57話:雪山で…②
崖上で待ち受けると予想していた一向だが、シルバのド派手な魔法によりウルフ達の警戒心が高まり、何の障害も無く昇り詰めてしまっていた。明らかに不利である状況が一変した事で狩人達は拍子抜けしたが、それは同時に好機でも有り、距離を取りこちらを見つめるウルフ達へと隊列を組み攻撃を仕掛けだしてた。
「セルシナッ!!外側に1匹追いやり牽制し続けろッ!!俺が真ん中から叩くッ!!」
「ミーミル、デカいのを任せたぞッ!!」
(((「はいッ!!」)))
ギギギギッ!!シュトンッ!!
ササッ!!シュンッ!!
〈 グァルルル… 〉
「今じゃボッスよ」
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
遠距離二人の牽制により5匹のウルフのうち2匹を真ん中から分断させ、その隙を突きボッスを先頭に、中央3匹のウルフへと斬り込んだ。
「逃がさんわいッ」
ッフッ!!シュッ!! ガキンッ!!
「ホホッ!!その斧投げ飛ばしてもええのだぞッ!!」スタタタタタ
「馬鹿言うで無いわッ!!これで足止めは十分じゃよッ!!」
ッフッ!!シュッ!! ガキンッ!!
斬り込みに来たボッスとワイズに、先頭に居たウルフの脚が下がる。ジオジルがその一瞬を見て拭き矢を放ち、ウルフはその攻撃を剛毛を纏った尻尾で弾き返した。止まらない拭き矢の針はウルフの動きを止め、尻尾を振り続けるウルフにボッスの剣が真上から縦に振り抜かれる。
「ドッセェェェィッ!!」ブウンッ!!
ガキンッ!!ブシュァッ!!ドスーンッ!!
〈 ギュオオオオオンッ!! 〉ザサササササッ!!
「チッ!!尻尾かッ!!」グササッ
「デカしたぞボッスッ!!硬い尻尾を斬り落とせば遠距離でどうにでも出来るわいッ!!」
ボッスの重い一撃は硬い尻尾を切り落とし、痛みに耐えきれないウルフが悲鳴の鳴き声を揚げた。
ウルフは血を垂らしながら後ろへと逃げ帰るが、ジオジルの拭き矢の照準はそれを追って居た。
それと同時に中央の他2匹が動き出す。
〈 ガルルグアッ!! 〉 ザサッザサッ!!ザサッザサッ!!
「長老ッ!!他のウルフがッ!!」シュトンッ!!
「分かっとるワイッセルシナ!!」ザサッ!!ガキンッ!!
「すまない長老…ッ!!…フンッ!!」シャキンッ!!
「お前さんの剣は威力は有るが隙がデカいからのうッ」
「セルシナ姉様ッ余所見は危険ですよッ!!」シャキンッ!!シュッ!!
二匹のウルフは、隙の出来たボッス目掛けて飛び出していく。その動きをセルシナが捉え、すかさず2匹の内1匹に牽制を放った。しかしもう1匹はボッスへと飛びかかる。その瞬間、長老ワイズがすかさず小太刀を二本抜き取り、ボッスに襲い掛かるウルフの牙と爪をギリギリでいなして魅せた。
ミーミルは自分の標的を視線だけで追いながらも、セルシナに注意を促し、その隙を伺う標的のウルフに向けて、少ない動作で隠したナイフを投擲した。
グサッ!!ブシュッ!!
〈 キュオオォンッ!! 〉
「ッフッ私も余所見すると思ったのかしら?獣の癖に浅知恵なんて持つから目玉を取られるのですよ」
しかし、ウルフ達の動きは留まる事は無い。ワイズがいなしたウルフがそのまま後方に居るセルシナへと標的を変えたのだ。そしてセルシナを標的にした外側のウルフも又、それと同時にセルシナへと襲い掛かる。
〈 グガルルッ!! 〉ズササッササササッ!!
〈 ガァルルゥッ!! 〉ササッ!!
