実技
「授業を始める前に、説明しておきたいことがある」
実技の先生がそう切り出し、演習場の雰囲気が固くなった。
「10月18日。つまり、学園祭2日目に何があるかは知っているな?……そう。学年別対抗戦だ。学年別対抗戦では、個人戦と、チーム戦の2種目がある。ルールは、個人戦は全員出場、チーム戦は2人1組で、出場してもしなくてもいい。出場する場合は10月1日までに届け出ること。どちらもトーナメント形式だ。何か質問はあるか?」
それを聞いて、周りがざわざわとしだす。
そんな中で、「はい!」と、勇んで手をあげた人がいた。
「どうぞ」
「えっと、チーム戦で組む人って、違うクラスの人でもいいんですか?」
「ああ。誰と組んでもいい」
「了解です!」
……ふーん。誰と組んでもいいんだ。
そう思った私は、ちらりとA組の列を見る。
「っ……!」
すると、バチっと蓮くんと目が合い、ニッと微笑まれた。
これは……組まされるパターンかもしれない。
若干覚悟しながら前に向き直す。
「それで、今回は実際の試合をするということに慣れてもらおう! という授業だ。まあ、今から急に、『模擬戦をしろ!』って言っても困るだろうから見本をしてもらおうと思ってな」
そこで意味深に言葉を切った先生は、ちらりと私の方を見た。
……あ。もしかして?
「学園説明会の時、妖魔に対処したという話は皆も知っているだろう? ということで、神楽、白石、前へ」
うん。だと思ったよ?
半ば諦めながら、立ち上がり、渋々前に出る。
「それでは今から、見本として神楽と白石に模擬戦をしてもらう……両者、演習場の真ん中へ」
そう言われた私は、ため息をつきながら演習場の真ん中に立ち、蓮くんと向かい合った。
そういえば、もう九尾の狐ということがバレているのだから、
本気で行っていいのか。
そう思い、向かいに立つ蓮くんにニヤリと笑いかける。
それを受け、蓮くんは「受けてたつよ」といった様子でニヤリと笑い返した。
「試合はじめ!」
その合図で、私たちは同時に攻撃を撃つ。
私は蓮くんが放った氷の槍を狐火で焼きながら、蓮くんが私の放った狐火を風で吹き飛ばしているのを見る。
やっぱり蓮くんとの手合わせは面白い。
口元を綻ばせながら無詠唱で氷の塊を出し、蓮くんに向けて思いっきり放つ。
同時に蓮くんも無詠唱で炎を放ち、演習場の真ん中で激しくぶつかった。
前、長期休み中に手合わせした時は蓮くんが氷、私が炎を出したが今回は逆だ。
それを思い出し、なんだかとても嬉しい気持ちになる。
激しい衝突音が演習場に響き渡り、熱風と冷気が混ざり合った風が、観覧席にいるクラスメイトたちの頬を打つ。
ぶつかり合う炎と氷はどんどん大きくなっていき、
演習場の石畳がミシミシと揺れた。
流石にそろそろまずいかな?
そう思った私は、炎の隙間からちらりと蓮くんを窺うと、蓮くんが頷いたのが見えた。
消すか。
私は手のひらを向け、詠唱する。
それと同時に蓮くんも手のひらを向けているのが見えた。
「『消滅せよ』!」
「『滅せよ』!」
すると、一瞬で今までここに炎と氷がぶつかっていたのが嘘かのように綺麗さっぱりなくなった。
うん。さすが私達だ。
次はどうしよっかなぁ?
そう考えていると、先生が慌てたように叫んだ。
「試合中断!」
いいところだったのに……!
残念に思いながら、渋々構えたばかりの手を下げた。
「このままだとここが壊れる。あと、二人とも霊力と妖力が多すぎていつまで経っても終わらない。だからストップ」
「……はい」
私たちは、渋々列に戻った。




