学園説明会7
ふと我に返ると、避難の案内をしていた水野さんや先生達、校舎の窓から見ていた参加者たちが、呆然と私と九本の尻尾を見つめているのを感じた。
「嘘……今のって、九尾の狐……?」
「白石さんって野狐なんじゃなかったの?」
「妖力を制限していたってこと?」
そんなざわめきが広がっていくのが分かる。
「大丈夫。柚葉」
蓮くんは私の手を掬い、握る。
「うん」
私はそう頷き、隣で優しく微笑む蓮くんの手に、ギュッと力を込め返した。
◇◇◇
《こちら白石。妖魔の制圧が完了した。被害はなし》
《烏丸了解。さすがだな》
《水瀬了解。お疲れ様! 神楽にも言っといて》
《了解。烏丸くんも、水野さんを応援に寄越してくれてありがとう。おかげで助かった》
《それはよかった。受付の方も、もう仕事がないから、そっちに向かうよ》
《じゃあ俺もいくわ》
《了解!》
念話を終えて息を吐くと、
現場に駆けつけてきた烏丸くんと水瀬くんの姿が見えた。
「白石さん、神楽、無事……って、うわ」
水瀬くんが私の姿を見るなり目を丸くする。烏丸くんも一瞬だけ驚きに目を見開いたが、すぐにいつもの落ち着いた表情に戻って口を開いた。
「なるほど。裏庭の凄まじい妖気は白石さんのものだったわけだ」
「白石さん、それ……九尾の尻尾だよね!? かっこいい!」
怖がるどころか目を輝かせる水瀬くんに、拍子抜けしてしまう。
さらに、避難誘導を終えて戻ってきた水野さんも、深く頷きながら言葉を続けた。
「……驚きましたが、白石さんが私たちや参加者の方々を守るために力を尽くしてくれたことは間違いありません。ありがとうございます」
生徒会のみんなの温かい言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。周囲の参加者や先生たちの視線はまだ困惑や驚きに満ちているけれど、もう隠すつもりも、引くつもりもなかった。
「みんな、ありがとう。
……隠していてごめんなさい。でも、これが本当の私です」
私がきっぱりと言うと、隣に立つ蓮くんが私の肩を引き寄せ、周囲に向かって堂々とした声を響かせた。
「そういうことだ。白石柚葉は生徒会の一員であり、この学園を守る大切な仲間だ。文句のある奴は俺が相手になるよ」
意地悪くニヤリと笑う『会長』の威圧感に、ヒソヒソと話していた周囲の生徒や先生たちも思わず口をつぐむ。
「……もう、大袈裟だよ蓮くん」
「いいだろ? 事実なんだから」
クスッと笑い合う私たちの横で、校舎の陰から様子を見ていた柚鈴が「お姉ちゃん、超カッコよかったよー!」とぶんぶんと手を振っているのが見えた。
こうして、色々あった学園説明会は無事に幕を閉じた。
私の正体は、あっという間に学園中に広まることになるだろう。
でも、不思議と怖くはなかった。




