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引き継ぎ2

「という感じで、基本的には書類の確認と行事の統括ね。こんな感じだけど、大丈夫そう?」


飛鳥先輩は、そう言って私と蓮くんを見た。


「はい。大丈夫です」

「俺も大丈夫です」


めんどくさいことが多そうだけど、まあできるかなって感じの仕事量だ。


「よし。んー、他のところまだ終わってないね。早く終わっちゃた」


飛鳥先輩は、他のペアを見てそう言い、少し考えた後「良いことを思いついた」とでも言いたげな表情でこちらを見た。


「じゃあ他のペアの引き継ぎが終わるまで親睦を深めるってことでお話しない?」

「あ、はい」


私の返事を聞き、飛鳥先輩は満足した様に頷き言った。


「うんうん、それじゃあ質問! ねえ神楽くん。さっきの「今は」ってどういうことかな?」

「さあ? どういうことでしょう?」


蓮くんは飄々とした態度を崩そうとしない。


「えー。つれないなぁ。じゃあ矛先を変えよっと。白石ちゃん。ぶっちゃけ神楽くんのこと、どう思ってるの?」

「へ?!」


いきなり矛先がこっちにきた〜!? 「どう思ってるの」……なんて分からないよう……!


「えっと、その……」

「うんうん。このお姉様に話てみ?」


あわあわしながら赤くなっている私を揶揄(からか)うように飛鳥先輩が肩を組んで悪ふざけをしてくる。


どう答えよう…… とあわあわしていると、思わぬ救世主が現れた。


「飛鳥。そのへんにしとけ。白石さんは困ってる」

「玲くん! 引き継ぎ終わったの?」

「ああ」

「そっか〜」


なんか……心なしか飛鳥先輩の目がハートになっている気が……。


そう思い、チラリと蓮くんを見ると、深く頷かれた。


やっぱり?


私は忍び足で飛鳥先輩に近づいて先輩の耳にそっと囁く。


「桜庭先輩。神城先輩と付き合ってるんですか?」

「なっ」


さっきまでわたしたちを揶揄っていたとは思えないほど一瞬で飛鳥先輩の顔が朱に染まる。


わぁ……!


恋する乙女って可愛いなぁ……と思った柚葉であった。


◇◇◇


引き継ぎが無事に終わり、私たちは先輩たちや他のメンバーに挨拶をして生徒会室を後にした。


校舎を出ると、空は綺麗で少し切ない茜色に染まっている。

隣を歩く蓮くんとの影が、長く伸びて重なっていた。


……ダメだ、さっきから全然集中できない。


脳裏にこびりついて離れないのは、生徒会室での蓮くんの言葉だ。


「『今は』付き合ってないですよ?」


「今は」って……どういうこと? まるで将来は付き合うみたいじゃない……!


考えれば考えるほど顔が熱くなっていく。隣を歩く蓮くんは、何事もなかったかのようにすました顔で前を見つめている。その様がなんだか無性に悔しい。


「……ねえ、蓮くん」

「ん? どうした?」


意を決して歩みを止めると、少し先を行っていた蓮くんも立ち止まり、キョトンとして振り返った。


「さっきの、飛鳥先輩に言ったやつ……『今は付き合ってない』って、どういう意味?」


自分で聞いておきながら、鼓動がうるさいくらいに高鳴る。

蓮くんは一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐにいつもの不敵で優しい笑みを浮かべた。


そして、ゆっくりと私の元へ歩み寄ると、覗き込むように視線を合わせてくる。


「意味? 言葉通りの意味だけど」

「なっ……!」

「俺は本気だから。柚葉がその気になってくれるのを待ってるだけ」


耳元で低く囁かれた言葉に、私の思考は完全にフリーズした。


「〜〜〜っ! もう、バカ!」


限界を迎えた私は、真っ赤になった顔を隠すように背を向け、逃げるように寮へ向かって走り出したのだった。

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