戦いのあと
「ん……」
目を覚ますと、見慣れない真っ白な天井が目に飛び込んできた。
ここは、どこだろう?
私は、なんでここに――。
そこまで考えたところで、地下室の出来事を思い出す。
私、あの後倒れて……。
「あっ」
私は慌てて体を起こそうとした。
が。
「急に体を起こすな」
横から伸びてきた手に押し返され、私の頭はポスッと音を立てて枕に沈んだ。
「柚葉。大丈夫か?」
心配そうな顔をした蓮くんが私を覗き込む。
とても顔が近い。
イケメンの顔は寝起きに悪いから少し離れていただきたい。
私はそっと蓮くんを押し返す。
「大丈夫。ここは? 私、倒れた?」
「ああ。多分妖力切れだろう。無理するな。なかなか目を覚まさないから心配したんだぞ……」
そう言って蓮くんは私の手を握り、安堵のため息をついた。
「えっと、ごめんね? 心配かけて。で、私そんなに長い時間寝てた?」
「ああ。見てみろ」
蓮くんは部屋の窓の外を指差す。
そこには、真っ黒な空と淡いガス灯の光が広がっていた。
遠くに見える学園の寮は、どの部屋も明かりが消えている。
「もう、こんな時間?」
私たちが地下室に入ったのは確か15時ぐらいだった。
で、22時消灯の寮の電気が消えているということは……。
「今、22時ぐらいってこと?」
「ああ。正確には22時47分だ」
思ったより長い時間、気を失っていたらしい。
「ごめんね。疲れてると思うのにこんな時間まで付き合わせちゃって。ここから寮が見えるってことは、ここ、医務室?」
「ああ。大正解。医務室だ。別に俺としては柚葉の寝顔を堪能できたからよかったぞ。……水いるか?」
「うん、ありがと」
頷くと、蓮くんは椅子から立ち上がった。
トポトポと、水を注ぐ音が静かな医務室内に響く。
少しして、水の入ったグラスを持つ蓮くんが枕元に戻ってきた。
お礼を言ってグラスを受け取る。
冷たい水が乾いた喉を潤した。
「それで? 私が倒れた後どうなったの? あの男女は?」
水を飲みながらそう聞くと、蓮くんは私が倒れた後のことを話し始めた。
◇◇◇
「……というわけだ」
蓮くんの話を要約するとこうだ。
あの男は冬木臘月、女は月夜阿良という名前らしい。
二人はやはり、学園の地下にあった大妖の核を持ち出そうとしていたらしく、私たちが倒した後、駆けつけた先生たちによって捕らえられた。
黒い箱もすべて回収され、今は学園側が調査をしているらしい。
調査結果は明日には出るそうだ。
そして、大妖の核も無事だったと。
「……そう」
私はほっと息を吐く。
どうやら、最悪の事態は避けられたようだ。
「そういえば、結局なんであの二人は核を持ち出そうとしていたの?」
そう尋ねると、蓮くんは難しい顔をして言った。
「まだ話していないようだ。じきに話すとは思うが……」
「そっか」
まだ分からないことは多いけれど、ひとまず落ち着いたのだと、少し安心した。
すると、また睡魔が襲ってきた。
眠気で重くなる瞼をこすっていると、蓮くんはクスッと笑い、私の頭を軽くポンと撫でた。
「起きてよかった。疲れてるだろうからもう寝な。俺も戻るから。明日また来るよ」
もう行っちゃうのか……。
少し残念に思うが、こんな時間まで引き留めてしまっているのだ。
仕方ない。
「うん。ありがとう、蓮くん」
「ああ。じゃあ、また明日な」
蓮くんはそう言って、医務室の扉へ向かう。
けれど、扉の前でふと足を止めた。
「……柚葉」
「ん?」
「もう無茶するなよ」
「……分かってるわ」
蓮くんはそれだけ言うと、今度こそ医務室を出ていった。
パタン、と扉が閉まる。
急に、医務室が静かになった。
私はさっきまで蓮くんが座っていた椅子を見る。
……なんだろう。
いなくなると、少し寂しい。
「……変なの」
小さく呟いて、私は布団へ潜り込んだ。
今日は、本当に色々なことがあった。
明日の調査結果がどうなるのかも気になる。
でも今は、それよりも眠い。
私はゆっくりと目を閉じた。
「おやすみ……」
そう呟いて、今度こそ眠りについた。
読んでくださって、ありがとうございます!
最近、朝は涼しいのに昼はまだ暑くて、服装に困っています……。
それでは、また明日〜(*´꒳`*)




