企み
「……全部、話してもらうから」
私は妖力を手のひらへ集め、男女に向かってかざした。
女と男の間には、黒い霊具がいくつも並べられている。
その奥――。
部屋の中央には、巨大な術式が描かれていた。
その中心に、何かが浮かんでいる。
淡い光を放つ、黒とも赤ともつかない球体。
それはまるで、呼吸するようにゆっくりと明滅していた。
「……あれは?」
私が視線を向けると、女が口元を吊り上げる。
「気になる?」
「……」
「これは――大妖の核よ」
あれが……!
さっき聞き耳を立てた時言っていたやつか!
女は、驚き固まってしまった私を嘲笑うかのように言った。
「余裕でいられるのは今のうちよ。まあ、どうでもいいけどね」
……どういうこと?
女が何を言っているか分からない。
しかし、警戒をより一層強めないといけないのは分かった。
私たちはそっと視線を交わし、頷きあう。
蓮くんの黒い瞳に見つめられると、なぜか安心する。
――けれど。
「……始めるぞ」
男がそう呟いた。
私はすぐに視線を男へ戻す。
男は、足元に置かれていた黒い霊具へ手を伸ばした。
「――臘月」
女が男へ声をかける。
「分かっている」
男は短く答えると、霊具へ霊力を流し込んだ。
次の瞬間。
黒い霊具が、眩い光を放った。
「っ……!」
思わず目を細める。
ただの霊具じゃない。
あの黒い小箱から感じたものと、よく似た力だ。
「蓮くん!」
私が叫ぶのと同時に、光がこちらへ向かって弾け飛んだ。
蓮くんが素早く私の前へ出る。
「――っ!」
蓮くんによって防御の術式が展開され、黒い光が弾かれる。
しかし、男は追撃してこなかった。
「……?」
私は眉をひそめる。
攻撃してきたはずなのに、男は私たちではなく、足元の霊具へ視線を向けている。
まるで――何かを確認しているみたいに。
「柚葉」
蓮くんの声が部屋の中に低く響く。
「うん」
私は警戒を解かないまま、男を見つめた。
何かがおかしい。
この二人は、私たちを倒すことだけが目的じゃない。
なら――いったい、何をしようとしている?
私は、2人が何を企んでいるのか探るように、じっと彼らを見つめる。
女はそんな私を一瞥し、ふっと笑った。
「……気づいた?」
「何に?」
「私たちが、あなたたちを倒そうとしていないことに」
「……!」
やっぱり――。
私の考えを読んでいたわけじゃない。
でも、今の言葉で確信した。
この二人には、私たちを倒すこととは別に目的がある。
「だったら、何が目的なの?」
私が問いかけても、女は答えない。
「ふふっ……」
女の笑みが、妙に不気味に感じられる。
何を考えているのか分からない。
だからこそ、私はさらに警戒を強めた。
「さあね」
その瞬間。
男が再び霊具へ霊力を流し込む。
「っ……!」
黒い霊具が一斉に光を放った。
「蓮くん!」
「分かってる!」
私たちは左右に飛び退く。
直後、さっきまで立っていた場所を黒い光が貫いた。
「くっ……!」
攻撃を避けながら、私は霊具を睨みつける。
そして――。
私は視線を、大妖の核へ向けた。
核は先ほどよりも強く明滅していた。
先ほどから、あの核が妙に気になる。
けれど、なぜ気になるのかは分からない。
ただ、何か見落としているような気がしてならなかった。
「……何をしようとしてるの?」
私が問いかけても、女は答えない。
ただ、楽しそうに笑っている。
「ふふっ……」
「……っ」
女のその表情の意味が分からない。
だからこそ、私はさらに警戒を強めた。
女はひとしきり笑った後、フッと表情を消した。
「茶番は終わりよ」
「……?」
「確かさっき、『何をしようとしているか』って聞いたわよねぇ?」
女が私を見つめる。
「教えてあげるわぁ」
「……」
「――すぐにね♡」
「……どういう意味?」
私はそう問うが、女は答えない。
代わりに、男へ視線を向けた。
「……臘月」
「……」
男は答えない。
ただ、黒い霊具へ手をかざした。
「……!」
攻撃が来ると身構え、私は横へ飛び退いた。
しかし、いつまで経っても黒い光は襲ってこない。
なぜだ?
そう疑問を浮かべたその瞬間。
胸の奥から、何かが引っ張られるような感覚がした。
「……え?」
何、今の……?
反射的に大妖の核へ視線を向ける。
先ほどまで淡く明滅していた核が、強い光を放っていた。
それを見た女の口元が、ゆっくりと吊り上がった。
「ふふっ……やっぱりね♡」
やっぱり?
私は女のその言葉に違和感を覚えながら、頭を高速で回転させる。
こんなに頭を使う相手は初めてだ。
さっき感じた胸の奥から何かが引っ張られるような感覚。
それと同時に強く明滅した大妖の核。
もしこの2つが対応しているとしたら?
そして、そのことを相手が知っているとしたら――。
「まさか……」
私は思わず息を呑む。
こいつらは、最初から――。
読んでくださり、ありがとうございました!
最近、時間が経つのが早すぎる……。
え、もう日曜日!?
1週間経つの早いね……。
しかも今日は、好きなドラマがアジア大会の影響でやってません……。
わかる人いるかもね!
では、また次回ー!




