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地下決戦3

――ドクン


またしても核が大きく明滅した。


「はぁ、はぁ」


さっきとは比べ物にならないくらいの強い力で胸の奥が引っ張られる。

それに耐えきれず、肩で息をしながら膝をついてしまう。


まるで、私の妖力を根こそぎ奪おうとしているみたいに。


流石にこのままではまずい。


決着がつく前に妖力切れで倒れてしまう。


「柚葉、大丈夫か?」

「平気よ……」


私はそう答えるが、声に力が入らない。


蓮くんは私の顔をじっと覗き込む。


「平気な顔には見えないけどな」


蓮くんは心配そうな顔をして、私の肩を支えた。


そんな私たちを今にも殺しそうな目で睨みながら、女は言った。


「無理しないほうがいいわよぉ。あなたの妖力は、少しずつ核に流れ込んでいるもの」

「……だったら」


私は手を握りしめた。


「止めればいいだけでしょう?」


そんな私を嘲笑うかのように女は口を歪める。


「あはは、はぁ? あんたにそんなことできる訳がないでしょう。やれるもんならやってみなさいよ」


いちいちセリフが癪に触る。

ここまできたら本当に相手を怒らせる天才だ。この女。


そんなことを思いながら、私は大妖の核に向けて手をかざす。


「言われなくても」


そう言い、私は目を瞑って自分の胸の奥に意識を集中させる。

防御は蓮くんがしてくれるはずだ。

だから、大丈夫だろう。


そこまで考えたところで、私はそんなに蓮くんのことを信用していたんだなぁと気付かされた。


とはいえ、今はそんなことを考えている場合ではない。


私は雑念を振り切り、もう一度集中する。


夜中に黒い小箱を探した時など、これまで私は霊力や妖力を辿ることを何回もしてきた。

しかし、それは私の体の外での話。


自分の体の中から探るなんてことはしたことがない。


それでも、今はこれしか方法がない……!


目を閉じ、さらに意識を深く沈めていく。


いつもなら、妖力は自分の意思に応えるように動く。

けれど今は、


「……っ」


何も分からない。


自分の体の中を流れる妖力が、どこにあるのかすら掴めない。

ただ、胸の奥にある何かが、少しずつ外へ引っ張られている。


「これ……?」


私は、その感覚を追う。

追えば追うほど、意識が遠のいていく。

まるで何かに拒まれているかのように。


「っ……」


妖力がまた吸われたのを感じた。


違う。


ただ吸われているだけじゃない。

私の妖力が、何かに繋がっている。


その瞬間、頭の中にさっきの女の言葉が蘇った。


『自分の妖力を、自在に練り上げて、変化させ、操る力』


「……操る」


私は小さく呟く。


そうだ。


私は今まで、妖力を外へ出すことばかり考えていた。


でも、妖力そのものを操るのなら。


「……流れを、変える」


幼い頃から、当たり前のように動かしていた力。


手を伸ばせば応えてくれる。


意識を向ければ、形を変える。


それを私は、今まで何の疑問も持たずに使っていた。


それなら、今までと同じようにすればいい。

何も難しいことを考える必要はない。


全てが努力で得た力ではない。

確かにそれは落ち込む。


でも、それがなんだと言うのだ。

全てがそうでなくても、残りは自分の努力だ。


それを全部「生まれ持ったもの」と言うのは違う。

それはあまりにも昔の自分に失礼だ。


だから――私は!


胸の奥へ意識を集中させる。

私の中を流れる妖力を、ひとつひとつ感じ取るように。


そして、見つけた。

私の妖力が、胸の奥から何かに引っ張られている。

その先にあるのは――大妖の核。


「……ここ」


私は、その流れに触れる。

けれど。


「っ……!」


触れた瞬間、強烈な力が私の妖力をさらに引きずり込もうとしてきた。


「負ける……もんか……!」


私は必死に妖力を練り上げる。


今まで何度もやってきたこと。


火に変えるときも、水に変えるときも。

妖力を動かすときは、いつだって自分の意思で形を変えてきた。


なら、これだって同じだ。


「私の妖力は……私のものよ!」


その瞬間。


胸の奥から核へと伸びていた妖力の流れが、ほんの少しだけ逸れた。


――ドクン


大妖の核が、大きく明滅する。


「あっ」


さっきまで私から吸い上げられていた妖力が、明らかに弱まっている。


「止まった……?」

「なっ……」


初めて、女の顔から笑みが消えた。

女だけではなく、男の顔にも動揺が見られる。


「どうして? 何をやったのよ! 白石柚葉!」

「そんな……馬鹿な。核との繋がりを操作した……?」


そんな男女を一瞥した蓮くんは、心配そうに私を見つめる。


「柚葉」

「ん?」

「今の、お前がやったのか?」


「分からない。でも」


私は自分の手を見る。


「もう、吸われてない。それだけは、分かる。あと……ちょっとコツ、掴んだかも」


「コツ?」


女は一瞬黙ったあと、口元を歪めた。


「そんなもの、偶然に決まってるでしょう? 一回成功したからって、いい気にならないことよ!」


そして再び霊具に手をかざし、大妖の核を起動させる。


――ドクンッ!


大妖の核が先ほどよりも強烈に明滅する。


「今度こそ、あなたの全てをもらってあげるわぁ!」


女はそう言い、ニヤリと笑う。


私はそれに目もくれず、自分の胸の奥に集中する。


胸の奥から伸びる、あの感覚。


さっきまでなら、引っ張られるままになっていた。

でも今は違う。


私には、その流れがはっきりと分かる。


「……そこね」


私はそう呟き、妖力の流れを掴み、グッと引き戻す。 


すると。


――バチッ


核が大きく明滅した。


「なっ!」


今度は私の妖力が核へ流れ込まない。

それどころか、核から伸びていた力そのものが弾き返される。


「そんな……!」


女が一歩後ずさる。


「……ふふっ」


それを見ながら、私はゆっくりと立ち上がる。

さっきまで膝をついていた足に、もう力が戻っている。


「どうやら……」


私は女をまっすぐ見据える。


「形勢逆転みたいね」

明日から平日ですね……。

休みってなんでこんなに早く終わるんでしょうか。

連休何やった?と振り返ると、何もしていない気がするのは私だけでしょうか……?

まあ、ぼちぼち頑張りましょう!

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