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学園説明会5

――柚鈴が校舎に入ってからしばらくした頃


「……!」


近くに妖魔の気配がした。


「蓮くん!」

「分かってる。数は?」


そう尋ねられ、私はもう一度妖魔の気配に集中する。


「50ちょっと……かな?」

「思ったより多いな。強さは?」

「雑魚!」


私はグッと親指を立てて調子よく答える。


「襲ってくるまで1分ってところかな」

「了解!」


1分か……妖魔が来る前に念話で烏丸くんと水瀬くんに報告しておこう。


《こちら白石。後1分程度で妖魔の群れが来る。こっちで食い止めるけど、一応周辺を警戒して》

《烏丸了解》

《水瀬了解。応援は?》

《こっちで対処できるからとりあえずは要らない。進展があったらまた報告する》

《了解!》


元気な水瀬くんの返事を聞いて「ふふっ」と笑い、妖魔が来るであろう方向をキッと睨んだ。


――1分後


「来るよ」

「おう。結構時間きっかりだな。流石だ!」


そう蓮くんが叫ぶと同時。


「わあ」


ゴオッと激しい地鳴りのような音を立てて、妖魔の口から放たれた巨焔が頭上の空を赤く染め上げた。視界一面を覆い尽くす熱気が、肌を焦がす勢いで押し寄せてくる。


「へえ……すごいね」


圧倒的な威圧感を前にしながらも、私は冷静に腕を突き出した。

詠唱を省き、一瞬で放った術が目前に巨大な氷晶の壁を構築する。直後、猛火と氷の壁がぶつかり合い、シュアアアと激しい水蒸気が爆ぜた。


死角をなくすため、私は素早く蓮くんの背中にピタリと背中を預ける。


「流石だね。柚葉」

「蓮くんこそ」


私たちは笑いながら妖魔を一気に倒していく。

ここは学園だから本気は出せないが、戦うのは楽しい。

やっぱり実戦に限る。



夢中で撃っていると、とうとう最後の一匹になったようだ。

一番図体が大きいから、群れのボスなのだろう。


図体が大きいといっても、強さはそうでもない。


「いける?」

「うん」


私たちは短く視線を交わし、力強く頷き合った。

手のひらに意識を集中させると、ゆらりと蒼い狐火が揺らめき立つ。同時に、隣の蓮くんの手元には、陽光を反射して鋭く輝く無数の氷の槍が瞬時に生成されていく。


「いくよ!」

「「せーの!!」」


息の合った掛け声と共に、二つの術を解き放つ。

空を切り裂く氷の槍を追いかけるように、私の解き放った蒼炎が渦を巻いて追従し、ひとつの巨大な技となって妖魔へ一直線に突き刺さった。轟音(ごうおん)が響き渡り、眩い光の奔流(ほんりゅう)が周囲を包み込む。


「おーー! すごい!」

「ふう……終わったな」


「おーー!すごい!」

「終わったな」


私は、「うん」と頷き、念話で《退治終了。引き続き警戒を》と送った。


妖魔は、私たちの息のあった攻撃で全て対峙できた。


――そう思ったのだが。



「っ! 柚葉! 上!」


妖魔の退治が終わったと一息ついた私だが、蓮くんの緊迫した声でハッと顔をあげた。


そこには、


「空が……割れてる?」


そんな訳はないのだが、思わずそう呟いてしまう。


「割れているというか……穴が空いている? みたいな……」


そう蓮くんが呟いた矢先。


「危ない!」


そらに開いた穴から、大きな妖魔が出てきて、攻撃をしてきた。


咄嗟に氷の盾を出すが、粉々に砕かれてしまう。

無詠唱の威力ではダメなようだ。


「……もしかして、凄く強い?」

「ああ……さっきのは囮。と言うわけか。俺たちが妖魔の群れを退治し終わり妖力や霊力が少なくなってきたところで襲う……という算段だろう」

「意地が悪い……とりあえず念話をつなぐから、私の分の防御までお願い」

「はいはい」



《こちら白石。裏庭で妖魔発生》

《こちら烏丸。またか? 数は?》

《一体です。でも、さっきの比ではないくらい強いです……!》

《こちら水瀬。応援は?》

《お願いします!》

《烏丸了解。水野を向かわせる》

《白石了解!ありがとうございます!》



「蓮くん。応援に水野さんが来てくれるって」

「了解!……それじゃあ、『柚葉』って呼べなくなるね」

「今言うことじゃないでしょ!」


どこまでも私を揶揄うような発言をする蓮くんに突っ込みながら、その勢いで攻撃を放つ。


綺麗に妖魔に当たったかのように見えたが、妖魔に目立った外傷は与えられていない。


「……攻撃は当たっているはず、だよね?」

「ああ。だが、ダメージが与えられていないな」

「蓮くんは攻撃当てられた?」

「ああ、一発だけ。少ししか傷がつかなかったが、思いっきり霊力を圧縮して撃ったらいけた」


『圧縮』か……。

つまり密度を高めるということ。


「なるほど」


そう呟いた私は、妖力をできるだけ圧縮して放った。

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