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妖力暴走2

――1時間後


「神楽様。そろそろ行きますか」

「はい」


舞花さんに声をかけられた俺は舞花さんと一緒に地下の練習場に向かった。


練習場の前に着くと、舞花さんは「ちょっと待ってください」と言って翡翠の瞳を伏せ、集中した。

どうやら念話で柚葉の妖力暴走が終わったか確認しているようだ。


「うん、大丈夫です。行きましょう。開けますよ」

「はい」


頷いた俺を横目で見ながら、舞花は懐から鍵を取り出し練習場の重い扉を開けた。


「柚葉!」


練習場の中央には、荒い息をする柚葉が倒れていた。



「神楽様。柚葉様の部屋まで柚葉様をお願いできますか?」

「もちろんです。……ごめんね、柚葉。ちょっと運ぶよ」


そう声をかけると、柚葉は熱で朦朧としているのかポーッとした瞳でこちらを見上げ一度だけコクンと頷いた。

それを見た俺は、そっと柚葉の背中と膝の裏に手を回し、持ち上げる。


柚葉を抱き上げるのは前、柚葉が学園の図書室で脚立から落ちた時にキャッチした以来だ。


やっぱり、軽いな……。


あの時は余裕がなくて必死だったが、きちんと抱き上げると軽さがより際立つ。


そんなことを思いながら俺は廊下を歩き、柚葉の部屋の前まで来た。


舞花さんに扉を開けてもらい、柚葉の部屋に入る。


前来た時にも思ったが、柚葉の部屋って布団が置けるところなくない?


いつもどうやって寝ているのかと疑問に思いながら部屋をキョロキョロ見ていると、見かねた舞花さんに声をかけられた。


「神楽様。寝室はこっちです」

「え?」


疑問に思いながら舞花さんの方を見ると、そこには柚葉の部屋の中に、襖があった。


そういう仕組みだったのか……。


どうりで柚葉の部屋の横に何もない空間があると思った。

一見柚葉の部屋のようだったが入った時にはそこまでの広さがなかったから不思議に思っていた。

思わぬところで知ることになった。


そんなことを思いながら、舞花さんがしいてくれた布団に柚葉を横たわらせる。


「神楽様。私、華蓮様に報告に行ってきますね。その間、柚葉様をお願いします!」

柚葉の枕元に水と着替えを置いた舞花はそう言って柚葉の寝室を後にした。


「柚葉、大丈夫?水いる?」

「うん……ありがと……」


俺はコップを出し、水差しからから水を注いで柚葉に手渡す。


「あっ」


しかし、手が震えて柚葉がコップを落としそうになった。


危ない!


俺は咄嗟に霊力を使って、落ちそうになったコップをキャッチした。


「ごめん……」

「大丈夫。口、開いて。コップに手、添えられる?」


そう言って、今度はコップを手渡すのではなく、手を添えて柚葉に水を飲ませた。


水差しを置いて、柚葉の手にふと視線を落とす。


すると、柚葉が何か持っているのが見えた。


「柚葉。何持ってるの?」

「あっ」


柚葉はそっと手を開く。


「鍵?」

「うん。訓練場の」

「そっか。無くすとまずいから柚葉の机の上に置いとくね」


そう言って俺は立ち上がり、隣の柚葉の部屋に行こうとした。

しかし。


「ん?」


柚葉が俺の着物の袖を掴んだ。


「どうした?」

「えっと、その……」


柚葉は、キョロキョロと視線を惑わせていた。


寂しい……のかな?


そう思った俺は、柚葉の枕元に座り直し、柚葉の手を握った。


「大丈夫。ずっとそばにいるから。今は安心して、眠りな」


俺がそういうと、柚葉はほっとしたように微笑み、瞼を閉じた。


可愛いな……。


俺は、柚葉の寝顔を見つめる。

いつもは凛としておとなびた表情を浮かべている柚葉だが、こうしてみると年相応に見える。

俺はそっと手を離し、柚葉の枕元に置いた氷を替える。

そしてまた、手を握った。


――繋がれた手は、柚葉の熱が下がるまで、離されることはなかった。

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