初対面 ˜”*°• 神楽 蓮 side•°*”˜
もう少し、もう少しで解析が終わる……。
もう少しで白石柚葉の妖力の違和感を確かめられると思った、その時だった。
観察していた白石柚葉の体が脚立の上でぐらっと傾いた。
危ない!
考えるより先に体が動いた。
「神楽?」
水瀬の声が耳の端で聞こえる。
「ごめん!」
水瀬に謝りながら俺は白石柚葉の脚立から落ちていく体を受け止めるべく、席を勢いよく立ち走り出した。
ギリギリセーフ。キャッチできてよかった。あやかしだから大怪我はしないだろうが、それでもまったく無事では済まないだろう。本当にキャッチできてよかった
ホッと息を吐きながら腕の中の白石柚葉をみる。
間近でみる彼女は思ったよりも小さく、可愛かった。
あっ、抱っこしてしまった……それにしても軽いな。っというか咄嗟だったが、流石にこの状況はまずい
「ふひゃっ?!」
固く閉ざしていた目を開けた白石柚葉は俺の顔に驚いたのか、みるみる顔を赤くしながら変な声を上げた。
声かわよ……。
そんなことを思いながら、彼女を降ろし、間近で彼女を見て、抱きしめてしまったことに対する照れを隠しながら俺は咄嗟に口走る。
「っあぶねーな。あんた、自分の持てる重さすらわかんないのかよ。貸せ」
俺はこんなことしか言えないのかよ……。
自分が口走ったことをすぐ後悔しながら、彼女から本を奪い取って、赤くなった顔を覚ますために思考に暮れることにした。
さっき受け止めたことで確信した。あの妖力の違和感がわかった。彼女は……妖力を制限している。莫大な妖力を。
しかも彼女の正体は九尾の狐だ。つまり八本も尻尾を隠していることになる。八本も尻尾を隠すなんて尋常じゃない。
その分体力も妖力も持ってかれるはずだ。あの量の妖力を持つものだけが為せる技だな。
あっぱれだ。
でも、どうりで脚立から落ちるわけだ。集中力も持ってかれるのだろう。彼女が怪我をしないように、俺が見ておかないと。
そんなことを思いながら白石柚葉の後ろを黙々と歩く。
「あの……ここです。運んで下さって、ありがとうございます」
どうやらついたようだ。
この甘美な時間が終わることを少し残念に思いながら、机に本を置いた。
「もう脚立から落ちないようにな」
「落ちません!」
「本当か?まあいい、取れなそうだったら俺を呼べ。そこにいるから、じゃあな」
俺は、彼女に背を向けて水瀬の待つ机に戻ろうとする。
その時
「待って」
白石柚葉が俺の手を掴む。
「本当にありがとうございました。あの、名前を、聞いても?あっ私は一年B組の白石柚葉っていいます」
こいつ……俺の名前知らないのかよ。ちょっと悲しい
「神楽蓮だ。じゃあな」
今度こそ俺は彼女に背を向けて歩き出す。
白石柚葉の叫び声が図書館内に響き渡るのは数秒後の話だった。




