手合わせ2
「お母様……えっと、ありがとうございます。で……どうしてここに?」
「そんなに妖力と霊力全開にして思いっきり戦っとったら、誰かて気づくわぁ。お屋敷もちょこっと大騒ぎやったんやで」
そう言って笑う。
そして、練習場をぐるっと見ていった。
「それにしても派手にやってくれましたなぁ」
「す、すみません。壊してしまって……」
ちょっと夢中になりすぎたかも……壁凹んでる……。
少し反省しながら縮こまる。
そんな私を見て、母はくすくすと笑って言った。
「大丈夫どすえ。それにここは元々壊すためにあるようなものどすさかい。直そう思たらすぐ妖力で直せますえ。気にせんでよろしくてよ」
「「ありがとうございます!」」
「それに……」
そう言って母は、蓮くんの方を見て言った。
「神楽さんが柚葉を気分転換に連れ出してくれはったんやろ? おおきにね」
「そんな……でも、このようにこのお借りした場所を壊してしまい、すみませんでした……」
「気にせんでよろしゅうて。壊してなんぼな場所なんやかさい。ここはすぐ直しておきますけえ、明日からも使って構わへんえ。気にせんと遠慮のうおくれやす」
「「ありがとうございます!」」
声を揃えて頭を下げ、私たちは着替えるべく練習場を後にした。
それを見送る母が微笑ましそうな目で見ていたのは気にしないでおこう。
◇◇◇
――その日の夕飯
「ごちそうさまでした」
ご飯を食べ終わった私は、自室に戻ろうと席を立つ。
宿題やんなきゃな。
長期休暇は楽しい反面、たくさんの宿題がつきものだ。
それに、早めに終わらせた方が後遊べるもんね。
そう思いながら一礼して食堂を出ようと扉に手をかけた時。
「柚葉お姉様」
「どうしたの?」
柚鈴が声をかけてきた。
「後でお姉様の部屋に行ってもいいですか?渡したいものがあるの」
「?わかったわ」
よくわからなかったが生返事をしておく。
渡したいもの?なんだろ?
そう思いながら、溜まっている長期休暇の宿題を片付けるべく今度こそ食堂を後にした。
◇◇◇
――30分後
集中して宿題に取り組んでいた私は自室の扉がノックされる音で顔を上げた。
「柚鈴です。今、いいですか?」
「今開けるわ」
私が襖を開けると、そこには大きな風呂敷を抱えた柚鈴が立っていた。
「どうしたの?その風呂敷。とりあえず座って」
私はそう言って柚鈴と向かい合って座った。
「柚葉お姉様。明日、夏祭りがありますよね」
「あーー、確かそういうのもあったわね」
「『そうゆうのもあったわね』じゃなくて! まあ、昔から柚葉お姉様は祭りとか興味なさげでしたもんね。私たちが誘ってもあまり一緒に行ってくださらなかったし……」
「めんどくさくてね。で? 夏祭りがどうしたの?」
「えっと、柚葉お姉様には今年こそ夏祭りに行っていただこうと思います!」
柚鈴はそう宣言する。
「え〜、なんでよ急に」
「いいですか? 男というのはいつもと違う格好や雰囲気にドキッとくるものなんです」
「それはなんとなくわかるわよ? でもそれがなんで夏祭りにつながるのよ……」
「いつになく察しが悪いですねぇ、柚葉お姉様。だから、柚葉お姉様は明日、神楽さん? と夏祭りに行けと言っているのです。いつもと違う可愛い浴衣を着て祭りを回ったら男なんてイチコロですよ!」
そう言って柚鈴はグッと親指を立てる。
「いや、グッじゃないのよ……それに蓮くんのこと堕としたいとかそういうのじゃないから!」
「ふーん? そうなんですか? まあいいですけど、それはそうとして『可愛い』ぐらいは言ってもらいたいんじゃないですか?」
「それはそうだけど……でも、可愛い浴衣とか持ってないし……。これまで夏祭りはあんまり行ってないし……」
「ふっふっふ。ということでこの柚鈴様のお出ましですよ。やっと本題ですねぇ! ということで、これをみてください!」
柚鈴は持ってきた風呂敷の結び目を解く。
そこにあったのは、
「これは……浴衣?」
可愛い黄色の浴衣だった。
「どうしたの?これ」
「私からのささやかなプレゼントです。気に入ってくれたら嬉しいんですけど……」
柚鈴は、モジモジしながらそう言って上目遣いでじっと私を見つめる。
一緒に尻尾と耳も揺れていてとても可愛い。
「可愛い〜! ありがとう!」
そう言って柚鈴を抱きしめる。
「苦しいです。柚葉お姉様。……気に入ってくれたなら、何より、です」
そう言って照れたようにギュッと私を抱きしめ返した。
「少しは、神楽さんと夏祭り、行く気になりましたか?」
「正直祭りはめんどくさいけど……柚鈴がプレゼントしてくれた浴衣着たいから……行くわ」
「よかったです!じゃあ、頑張って誘ってみてくださいね〜!それでは!」
そう言って柚鈴は元気よく私の部屋を出て行った。
「蓮くんと夏祭り、か……どうやって誘おう……」
私は少し悶々としながら眠りについたのだった。




