に呼び止められた。


「昨日は戦ってくれて本当にありがとう。功労者にこんなことを言うのは気がひけるけど、君たちはこれ以上この事件に関わらないで欲しい」

「えっ!? なんで……!」

「柚葉」


反論しようとする私の肩をそっと蓮くんが掴んで止める。


「すまないね。でも、君たちはまだ子供だ。ここから先は、私たち大人の役目だよ。分かったかい?」


九条先生はまなじりを下げ、そう言った。

優しい口調だったが、それでも有無を言わさぬ雰囲気を感じた。


「わかり、ました……」


私たちは渋々そう答え、今度こそ職員室を出て、寮に向かった。

今日は昨日の事件の影響で、授業はないらしい。


あんな事件があった昨日の今日で、生徒たちを自由に行動させたくないのだろう。

今日はできるだけ寮内で過ごすようにと言われている。



寮の前につくと、水瀬くんたち三人はあくびを噛み殺しながら、自分たちの部屋へと戻っていった。

早朝に呼び出されたので、眠いのだろう。


私も女子寮へ戻ろうと、男子寮の玄関と向かい合う女子寮の玄関に手をかけた時。


「柚葉。……ちょっと待って」


職員室から寮までの間、配られた資料を見つめて何か考え込んでいた蓮くんが私を呼び止める。


「どうしたの?」


そう問いかけると、蓮くんはしばらく黙った後、私に資料を見せ、ある場所を指差した。

そこには、あの二人が使っていた霊具の写真があった。


「これ、これのここ、見て」


蓮くんは、直方体の霊具の側面の部分を指差す。


「これ……何かの印? いや、もしかして、家紋?」

「ああ。十中八九家紋だろうな」


「でも、どうして霊具に?」

「霊具には、作った人間を示す印が彫られていることがある。それに家紋をもとにしたものを使う人は多いんだ」

「へえ……」


蓮くんはそう言うと、もう一度資料の写真を見つめた。


「……それで、これを見てほしい」


蓮くんはカバンにつけていた、家紋の彫られた小さな飾りを外して私に見せた。


円の中に三日月を配し、その周囲を三つの流れるような曲線が取り囲んでいる。

細かな意匠ながら、どこか凛とした印象のある紋だった。


「これとこれ、似ていないか?」


私はもう一度、神楽家の家紋と霊具に彫られた印を見比べる。


両方とも、円の中に三日月があり、周囲に曲線が三本ある。

しかし、霊具には三日月の中に六芒星(ろくぼうせい)が三個描かれていた。


確かに、完全に一致とはいかないが、とても似ている。


「確かに……なら、神楽家が黒幕ってこと……?」


私は、少し震える声でそう聞く。


蓮くんが実家を嫌っていることは知っている。

だからこそ、もし本当に神楽家が関わっているのだとしたら――。


私はそっと蓮くんの顔を伺い見る。


「蓮くん……」

「まだ、分からない」


その声が、自分に言い聞かせるように言っている気がするのは、気のせいだろうか。


「確かにこれと俺の家の家紋は似ている。でも、家紋が似ている家はあるだろう。まだ、決まったわけではない」

「そうね」


確かに、家紋が似ている家はあるだろう。

それに、他の人が神楽家に罪をなすりつけるため、わざと使ったという説もある。


「とりあえず、先生に報告だけしとくか」

「うん」


私たちはもう一度職員室へ戻ることにした。


「……神楽家の家紋?」


資料と蓮くんの飾りを交互に見た九条先生の表情が変わる。

「確かに似ているな。だが、これだけでは神楽家が関わっているとは断定できない」

「はい」

「分かった。この件はこちらで預かろう。君たちはもう寮に戻りなさい」

「分かりました」


私たちは一緒に寮まで戻り、玄関で別れた。


「じゃあ、また後で」

「うん」


昨日はゆっくり眠れたから、眠気はない。

それでも朝っぱらから会議に出たせいか、少し疲れていた。


早く自室のふかふかのベッドにダイブしたい。

そんなことを考えながら、自室へ向かって廊下を歩いた。



自室の扉を開けると、私服姿の鈴ちゃんがベッドに寝転がりながら本を読んでいた。


「ただいま。鈴ちゃん」


声をかけると、鈴ちゃんは本から顔をあげ、私の方を見るなりぱっと笑った。


「柚葉ちゃん! 昨日神楽くんから柚葉ちゃんが倒れたって聞いて、すっごく心配したんだから! 大丈夫?」


そう言いながら鈴ちゃんはベッドから飛び降り、私に抱きつく。

それだけ心配をかけちゃったんだな……と少し反省しながら、鈴ちゃんの茶色い髪を撫でた。


「ごめんね。心配かけて」

「ううん。私たちを守るためなんでしょ? 詳しくは知らないけど、ありがとね。柚葉ちゃん」


お礼を言いながらも、詳しくは聞かない。鈴ちゃんのそんな優しさが、とても心に沁みた。



――二時間後


鈴ちゃんとトランプで遊んでいた時だった。


コンコン。


部屋の扉を叩く音がして、私は椅子から立ち上がった。

鈴ちゃんと一緒に扉を開ける。


扉の前にいたのは、女子寮の寮母さんだった。


「白石さん。神楽くんが、あなたに用があるって。今、女子寮の玄関前にいるわ」

「わ、かりました……」


蓮くん? なんの用だろ。

わざわざ女子寮に来て呼び出してもらうぐらいの重要なことがあったのかな?


戸惑いながら、私は玄関に向かった。



「蓮くん。どうしたの?」


玄関の横の壁に寄りかかっていた蓮くんが私の方を向く。


「何度も悪いな、柚葉。……神楽家から、手紙が来た」


そう言いながら、蓮くんは手に持った黒い封筒をひらひらと振った。

封筒には、赤で神楽家の家紋が描かれていた。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

たくさんの作品がある中で、この作品を見つけてくださったこと。そして、実際に読んでくださったことが、本当に嬉しいです。

一人でも読んでくださる方がいることが、執筆する励みになっています。

これからも柚葉たちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです!

それでは、また次回(^O^☆♪

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