「しまったッ!!後ろに抜けられたわいッ!!」
「クソッ!!間に合わんッ!!セルシナッ!!差がれッ!!」
「えッ…!?嫌ッ!!こんのッ!!」ギギギッ!!シュトンッ!!
「あのバカ娘ッ!!バロッシュッ!!前に出ろッ!!」
「分かってるッ!!クソッ!!」
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ワイズ達の一連の流れを後ろから冷静に眺めて居るラキュア達。
「何だか動きにムラが出てきましたよ」
『危ない予感しかしないのですが…良いんですかね、このまま見て居ても…』
「それぞれの相手を受け流すので精一杯だろうからな…手を出したい所だが…まだだ」
「ひぇぇぇ」
『知りませんよ?怪我人が出ても…』
「怪我くらいなら何とでもなりますよ。私は彼を見極めるまでは手を出しません」
「彼?」
「まだ何も成果を見せて居ない若者ですよ。これは見物ですね」
…見物って…趣味悪いですよ下僕さん…
「さて…バロッシュを見捨て、牽制で停まっていたウルフを止めるか、バロッシュを助け、後ろから迫り来るウルフ二匹を捌くのか…この状況…果たしてどう打破しますかね…フフフ」
「シルバさん…」『下僕…』
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場面はセルシナに襲い掛かるウルフとそれに立ち向かうバロッシュへと戻る
〈 グガグルル…グガァッ!! 〉
ザサササササッ!!
「セルシナの元へは…行かせねぇよッ!!」
「バ、バロッシュッ!!」
「落ち着けセルシナ、俺が付いて居る…ハァァァッ!!」
ブゥゥン!!シュルシュルシュルシュルッ!!ガシャッ!!
「ふんッ!!ッはッ!!ッフッ!!」
ガシャンッ!!シュッシュッ!!ブゥゥン!!シュッシュ!!
〈 グアルルッ!! グガァ!! 〉サッサッ ザササッ!!
ガギンッ!!シュッシュ!! ササッ!! ガギンッ!!
バロッシュはセルシナの前へと立ちはだかり、慣れた手付きで矛先が3つ有る十文字槍と呼ばれる槍を振り回し、巧みにウルフの攻撃を受け止めて居た。前に突くだけで無く、横に振るだけでも突き刺せ、手首を返せば切り傷を負わせられ、極めつけは十字矛による防御能力。バロッシュは自在に動かすその槍で、攻守一体を見せつけて居た。
「バロッシュッ!!横からもう一匹来るぞッ!!長老、俺達も加勢にっ!!」
「慌てるでないぞッ!!ボッス、ワシ達の手前にはまだ1匹残って居る。二人で維持するしかないぞ」
「しかしそれでは…バロッシュがウルフ2匹をッ!!」
「ジオジルが片付けるまでの辛抱じゃよ。バロッシュ、お前にお似合いの仕事じゃないか。それにな…他人の心配してる暇なんぞ…お前にないぞッ!!フンッ!!」カシュッ!!シュウンッ!!カチャッ!!
「ッ!!?」
「ほれ、ワシ達の相手はお前を遠目から狙うあのウルフと言う事じゃよ」
攻撃をいなし、そのまま後ろを抜けられた長老ワイズだが、セルシナの牽制で脚を止めたウルフがまだ前方に残って居た。ワイズは冷静に判断し、後ろへ抜けたウルフはバロッシュに任せ、前方のウルフ目掛けて二つ目の縄付き小太刀を突き刺す様に投擲し、それを引き抜き手元へと掴みよせた。余所見するボッスの頬をかすり、後ろで狙っていたウルフの脚は再び止まっていた。
「ミーミルには、あのままを維持して欲しいのうッ出来れば殺して欲しいがッ…」ボソ
「…」ギギギッ!!シュトンッ!!ギギギッ!!シュトンッ!!
サッサッ!!ガギンッ!!サッサっ!!ガギンッ!!
