引き継ぎ
――生徒会室に向かう途中
「そういえば柚葉」
「何?」
「さっき教室の前でため息ついてただろ?どうしたんだ?」
「ああ……いや、なんでもないよ……蓮くんってモテるんだなって、思っただけ」
そういいながら、「ああ、可愛げないな……」と思う。
「ああ、あれか。あの女子たちは勝手に寄ってきてるだけ。それに、俺が気にしているのは柚葉だけだから」
「ひゃっ……!?」
え? は? こいつ、さり気なくなんて言った?
心の中で「俺が気にしているのは柚葉だけ」という言葉が連呼する。
意味を理解していくにつれ、どんどん自分の頬が熱を帯びていく。
「あ、ついた」
私が頬を真っ赤にしながら目を白黒させているうちに生徒会室についたようだ。
「柚葉。開けるよ」
「あ、はい!」
いかんいかん。ちゃんとしないと。
深呼吸をして蓮くんの隣に立ち、生徒会室の戸をノックした。
◇◇◇
「それじゃあ全員集まったところで、始めますか」
生徒会室に新生徒会メンバー五人と、前の生徒会メンバーの先輩方が集まったところで九条先生の弁を受け、生徒会の引き継ぎが始まった。
前生徒会メンバーの真ん中に立っていた女子の先輩が話し始める。
「知っていると思うけど、生徒会長の桜庭飛鳥だよ! あっ、もう前生徒会長かな? まあそこはともかく、今日はよろしくね!」
「「よろしくお願いします」」
「一応全員自己紹介しとこうか」
「前生徒会副会長の橘花葉月です。よろしく」
そう言って小さく微笑むのは、眼鏡の奥の切れ長な瞳が知性を感じさせる綺麗な女性だ。
続いて、その隣に立つ背の高い男子生徒が腕を組む。
「前生徒会書記の神城玲だ。よろしく」
低く落ち着いた声で短く告げると、彼は軽く会釈をする。
その横から、小柄で可愛らしい雰囲気の女子生徒が身を乗り出した。
「岩村華です。前生徒会で会計をしていました。よろしくね」
ふわふわとした笑顔で場を和ませてくれる彼女に続き、最後は少し人見知りそうな男子生徒が控えめに口を開いた。
「前生徒会庶務の春野天です。よろしく」
その後は私たち新生徒会メンバーが自己紹介をしていった。
「さてさて。自己紹介も終わったところで、引き継ぎというものをまあ進めていきたいと思うんだけど、その前に一ついい?」
「?」
不思議そうに見ると、飛鳥先輩はニヤニヤしながら言った。
「生徒会長のお2人さん。凄い距離近いけど、あなたたち付き合ってるの?」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声を出し、慌てて蓮くんから遠ざかろうとする。
が、蓮くんに腕を掴まれてそれは叶わなかった。
なんでよ……。
「『今は』付き合ってないですよ?」
蓮くんは、飄々とした態度でそんなことをブチかます。
『今は』って何?! 『今は』って!
とりあえず蓮くんを睨んでおく。
そうこうしていると、
「ゴホン」
生徒会室に九条先生の咳払いが響いた。
「桜庭さん? 進めてもらってもいいかな?」
「あ、はい! すみません」
飛鳥先輩は九条先生に慌てて謝り、「気を取り直して」と言った。
「まず基本事項の確認からですね。まず任期について。任期としては、明日9月1日から来年の8月31日までの一年間になります」
そこまで飛鳥先輩が説明したところで、水瀬くんが挙手をする。
「質問いいですか?」
「どうぞ」
「関係ないかもしれないんですけど、なぜ1年の私たちが生徒会を担うのでしょうか?」
「ああ、それは、2、3年生になると就職活動などで忙しくなるからですよ」
「なるほど。ありがとうございます」
「OK?それじゃあ説明を続けるね。えっと、生徒会の主な仕事は生徒や教師からの要望書等の確認、学園の行事、集会等の運営および警備だよ。特に学園の行事だと、学園説明会、学園祭、体育祭があるね。それぞれの行事によって役割もしないといけないことも変わるから、困ったことがあったらなんでも聞いてくれて構わないから」
「「はい。ありがとうございます」」
「うん、じゃあとりあえず説明はこんなもんかな。わからないところある?」
そう聞かれて、私たちは一斉に首を横に振る。
「よし。じゃあ今からはそれぞれの役職ごとの細かい仕事内容をそれぞれ同じ役職だった先輩に教えてもらう時間にしよっか」
飛鳥先輩がそういい、私と蓮くんは飛鳥先輩と橘花先輩に、烏丸くんは神城先輩に、水野さんは岩村先輩に、水瀬くんは春野先輩にそれぞれ細かな仕事を教わることになった。
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