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学園祭2

本日から1日1回投稿になります。

蓮くんが開会の挨拶を終え、ステージ裏に戻ってきたところで、警備の担当時間の最終確認をした。


「じゃあ、担当時間の5分前にはここに集合で。交代の5分前にもここに戻ってきて、次の担当へ引き継ぎって感じで。それじゃあ各自楽しみましょう! 解散!」


私の号令で最初の警備担当の水瀬くんと水野さんは校舎に、烏丸くんは友達を見つけてどこかに行った。


私は隣に立つ蓮くんを見上げる。

蓮くんの背は思ったよりも高く、隣に立つと見上げる形になる。


「それじゃあ、1時間半後に」

「おう。じゃあな」


蓮くんに手を振り、鈴ちゃんとの待ち合わせ場所である昇降口の前に急いだ。

私が警備の仕事に行く前まで一緒に回ろうという話になったのだ。


昇降口に着くと、たくさんの人がごったがえしていた。

どうにか人をかき分けて進むと、奥の方に見慣れた茶髪と、猫耳が見える。


「鈴ちゃん! お待たせ」


そう声をかけると、鈴ちゃんは私の方を振り向いてにっこりと笑った。


「柚葉ちゃん! お疲れ様〜」

「行こっか」

「うん。まずはどこ行く?」

「えっとね〜。まずは2年A組の『からくりキネマ館』に行かない? 妖力で動く影絵が見られるらしくて、すごく評判なんだって!」

「いいね! そのあと、私たちの出し物の、ハイカラ喫茶でお茶しようよ」


鈴ちゃんと並んで階段を上り、2階の廊下へと向かう。

普段は静かな校舎の廊下も、今日ばかりは各クラスが趣向を凝らした看板や装飾で彩られ、すれ違う生徒たちの楽しげな声で満ちあふれていた。


◇◇◇


2年A組の前に来た私たちは、『からくりキネマ館』と少し古びた木製の看板を見上げて、歓声を上げた。

学園祭が始まってからあまり時間が経っていないが、もう行列ができている。


教室から出てきた生徒たちは、「面白かったね〜!」と言って笑い合っていた。


それを見て、鈴ちゃんはワクワクとした表情で言う。


「楽しみだね」

「ね!」


その言葉に頷きながら、どんな感じなんだろう……と想像を膨らませた。



――10分後


「お待たせしました! どうぞ〜」


案内役の生徒に扉を開けてもらい教室に入る。


するとそこは遮光カーテンで完全に闇に包まれた、ひんやりとした空間だった。

部屋の隅に置かれたガス灯の橙色の明かりが、中央の小さな舞台と、そこに並べられたからくり人形をぼんやりと照らしている。


「わあ、すごい……。タイムスリップしたみたい」


ノイズ混じりの蓄音機の音楽が流れる中、私たちは赤い座布団に並んで座った。

やがて幕が上がると、からくり人形たちがカチャカチャと音を立てて動き出す。それと同時に、人形たちの背後に、まるで本物のような大蛇の幻影が霧のように現れた。


「きゃっ!」


鈴ちゃんが私の腕にしがみつく。

あやかしの生徒が使う幻影術と、精巧なからくり人形の動きが完全にシンクロしていて、まるで本当に目の前で妖魔との戦いが繰り広げられているかのような迫力だ。


「……あやかしと人間が協力すると、こんなにすごいものが作れるんだ」


薄暗い中、からくり人形を見つめながら、「やっぱり、あやかしと人間が協力しあって成り立っている常盤学園ってすごいな」と、改めてそう思った。



舞台の上で繰り広げられる大迫力の劇にすっかり魅入られていると、やがて物語はクライマックスを迎え、からくり人形たちが深々と頭を下げた。


客席から一斉に大きな拍手が湧き上がり、隣の鈴ちゃんも「すごかったね!」と目を輝かせている。


興奮が冷めきれないまま教室を出て、1年B組教室に向かうため、階段を降りる。


その時。


「っ……!?」


妖魔の気配に似た、薄暗くてじめっとする雰囲気を肌で感じた気がして、私はハッと周りを見渡す。

しかし、もう妖魔に似た気配を感じることはできなかった。


「柚葉ちゃん?」


鈴ちゃんが心配そうにこちらを見上げる。


「いや、なんでもないよ。大丈夫」


慌ててそう誤魔化したが、私の中で不安の渦が大きくなっていくのを感じた。


――1年B組の教室の前につき、扉を開けるとそこには、窓にはレースのカーテンを掛け、やわらかい陽光が差し込む落ち着いたカフェ風の空間が広がっていた。

木造教室の机に深い赤や緑の絨毯風クロスを敷き、アンティーク調のランプが温かく教室を照らしている。


「おお〜! 凄い! こんなふうになったんだ!」


ハイカラ喫茶をするというのは知っていたが、生徒会の方に行っていたため、準備は参加していない。


思ったよりも、私のクラスのコンセプトである『和風×洋風』を表現できていて、素直に凄いなぁと思う。



「いらっしゃいませ〜 って鈴ちゃん! 柚葉ちゃん! 来たんだ」


教室の風景に見惚れていると、矢絣(やがすり)模様の着物に紺の袴という衣装に身を包み、大きなリボンを髪に結んだクラスメイト――二宮愛梨(にのみやあいり)ちゃんが笑顔で駆け寄ってきた。


「凄い! 雰囲気出てるね」


そう言うと、愛梨ちゃんは照れくさそうに笑った。


「ありがと〜。喜んでもらえたなら何よりだよ! さあ、入って入って! 席こっち!」


そう言って愛梨ちゃんは、私たちを席に案内してくれた。


「メニューはこれね。決まったら呼んでください〜!」


メニューを机に置いて仕事に戻って行った愛梨ちゃんを見送り、鈴ちゃんとメニューを見る。


メニューは、冷やし飴、ハイカラ珈琲、ラムネ、色鮮やかなクリームソーダ、ハイカラなお重に入ったハイカラ和菓子……などなど、さまざまな種類があった。


「凄い! 種類豊富だ!」

「でしょ〜。頑張ったんだ」


嬉しそうにドヤ顔をする鈴ちゃんを撫でながら、何にしようかな……と考える。


「おすすめある?」

「えっとね〜もう結構お昼の時間だから……これとかどう?」


鈴ちゃんがそう言って指をさしたのは、「あずきバターのハイカラトースト」だ。


「美味しそう! じゃあそれと、特製ハイカラクリームソーダにしようかな」

「じゃあ、私は揚げパンと、ハイカラ珈琲(コーヒー)にしようかな」


鈴ちゃんはそう言い、給仕をしているクラスメイトに声をかけ、注文をしてくれた。


「はーい! 少々お待ちくださーい!」


クラスメイトの元気な声を見送りながら、私は先ほどの不穏な気配を頭の隅から追い払うように、鈴ちゃんに向き直った。

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