〈 ワオーンッ!! 〉ササッ!!ザサササササッ!!
「チッ…!!手負いの癖にちょこまかと…」
「思ったよりミーミルさんの所が進展しませんね…」
『片目を奪ったのですがね…ウルフが慎重になり、攻めきれずに居るような…』
「ウルフ一匹に足止めをされるとはね…ここのスノーウルフの尻尾は随分頑丈の様です」
ワイズの期待は虚しく、ミーミルが足止めを喰らう始末となっていた。そしてそんな中、バロッシュに二匹目のウルフが襲い掛かる。
〈 グガルルッ!! 〉
「来たなッ!!そうだ、こっちだッ!!」
ガキンッ!!ガキンッ!!ッスッスッ!!ヴォォンッ!!ジュシュッ!!
〈キャウゥゥッ!!〉ズササッ!!
〈ググアーッ!!〉
「来る事が分かってりゃウルフも対して恐くないもんだなッ!!ッフッ!!」
「バロッシュッ!!」
「セルシナ、お前はそのまま動くなよ。下手な真似して隙でも突かれたら守れないからな…警戒だけしておけば良いさッあとは爺共が何とかしてくれる…筈だ」
「筈って…向こうも二人で一匹なのにッ!!」
「兎に角時間稼げれば俺の勝なんだよッ!!さぁウルフ共ッ!!来れるもんなら来て見なッ!!但し、今晩の串焼きにされても知らないがなッ!!」
セルシナを護る為にウルフの攻撃を捌き続けるバロッシュ。標的がハッキリしている御かげか苦戦をし強いられてる様には見えなかった。彼はセルシナの周囲を廻る様に立ち回り、持ち前の器用な槍捌きにより、自分の領域を作り出していた。牽制する様にクルクルと振り回す槍、時より突き刺す槍の一撃の鋭さ、突撃するウルフに合わせ槍を突き刺すだけで、お互いの速度が攻撃力となり突き刺さる武器となる。此処から動く必要は無い、ひたすら来るのを待つ。ウルフをそして仲間を。
『ちょ、なにあれ凄ッ!?武芸大会でもしている様ですね…』
「後ろ見ないで背後に槍を差し込みましたよッ!!一歩間違えればセルシナさんがッ!!」
『逃げないと槍に当たりそうで危ないですが、逃げても追われて危ないと言う…完全にバロッシュ御兄さんの腕次第ですよあれ…』
「でも、そのせいかウルフ達の動きが大人しくなりましたね…」
「動かない的目掛けて襲い掛かるウルフも、あの精度で眼の前に突起物を突き出されれば臆するのも無理は無いですね。回り込んだ所であの領域を爪と牙だけで超えられるか…』
『成る程…狩りが下手な理由が少し解った気がします…これが彼の持ち味なんですね?』
セルシナから順に崩され兼ね無い状況が、彼の見せる守備能力により、この場を維持する事が出来て居た。そしてお互い攻めきれずにいる戦況に動きが出はじめる。先に動きを見せたのは手負いのウルフを追うジオジルだ。
ギュッギュッギュッギュ!!
「ちょこまかと」ッフッ!!
〈クオーン…〉ボフッ
「やっとか…手こずらせおって、フンッ!!」ブォオンッ!!
――― 〈 ワオォォオッ … 〉 ―――
ドスンッ!!グチャッ!!
ボッスによって尾を切り落とされたウルフが距離を置き隙を伺っていたが、ジオジルの拭き矢を防ぐ手立ても無く、毒が回り次第に動きを止めて居た。雪の上で横に倒れるウルフは最後の力で雄叫びをあげた。鳴り響く雄叫びを止める様にジオジルがウルフの頭を叩き割った。
「手こずらせおって…急いで合流じゃな」
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場面はボッスとワイズに切り替わる。
「どっせぃッ!!」ブォォオン
〈 ガルッ!! 〉ササ!!スカッドンッ!!
「くそッ!!」
ガキンッ!!ガキンッ!!
