白石邸3
「柚鈴、柚乃。そのへんにしておきなはれ。……柚葉。大事なお話しがありますわ。ついてきとおくれやす」
みかねた母がそう声をかける。
「わかりました。お母様。……蓮くん、ちょっといってくるね」
「おう」
連くんにそう声をかけ、私は母を追って部屋を出た。
◇◇◇
「どうかしましたか? お母様」
母の部屋で対座し、私はそう声をかける。
「柚葉。柚葉が学園を卒業したら、当主の座はあんたに譲りますえ」
そう母が切り出す。
「どう、して。代交代はもっと先の話ではなかったのですか?」
母は少し悩んでから口を開けた。
「うちはもう、長うは生きられへんえ」
「ええええっ!? でも、そんなこと、一度も……」
「ごめんなぁ、柚葉。せやけどな、これには理由があるのどすえ。これまで白石家は、妖狐同士の血の近いあやかしが添い遂げて子孫を繋いできましたえ。せやから、血が濃くなりすぎて長うは生きられへんのどす。まあ、最初から分かってたことどすけどな」
私はもう、驚きで声を出すことができなかった。
そんな私を優しい眼差しで見ながら、母は続ける。
「そのツキが回ってきたいうことどす。せやけど、安心して。うちはもうこれ以上血を濃うせえへんように雅人と添い遂げたさかい、あんたらは長う生きられるはずどすえ。あ、せやけど、雅人とはちゃんと愛し合って添い遂げたんやで。ただそれが、妖狐ではあらへんかったいうだけどす」
「お母様……」
「柚葉。もしほんまに心から愛する人が現れたら……その時は迷わんと進むのどすえ。母様はずっと見守ってますさかい」
母は優しく諭すように言った。
私の視界が滲んでいく。
「さっきは神楽さんに試すようなことを言いましたけど、あんなに他人と関わるのを嫌がってた柚葉が連れてきたお子なんやもの。よほどのことがあらへん限り、追い出したりせえへんさかい安心しておくれやす」
母は茶目っ気たっぷりにそう言う。
「あはは、あれ……? どうしてだろ、なんか、涙が……」
私は少し笑った後、大粒の涙が頬をつたるのを感じた。
「おいでなさい、柚葉」
母は笑いながら私に近づくよう促す。
私は頷き、母に抱きつきながらすすり泣く。
私が落ち着くまで母は私の背中をあやすように撫でてくれた。
◇◇◇
泣き止んだ私は母の部屋から自分の部屋に戻ってきた。
久しぶりにあんなに泣いたな……。
そう思いながら、布団に寝転がる。
そしていつの間にか寝落ちてしまった。




