学年別対抗戦2
しばらくすると、学年別対抗戦の開会式が始まった。
烏丸くんのハキハキとした放送に合わせて進行し、水瀬くんの分かりやすいルール説明、水野さんによる細かな諸注意へと続いていく。
よそ行きの顔でしっかり大役を果たしている3人の姿に、思わず「みんな偉いなぁ」と関心してしまう。
開会式が終わると、観戦席全体が、いよいよ始まる学年別対抗戦を前に、興奮に包まれる。
よし、頑張ろう!
そんな中、最初に行われるのは全員出場の個人戦。
4クラスそれぞれのトーナメントでクラス内1位を決め、そこから各クラスの1位同士で総当たり戦を行い、学年1位を決める。
さらに、各学年の優勝者が総当たり戦を行い、そこで全体優勝を決めるというルールだ。
まずは私たち1年生の試合から始まった。
――10分後
私の出番が来たため、私は横一列に並んだ4つの試合場のうち、「B組」と書かれた中央にある試合場へ向かった。
試合は1回に4戦、同時に行われる。
チーム戦もあるから、省エネでいかないと……!
私は気合を込めてギュッと両手を握り、審判からの試合開始の合図を待った。
「試合開始!」
審判の鋭い声が演習場に響き渡ると同時に、私は無詠唱で狐火を出す。
この一撃で仕留める……!
狙いを定めて狐火を放つと、ドーンという大きな音をたてて相手に飛んでいった。
対戦相手は狐火を防ごうと氷の壁を出して応戦したが、その壁は一瞬で破られてしまう。
狐火が相手の目の前まで迫り、もう防ぎようがなくなったところで、相手が「降参します!」と言ったため、狐火を消した。
「勝者、白石柚葉!」
審判がそう叫ぶと、観戦席が一気に湧いた。
「ふう。そんなに妖力を使わなかったし、よしとするか」
試合場を出て、大きく息を吐き出す。体の力を少し抜いてから、鈴ちゃんの待つ観戦席へと足を向けた。
「ただいま」
「あっ、柚葉ちゃん、お疲れ! 一瞬だったね」
私が自席に戻ると、出番を待っている鈴ちゃんが笑顔で出迎えてくれた。
「ありがと」と言いながら、ふとさっきまで立っていた試合場の隣――1年A組の試合が行われている試合場に目を向けると、ちょうど、蓮くんの試合が始まろうとしていた。
蓮くんはどのように戦うのだろうか。
私はワクワクしながら試合場を見つめる。
そして、演習場に審判の「試合開始!」という合図が響きわたるや否や、蓮くんの姿が消えた。
否。早すぎて消えたように見えたのだ。
蓮くんは一瞬で間合いを詰めると、対戦相手の喉元に氷で作られた短剣を突きつけ、重力を操って相手を動けなくする。
「まだ、やる?」
いい笑顔でそんなことを言いながら、さらに短剣を喉元に近づける。
この世にイケメンの黒い笑顔ほど怖いものはないと思ってしまう私がいた。
かわいそうに、蓮くんの対戦相手は腰が抜けたようにその場にへたり込んでしまう。
「いえ、こ、降参します!」
相手が恐怖で裏返った声でそう叫んだことで、勝敗が決した。
審判は、若干顔を引き攣らせながら「勝者、神楽蓮!」と叫んだ。
それを受け、観戦席が地面を震わすほどの大歓声に包まる。
相手に攻撃を出させる前に動き、降参させる。
少しやり方が汚い気がするが、あれだけの速さと術を同時に扱えるのは、蓮くんの圧倒的な霊力があってこそなのだろう。
蓮くんは歓声に応えることもなく静かに息を吐き出すと、ふと観戦席の私の方を見上げてきた。
目が合うと、彼はフッと満足そうに口元を緩めた。
な、なにその顔。カッコ良すぎるでしょ……!
周囲の女子生徒たちが「今の誰を見たの!?」「神楽くんが笑った……!」「神楽くんって、話しかけると返事はしてくれるけど笑ってくれることはなかったよね! 初めて見た!」とざわつき始め、私は心臓が跳ねるのを隠すようにそっぽを向いた。
すると、隣に座っている鈴ちゃんが私の顔を覗き込んで言った。
「今の微笑み、絶対柚葉ちゃんに向けてだったよね〜! よかったね!」
「ちょっ! そうとは決まってない、から……!」
頑張って鈴ちゃんに反論しながら、もう一度試合場を見る。
そこには、私を揶揄うように笑いながら見上げる蓮くんの姿があった。
「……っ!!」
イケメンの意地悪な笑い顔に、私はすっかり動揺してしまう。
鈴ちゃんはそんな私たちを生暖かい目で見つめ、「青春だねぇ」と呟いた。
いや、鈴ちゃんも同い年だよね?
そんなツッコミは私の赤くなった顔と一緒に、飲み込むしかなかった。
手で必死に顔を仰ぎながら火照りを冷まそうとしていると、次の試合の呼び出しがかかった。
「次は生徒会の烏丸くんと水瀬くんの試合場だね」
鈴ちゃんの声に視線を向けると、別の試合場で二人がそれぞれ立ち構えていた。
開始の合図が出ると同時に、烏丸くんは眼鏡の奥の瞳を冷徹に光らせ、寸分の狂いもない正確な術式で相手の霊力を封殺する。
対する水瀬くんは、豪快な攻撃で相手を圧倒し、見事な勝利を収めていた。
みんな、さすがだなぁ……。
頼もしい仲間の姿に感心していると、ふと、胸の奥でチリ……と小さな違和感が生じた。
……ん?
私は一度深呼吸をして嫌な予感でザワザワとする心を落ち着け、瞼を閉じて探知を行った。
すると、黒い小箱が発動したら分かるように細工をした土が反応していることを感じ取った。
……動き出したな。犯人が、術を起動させようとしてる……!
私は扇ぐ手を止め、念話で九条先生に土が反応した旨を伝える。
周囲の大歓声とは対照的に、私の胸の中には冷たい緊張感が走っていた。
読んでくださり、ありがとうございました!
「まだ、やる?」の場面を書いた瞬間、作者の脳内
\キャーーーーー!!(≧∀≦)/
ってなってました。
イケメンっていいね。エモすぎて滅❣️だね。
なんちって(笑)
では、また明日ー!