「さっさと剣を抜かんかッ!!これでは埒が明かん…」
フッ‼プシュ…
〈 キュオンッ!? … 〉ササッ!!
「な、なんだッ!?」
((「良い振りじゃボッスッ!!御かげで避けるウルフの尻が丸見えだったぞッ!!」))
「ジオジルかッ!!」
「後は一匹ずつ片付けるだけの様じゃな」
程無くしてジオジルが参戦、隙を突いた拭き矢の針から次第に毒がまわり、邪魔が入る事無く三対1匹の戦いは直ぐに蹴りが付いた。
三人がバロッシュの元へと駆け付ける途中、ウルフ達は状況の悪さに気が付き行動に変化が出た。
「なんだ、もうお終いか?随分逃げ腰じゃねーかッ!!」
「バロッシュ、みてッッ!!長老達が動いた見たいッ!!」
「そういう事か…要は俺達の勝利ッ!!」
――― 〈 ワオーーーーンッ!! 〉 ―――
〈 ワオーーーーンッ!! 〉
〈 ワオーーーーンッ!! 〉
「これぞ負け犬の遠吠えってかッ!!逃がすと思うかッ!!」
「駄目よバロッシュは行っちゃッ!!狩りが下手なんだからッ!!それに様子が変ッ」
「おいおい…俺にはコチラを只見てる様にしか…」
((「バロッシュッ!!怪我は無いかッ!!」))
「ボッスさんッ!俺なら!この通りっすよ」
「よくやったぞバロッシュッ!!」
「御祖父様…」ササッ
「み、ミーミルッ!?なぜここへッ!!片目のウルフはどうしたッ!!」
「すみません御祖父様…一人ではあの片目ウルフに攻撃を射ぬてず…それに隙を見せてもコチラを追う気配が無かった為…」
「ふむ…確かにその様じゃな…逃げる気配も無いがの」
「おいどうすんだ爺共ッ!!どうせ俺が追っても無駄なんだろッ!!」
「良く分かってるじゃないか…」
「さっきセルシナに言われたからなッ!!かなり心に響いたぜ…」
ウルフ達の攻撃姿勢が一転、まるでこの場を見張る様にコチラを見続け、一定の距離を取る。
ワイズ達は深追いする事をせず、睨みあうだけの場と化していた。そんなどうにもならない状況にラキュアが何かを感じ取った。
『ん~…ん?ほんと?』
「ラキュア様どうかしましましたか?」
『んーどうも何かが沢山来る反応が…』
「それって何処からですかッ!?」
『ウルフ達がお尻向けてる方…』
「山の奥って事ですか…もしかして…」
「先ほどの遠吠えかッ!!それにしては早すぎる様な…ラキュア様、距離は?」
『きょ、距離ですか?え、あッえ…もう来ますっッ!!』
「なッ!!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!
「なんだこの音はッ!!」
「ワイズッ!!森の奥から雪煙が立ちこもっておる…何か来るぞッ!!」
「わかっておるッ!!お前達、一度下がるぞッ!!」
「はぁッ?」
「バロッシュ良いから早く下がるのよッ!!」
ズサササーンッ!!
「ぬわぁぁぁぁ!?」ドテンッ!!
