↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
53/94

学園祭5


「この箱、どうしようか……?」


顎に手をあててそう問う蓮くんはイケメンで、

思案顔はとても絵になる。

絵画として残しておくべきじゃないだろうか、いや本当に。


そんなどうでもいいことを考えていた時。


「お待たせ。みんな、怪我はない?」


校舎の脇から九条先生が現れた。


そう。

2分前、水瀬くんと水野さんが校舎に張った結界を解除してくれている時に念話で九条先生を呼んでおいたのだ。


九条先生が蓮くんの見つめている穴のそばに寄り、覗き込んできた。


「それで? 何? それ」


そう問われた蓮くんは、みんなを代表してことの顛末を話し出した。


◇◇◇


「なるほど……妖魔を集める恐れのある黒い小箱、ね……」


九条先生は穴を見つめていた顔を上げると、ニヤリと笑って呟いた。


「それなら、あそこがあるじゃないか」

「あそこ?」


生徒会メンバー全員の声が揃った。


「実験小屋だよ」

「実験小屋?」


またしても、全員の声が揃うのであった。


◇◇◇


――「実験小屋とは?」と思いながら九条先生の後ろについて歩くこと2分。

裏庭から校舎内に入り、演習場に続く渡り廊下から演習場の脇に出たところにそれはあった。


そこは、思ったよりも小さく、古びたところだった。


九条先生が鍵を開けてくれたため、お礼を言いながら皆でおずおずと入る。


実験小屋の中は暗く、不気味だ。

夜中には絶対入りたくないなぁ……と思いながら、威力を弱める代わりに光を強めた狐火を出し、部屋の中を照らす。

すると、さっきまでは見えなかったよくわからない物や変な色をした液体などなど……が見えるようになり、とても怖い。


私が「狐火を出すんじゃなかった……」と後悔している時、蓮くんが「それで、なんでここなんですか?」と九条先生に聞いた。


九条先生は、鍵を近くにあった机に置くと、壁を指の裏でコンコンと叩いていった。


「逆に聞くよ。みんなはこの小屋の存在を知らなかったよね?」


その問いに、私たちは一斉に頷く。


「でもこの小屋は、いつも授業等でみんなが使う機会の多い演習場の傍にあるよね。

 なのに知らなかった。それはなぜか」


九条先生は、言葉をそこで一回止め、「誰かわかる人いる?」と聞いた。


「えっと……わかるかも、しれないです」


そう言って手を上げたのは水野さんだった。


それを見て、九条先生が「どうぞ」と水野さんを当てる。


「えっと、多分なんですけど、認識阻害? みたいなのがかかっているのではないでしょうか。だから、私たちは普段この小屋の存在に気づかず、魔物も気づかない。だから、先生は魔物が寄ってくるこの箱をここに置くのが最善だと判断したのではないでしょうか?」

「さすが水野さん、大正解。ここには学園創設時から強力な認識阻害と遮音の結界が二重に張られているんだ。だから、どれだけ妖魔を引き寄せる匂いを発していても、外には一切漏れない」


そう言いながら、九条先生は蓮くんから『黒い小箱』を受け取った。


そして、九条先生が指先から青い妖力を滑らせると、小箱の表面にお札のような光の帯が巻きつき、異様な妖気がスッと消えていく。

そのまま奥の頑丈な金庫に小箱を納め、重々しい音を立てて鍵をかけた。


「これでよし。明日の学年別対抗戦が終わるまでは、ここで厳重に保管しておこう。本格的な調査は、対抗戦が無事に終わってからだ」

「助かりました、九条先生」


蓮くんが胸を撫でおろし、丁寧にお辞儀をする。

水瀬くんも「これで安心して明日の試合に集中できますね」とほっとした表情を浮かべた。


「……ふふ、そうだな。明日は全校生徒が注目する晴れ舞台だ。君たちの活躍、楽しみにしているよ」


そう言ってニヤリと笑った九条先生の横顔。

先生は立ち去ろうと扉に手をかけたが――ふと足を止め、振り返った。


「……で? 君たちは本当に『これひとつだけ』で終わったと思っているのかい?」


先生の意地悪そう問いに、私たちは思わず顔を見合わせた。


「え……? 先生、それって……」

「この箱は、妖魔を集める性質がある。それは君たちもわかっているだろう? ということはこの箱を埋めた人がいる。悪意を持ってな。動機はわからないが、それだけの『悪意』があるならば、この箱がバレてしまうことぐらい想定していたはずだ。ということはこの箱は一つではないと考えた方が妥当だ。裏庭のような人目につかない場所なら、他にもいくらでもある。」


九条先生の言葉に、蓮くんがハッとしたように目を見開く。


「……確かに、一理あります。校舎の周りや中央広場、演習場の近くにも仕掛けられている可能性がある……!」

「そういうことだ。さて……どうする?」


九条先生は試すような視線を私たちに向けてくる。


「今夜、学園祭が終わった後に全員で捜索します! 

 他の小箱も全部見つけ出して、犯人の思い通りにはさせません!」


蓮くんが力強く宣言すると、九条先生は満足そうに口元を緩めた。


「よろしい。夜間の立ち入りは私が目をつぶってやろう。……ただし、深追いはするなよ?」


こうして九条先生の「公認」を得た私たちは、学園祭が終わった後の『夜の学園捜索作戦』を決行することになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。