バロッシュが後退し出した途端、森から勢い良くウルフの群れが飛び出して来た。
それに驚いたバロッシュが尻餅を付く。
「な、何て数…」
「30…いや50!?もっとか!!?」
「う、嘘…スノーウルフがこんな大量に…」
「圧巻だな…まさかウルフ共がこれ程繁殖してるとは…」
「こりゃワシ等じゃお手上げじゃな…」
「ラキュア様…」
『うげぇ…何あの数…実際に見るとヤバ過ぎます…どうするの下僕?』
「フッ、この程度、一国を沈めた私に掛かれば」
『あーはいはい…そうですね…なら下僕に任せましょうか…』
「ミルフィさん、長老達を私達の後ろへ」
「は、はいッ!!」
思わぬ数のウルフ達が出現し、困り果てた顔で振り向く狩人達と、同じように驚くラキュアとミルフィ、そしてただ一人臆する事のないシルバが先頭に立ち、ウルフの群れ目掛け唱えた。
「幾ら束になった所でお前等など虫けらと変わらぬ、氷の棘で死に絶えろッ!!」
― 広域化魔法、喰らえ…氷結棘ッ!! ―
ヒューン……ピキ…ピキピキピキピキ
ウルフ達の頭上から冷気が漂いだし、ソレが一か所へと集まり出すと氷の球体が生成され始めた。そしてその球体はウニの様に棘を纏い、頭上から棘が一斉に突出する。
ズシュシュシュシュシュシュシュッ!!
ウルフ達の声に成らない鳴き声と共に体ごと地面まで付き抜ける音が鳴り響き、その衝撃から漂い出した雪煙がラキュア達の視界を遮った。
「何が…起きた…」
「ウルフ達の頭上から何かが見えた途端にこれですか…」
「やはり恐ろしのう、無詠唱で此処まで出来てしまうとは…」
「呆気ないモノだなッ」
『まだ終わってないですよッ!!煙からウルフ達が抜けてコチラに来ますッ!!』
「その事くらい想定済みです」
― 爆散化魔法…氷結槍ッ!! ―
シルバは空かさず魔法を放つ。今度の魔法はシルバの手元から放たれた。ショットガンの如く、一点から噴射する様に氷槍が拡散する。それは雪煙で視界の悪いウルフ達に次々と突き刺さって行った。
「おいおい、こりゃ酷いぜ」
「煙を抜けたと思いきや突如、前方から槍ですか…」
「まるで大自然のトラップに掛かったかの様な一方的殺戮じゃな」
「…」ぶるぶる
「煙から出て来る気配が有りませんね…」
「流石に堪えたかの」
「こりゃ堪える所か全滅っすよッ!!」
雪煙を睨む様に観察するラキュア達、やがて巻き上がった煙が晴れ、惨状が明らかと成った。
クチュクチュクチュ…
ピクッピクッ…ピクッピクッ…
ウネウネ…ウネウネ…
「…」
「ふむ…」
「まぁ…こうなるわな…」
『ウゲェ…』
「ラキュア様…余り見てはいけませんよ」
…正直、死ってものを軽く見てました…ウルフも生き物だもんね…血とかは少し慣れたつもりで居たけど…これだけの量の血や臓物が散らばる様を見るのは流石に…でも、これが異世界…私の生活はこれが日常になるのだとしたら…
ピク…ピクピク…
ウネウネ…ウネウネ…
『だ…だいじょうぶ…』
「ら、ラキュア様…」
「ははッ!!おチビちゃんにはまだ早い光景の様だなッ!!」
「それで、アイツは何なのじゃ」
「それは私が知りたい所なんですがね」
ウネ…ウネウネ…
ビュルルル…クチュ…
「こんな奴フリズヘイム所か周辺でも見かけねーぞ」
「コイツがジョイスが言って居た親玉かの…まさかこんな所に出ようなど…」
「長老ッ!?一体なんの話しですか!!何か知っているのですか?」
「うむ…ジョイスの世迷言だと思い、信じておらんかっただけじゃ」
「だから一体ッ!!」
「ジョイスとディスタが彼女達に救われた日、ジョイスが何としてでも伝えようとした事じゃ、ウルフを束ねる親玉、ソイツはウルフで有りながらも酷く気持ち悪い姿であった、と」
「…」
「確かに、こりゃ~化けもんですわ」
…どこぞのホラーゲームに出て来そうな奴だよあれ…
『あ、あれ…早く何とかした方が良いような…』
「そうですね、私も見覚えが無い形状ですし、このまま奴も仕留めに…」
ウネウネ…クチュ…ピュピュッ!!
クチュクチュクチュクチュッ!!ニュルンッ!!
「な、なんだありゃッ!!」
「アイツから飛び出た触手が…ウルフ達の死骸にッ!?」
「他の死骸からも触手がウネリ始めたようじゃ…」
「そんな…」
「ウルフ達が…動いてる?ミーミルッ!!」
「はい」グググッ!!シュパッ!!
「…」グググッ!!
シュ!!シュパ!!シュパ!!
「まだ動くかッ!!」
「痛みの悲鳴すらでて無いぞ…」
「長老ッ!!シルバ様ッ!!ウルフ達が次々と起き上がってきますッ!!」
― 爆散化氷棘ッ!! ―
「っちッ!!」
二回りも大きいウルフの親玉らしき生物には体の至る所から触手がウネっており、特に頭から夥しく伸びて居た。その化け物は触手を巻きちらしウルフの死骸へ乗り移り、忽ち動きだす。
ボッスの呼びかけを待ってましたとばかりに弓を射たミーミルであったが、その一撃をモノともせず立ち上がるウルフ。それに追い打ちを駆ける様、細い氷の針を滅多撃ちするシルバの魔法でさえ、痛み見せずに突き刺さったまま立ち上がってみせた。
「切りが有りませんね」
「部位を破壊して行動不能にするので精いっぱいじゃな…それに…」
「親玉は今ピンピンしてるぜ…先に奴を倒した方が…」
「はぁ…はぁ…」
『げ、下僕?』
「すみませんラキュア様…少々無駄な魔力を使い過ぎた様です…」
「シルバ様ッ!?」
『むむむッ!!?』
…下僕がゾンビ犬軍団にスタミナ持って行かれただとおッ!?ド派手な魔法を使った訳じゃなさそうなのに…どうしよう、このまま逃げる訳にもいかないし…
『どうしますッ!?』
「うむ、シルバさんの魔力を使い切ったとしてあの化け物を倒せるかどうか…」
「…私は無詠唱の魔法使いでは有りますが、悔しながらメイビスの様な大魔法は使えないのですよ」
『え?』
「怪物を一撃で葬る魔法は唱えられないと言う事です。要するに私では倒せそうもない、と言う事です」
(((「なぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃ!?」)))
『やっちまったなぁーッ!!』
(((「えッ?」)))
『あ、いえ…何でもないです…』
「では…此処までと言う事か」
「しかし、ラキュア様ならキットどうにか出来るでしょう」
セルシア「え?」
ボッス「はぁ?」
ジオジル「なんと…」
ミーミル「成る程」
ワイズ「真か?」
ミルフィ「流石ですッ!!ラキュア様ッ!!」
バロッシュ「嫌々まさか…」
「それはどうやってじゃ?」
「簡単です、動けない程に滅多切りにすれば良いだけです」
「おいおいッ!!そんな簡単に言うけどなッ!!アイツの毛皮の厚み知ってるのかよッ!!おチビちゃんが切れる様な生易しい硬さじゃねーよッ!!」
「ラキュア様なら出来ますよね?」
「いや、だからッ!!」
『ウルフを切ってないから…分からないですよ』
「するまでも無く分かる事だろうがッ!!」
『でも、やってから逃げるか考えましょうかッ!!』
「ラキュア様ッ!!」
「そうですね、今のウルフ達は欠損の激しい動きの鈍い獣ですし…慌てる必要は無いですね」
「おいおいおいおいおいッ!!!」
「バロッシュは黙ってなさいよッ!!」
「五月蠅い」
「エレメンタラーを従える者…」
「ホッホッ!!楽しみじゃろ?バロッシュ、お前は黙って見ておけ」
「み、皆さん下がってて下さいッ!!」
ゾロゾロゾロ…
シルバが名案とばかりに閃いた策、それはとても単純で、頼る相手も間違えて居るトンでも無いモノであった。しかし、それに不満を漏らす者は1人しかおらず、皆ラキュアの力の一部を見れる高ぶりを心に感じていた。そして
『じゃぁ…取りあえず一発…ね?』シュポンッ!!
((「…ッ大鎌!?」))
『ぴょこちゃ~んッあたぁ~~~~っくぅぅぅ!!』
ラキュアはお試しの一振りを、横一線に振り抜いた。
――― ズバシュ―ンッ!!!! ―――
グッシャッ!!グテンッ!!
(((「ッッッッッ!!?」)))
ラキュアの放つ斬撃がウルフの群れの一部を薙ぎ払い、立つ肉体は4脚を失い、伏せる肉体は胴体を切り離された。
「ヒュ~ッ!!コイツは凄いぜ…」
「これが…物理技とでも?」
「ラキュア様ッ!!ラキュア様ッ!!」
「まぁこれ位なら当然でしょうね。分かって居ました」
『全ッ然ッ!!行けますねッ!!ならこの調子で私がッ!!』
――― ザシュッ!! ―――
それからと言うもの…ラキュアはコレでもか、と言わんばかりに大鎌を振るい、ピク付かせ動きを見せるウルフの死骸を次々と肉塊へと変えていった。
「凄い事になっているな」
「斬撃を飛ばすの止め、自ら切り込みに向かいましたね…」
「そしてあの笑顔」
「じゃな、妙に美しく見えてしまう」
ドクンッ!!ドクンッ!!ドクンッ!!ドクンッ!!
…な、なにこの高揚感ッ!?あれ?私…なんでこんな…こんなにも惨い事をしるのに夢中で…何してんだろう私…
…何だか美味しい…気がする…
…ペロッ…
血だまりで踊る様に颯爽と振り回す大鎌が歪さを増し、ラキュアの右目はほのかに赤く輝いて居た。時間はそう掛からなかった。、腕を振るうだけの簡単な作業、広大な白い景色に血の湖を作り出し、親玉を含めたウルフの駆除が呆気なく終わりを告げていた。
ベチャ…ベチャ…
『ウネウネ…もう動いてませんね』
「これだけやれば流石にな…」
「ラキュア様…返り血が…早く帰りましょう…血の臭いが染みついてしまいます…」
『匂い?…匂い…』
「ラキュア様…兎に角戻りましょうか」
『そ、そうだねッ!!下僕は魔力が少ないみたいだしねッ!!』
ベチャ…ベチャ…ベチャ…ベチャ…
「終わった様だな」
「どうじゃバロッシュ、分かったか?」
「あ、ががッ、え、ぐぐえぁッ!!?」
「バロッシュったら口が開いたまま固まってるわ…」
「ホッホッ!!無理もないわ…ワシ等だって固まってただろうに」
「こりゃミーミルが認める訳じゃな…よう解ったわい」
「俺、今日は肉食えそうも無いわ…」
「バロッシュ…それ…」
(((「…………」))) どよ~ん…
「あ、ああそうだッ!!所で俺達の実力試験どうなるんだろうなッ!!」
「…」
「あんなの見せられたら私達…」
(((「…………」))) どよ~ん…
凄いモノを魅せられた一向達の帰りは、とても気の重い空気だった。
誰がどんなにカバーに入ろうと、明るくなる事に繋がらなかったとさ。
ラキュア達の狩り、及び実力試験が終わる。
ラキュアが一方的にウルフ達を肉塊へと変えた帰り道の事
「いや~…全く凄い光景じゃったな」
「はい、御祖父様」
「どうじゃ?」
「何がでしょうか?」
「改めて一泡吹かせれるかの」
「またそれですか?…もう諦めました」
「ならハインズにでも頼んでみるか?」
「何故そこで御父様が出てくるのですか…」
「娘の頼みなら心よく仕返ししてくれると思うがのぉ」
「子供の喧嘩に親が出て来てどうするんですか」
「ホッホッ喧嘩とな!!あれは一方的な怨みじゃろうにッ!!それに殺す気満々だったしのッ!!」
「もういいですッ!!さぁ御祖父様帰りますよッ!!」




